BLOG

「今、私が会いたい人」一点一点に手から愛情を注ぐ|器GALLERIAさん

こんにちは。クリーマの西端です。

 

今回私は、ヤキモノつくりびと「器GALLERIA(うつわギャレリア)」さんこと、宇山さんの工房へお伺いしてきました。

宇山さんは、大阪に教室とギャラリーショップを併設した工房をかまえ、日々作陶されています。

 

クリーマで見るたびに、かわいいな、素敵だなと、片想いのように焦がれ続けた宇山さんの器たち。転居を機に、家に人を招いて好きな日本酒を飲もう、と足つきのおちょこを注文したのは、もう1年半ほど前のことになります。本当に欲しかったものを手にいれた時のよろこびは、想像以上に心が震えるものでした。

 

そんな体験をさせてくださった宇山さんに、今回は、作品について、特に、クリーマで人気の「dear Lucie」シリーズの制作について、お話を伺いしました。驚くほどの手間と時間をかけて生み出される様子を、みなさまにもお伝えできればと思います。

愛用している宇山さんのおちょこ
ほたるいかを肴に、好きな日本酒を美味しくいただきました。

「dear Lucie」シリーズは、器の内側、外側、高台内すべてに施された、カラフルなラインやドット模様が特徴の磁器です。ラインナップはご飯茶碗や湯のみサイズのフリーカップ、おちょこサイズのミニカップなど。毎日の食卓に、こんなカラフルな器があれば、それだけで元気になれそうです。

 

宇山さんの工房にお伺いするのは、実はこれが2回目。

飲食店や歴史のありそうなビルの前を通り過ぎながら、「陶工房」の看板を目指します。

入り口を入ってすぐに、dear Lucieシリーズをはじめ、宇山さんの作品が勢ぞろいで出迎えてくれます。その奥の工房から、宇山さんが「こんにちは!久しぶりやなぁ!」と笑顔で迎えてくださった瞬間、何だか自分が工房に帰ってきたような気持ちになりました。

器GALLERIA 宇山さんと、陶芸

— 宇山さんが陶芸と出会われたのは、いつだったのですか?

宇山さん「初めて陶芸をしたのは、20歳くらいですね。その後5年間は教室に通っていたんですが、人の所でやると、時間とか使う土とか、制限されるでしょ。それで自分たちの場所が欲しくなって、16年前にここを始めました。

うちの陶芸教室は、みんなすごいストイックに作陶しています。毎年グループ展をやる生徒さんに、もうネット販売デビューしてる子もいますよ」

— もともと、陶芸の道を志していらっしゃったのですか?

宇山さん「陶芸の道に入る前に、私はデザイン事務所でお店や住宅のインテリアデザインをやっていました。インテリアって、デザインして、大工さんや左官屋さんに作ってもらうのに、図面を書くんですよ。それって、線の世界なんです。今はCAD(コンピュータで設計図などを書くソフトやシステム)でやりますが、昔は一本一本、線を引いていたんですよ。その時から線が好きだったんです」

— 「線が好き」とお話がありましたが、宇山さんの作品といえば、美しい線が魅力ですよね。線への思いは、どこから生まれたのでしょうか?

宇山さん「私が一番影響を受けているのは、陶芸家のルーシー・リーです。

信楽の陶芸の森で、ルーシー・リー展をやっていたんですよ。その時に作陶ビデオがあって、ろくろとか窯とかいろいろあったんですけど、いまだに頭の中に残っているのが、線を引いているところです。土に、針で、一本ずつ線を引いている姿を目にして、「あぁ、かっこいい」と思ってから、今でも線を引いてる作業が一番楽しいですね。他の人によく、こんな細かいことを…って言われるけど、好きやねん。しゃあないな(笑)」

あまり目に触れない高台の裏にも、こだわりが込められています。

— dear Lucieシリーズはカラフルな色使いが特徴ですが、どのように色をつけているのでしょうか?

宇山さん「色の部分も、ベースと同じものなんです。それを泥の状態にした中に、顔料をいれて、そのパーセンテージで色の濃さを調節しているんです。触れるくらいまで乾いたら、この上から線彫りします」

フラワーベースに、カメオピンクの化粧泥を塗っています。

— この繊細な線は、絵の具で描くのではなく、彫られているのですね...!

宇山さん「お客さんに、筆で描いてるんですか、とか聞かれるんですけど、そんな細い筆は使えません(笑)。線を彫って、乾いたら、線の横のバリバリになっている部分を、針で削って全部きれいにするんですよ。そうすると、すっきりした美しい白い線が出てくるんです。掻き落しという昔からある陶芸の技法なんですよ」

(右)土と顔料を混ぜて、カップの胴に塗ったもの。緑色になっています。
(左)線を彫ったあとのもの。線を彫ったあとの「バリ」が残っています。
成形に使う道具。先の細い針やヘラなど、いろいろな種類があります。

— どれも色鮮やかで美しいですね…!特に、何色が人気なのですか?

宇山さん「ずば抜けてピンクが人気ですね。でも、この前クリーマでご注文いただいたお茶碗は、黒とブルーでした。男性からの注文で、女の子のお友達への結婚祝いにと。女の子の方をピンクにしないってことは、彼女が青が好きって、知っていたんでしょうね。

お茶碗が一番人気で、ピンクとブルーとか、ピンクと黒とかの組み合わせで、ギフトにしていただくことが多いんですよ」

— 相手の好みで色を選べるのも、カラフルなdear Lucieならではですよね!

ペアギフトにも大人気のお茶碗

宇山さん「1回目は素焼きといって、700度くらいの低温で焼くんですよ。その時はまだ焼き締めてないから、すぐパキッと割れてしまう状態です。

素焼き後にサンドペーパーで磨いてつるつるにして、いったん洗って、磨いた時の粉を落とします。それからゴス(陶磁器の下絵顔料)を線彫りに埋めこんで、目玉(器の内側と高台裏の真ん中)の様に見えるアクセント釉をつけていきます。そして全体に透明のマットの釉薬をかけて、2回目に高温で焼くと、やっと完成品の状態になるんです」

— 焼いて、磨いて、色をつけてまた焼いてと、とても手間がかかっているのですね...!

宇山さん「焼き物屋さんには、何でこんな手間かかることすんのって、よく言われます。何でって言われても、好きやねん!て言うしかないですよね(笑)。

dear Lucieは磁器なのですが、他の磁器作家さんとも、「磁器って本当に手間がかかるよね」って話したりします」

— 陶器と磁器は、どのように違うのですか?

宇山さん「作り方がちょっと違うところがあるんです。大きく言うと、陶器は粘土なのですが、磁器は、陶石という石なんです。dear Lucieに使っているのは、有田焼と同じ天草陶石という石です。

通常磁器は分厚くロクロ引きした後、カンナで全面を削って形を作っていくのですが、私の場合はロクロ引きで薄く作り、削るのは高台部分のみです。

削って形を作ると雰囲気がカタくなりますが、手で作ったフォルムはゆるく優しくなりdear Lucieのデザインイメージに合うんです。ただ、磁器土は粒子が細かいため成形時のロクロ目が目立つんですよ。陶器は、そのロクロ目をわざと残したりしても、それが味になるんですけど…。

磁器で作るdear Lucieの場合はデザイン上ツルツルにしたいので、化粧泥で掻き落した部分以外は全面サンドペーパーをかけるんです。それが本当に手間だし粉だらけになって大変で(笑)」

— 陶器と磁器は、素材だけでなく、作り方や仕上げ方も大きく違うんですね。

成形→化粧泥→模様彫り→素焼き→ペーパー掛け→ゴス象嵌→アクセント釉→釉掛け→本焼きと、多くのステップを経て作られています。

— このシリーズの中で、宇山さんが一番お好きな作品はどちらでしょうか?

宇山さん「私が一番好きなのは、ミニカップです。dear Lucieシリーズのプロトタイプとして、最初に作ったものです。

もともとミニカップはいろんな形を作っていたんですが、足をつけて高さがあるものを入れたら可愛いなと思って生まれたのが高杯なんです。というのも、私の中でミニカップと高杯は集合体なんです。イベントの時にわーって、たくさん並べると、一番華があって可愛いんですよ」

dear Lucieのプロトタイプ

— このミニカップは、いろいろな使い方がありそうでワクワクしますね。実際には、どのように使用されることが多いのですか?

宇山さん「おちょこで使う方が圧倒的に多いですね。豆皿に使う方もいます。足つきのものは、アクセサリー作家の人が、ネックレスをかけたり、イベントの時にディスプレイで使ったりして下さることもあるんです。そういう使い方もあるんだと驚きました。それからアクセサリー作家さんのディスプレイをよく見るようになりましたね。

圧倒的に女の人が多いですが、最近では男性がプレゼントに選んでくれることも増えてきて、うれしいですよ」

— これから挑戦したいとお考えのことはありますか?

宇山さん「dear Lucieのワンランクアップシリーズですね。今のdear Lucieシリーズは、どちらかというと日常使いの器なのですが、新シリーズでは大きめのフラワーベースやティーセットなどの特別感のある器を作っています。

 

今のdear Lucieシリーズも、もっとたくさん作って、たくさんの人に見てもらえる方法を考えたほうがいいよって、言われたこともあるんですけどね。

でも、一針一針、手縫いでやってるレザー作家さんもいるじゃないですか。私は、それがええねんって思ってるんです。一点一点、手間をかけて、手で作っていくほうが愛があるかなって」

— 「一点一点の手作りに愛がある」というのは、宇山さんらしいお言葉ですね。

dear Lucieのワンランクアップシリーズ

— 最後に、宇山さんにとってクリーマとはどんな存在ですか?

宇山さん「期待してる。すごいおっきい存在ですよ!私は、クリーマ以外ではネット販売をしていないので、ここが窓口です。

やっぱり、夏のイベントのHandMade In Japan Fes(ハンドメイドインジャパンフェス)が大きかったですね。初開催した年、作品が完売したんですよ。あれで、関東の皆さんにも知ってもらうことができたんです。それまでは、関西の小さい手作り市とかに出してたくらいだったので。

クリーマでは、ほとんどが関東のお客さんからの注文です。これからも頑張りたいですね。だから、クリーマさんも頑張ってや(笑)」

— はい、頑張ります!

インタビューを終えて

シンプルな土の器を、1日で何百個と作る作家さんもいる中で、dear Lucieシリーズは、休みなしで1ヶ月頑張って頑張って、100個作れるかどうかだそうです。手間も時間もかかるその工程に触れ、作ることそのものへの深い愛、理屈では説明できない「これが好き!」という芯のようなものが感じられます。

 

「一点一点手で作っていくほうが、愛があるかなって」宇山さんの少しはにかんだような笑顔に、1つの作品にこれほどの手間をかけるこだわりを垣間見たような気がしました。

ブログで紹介する▼
HTMLコードをコピーしてブログに貼り付けてください
同じカテゴリーの記事
人気の記事