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「ただ、ひたすら、ものづくり。」いつでもどんなときも。私の相棒|ぬいぐるみ作家・北村日乃さん
みなさんには、ぬいぐるみとの思い出はありますか?
楽しいことや嬉しいことはもちろん、不安なときや辛いことがあったときを思い出される方もいるかもしれません。私たちが求めるとき、いつでもそばにいてくれるのがぬいぐるみですよね。
今回は、幼い頃から、大人になった今もぬいぐるみが大好き。そして、現在はぬいぐるみ作家として活躍される、北村日乃(きたむらかの)さんにインタビューに伺いました。
北村さんとお会いするのは、以前ハンドメイドインジャパンフェス(HMJ)にご出展いただいたとき以来。ワクワクして向かうとご自宅の前までお出迎えしてくださいました。早速ですがまずは、どのようにして愛らしいぬいぐるみたちが生まれているのか、その様子を動画でお届けします!
どう縫っていったら、ぬいぐるみのかたちに仕上がっていくのか……想像もつかないまま、すいすいと動く北村さんの手元を眺めているうちに、あっという間に愛らしい姿のぬいぐるみが誕生していました!北村日乃さんのぬいぐるみは小さめの作品も多く、細かなパーツを仕上げる作業はまさに職人技でした。
続いては、ぬいぐるみとの歩みや、作家として活動されるようになった経緯、今の作風にたどり着くまでなどインタビューで伺っていきます。
ー 制作されているぬいぐるみについて教えてください。
東ドイツ時代のクマのぬいぐるみにインスピレーションを受けまして、顔のパーツが下にギュッと寄ったようなぬいぐるみを制作しています。「話しかけたくなるようなぬいぐるみ」がコンセプトです。
素材はドイツの最高級のテディベア用の生地を使用しています。生地の素材は「ウール」や「アルパカ」が中心です。私の作るぬいぐるみの中でも普通サイズのクマは口元が特徴的で、喋っているように見える「オープンマウス」というデザインになっています。フォルムは、手足の毛を丸くカットすることでコロンとした見た目にこだわっています。
自分の欲しい色がお店に売っていない時は、たまに自宅のお鍋で染料を炊いて、素材から染めています。これはできたばかりのものなのですが「紅葉」をイメージするようなパキッとした色にしたいなと思っていたんですけれど、ちょうど良い色がなかったので2回染めることで満足のいく色ができました。
ー ぬいぐるみ作りを始めたのはいつ頃ですか?
小学生の頃から、フェルトを2枚重ね合わせて綿を詰めた簡単なぬいぐるみを作ったり、大学の文化祭でも自作のぬいぐるみを販売したり、もともとぬいぐるみが大好きでぬいぐるみに囲まれていない生活は想像もできないような感じでした。
大人になってからも自分でぬいぐるみを自分で作るのが好きで、会社員時代には作りたいと思うぬいぐるみが頭の中にすごく浮かんできたのですが、仕事をしているので思うように手が回らない状況に我慢ができなくなり、思い切って仕事を辞め、アルバイトをしながら作家活動を始めました。
当時はよくネットでもぬいぐるみについて調べていて、古い東ドイツ時代のベルリンベアという種類をたまたま見かけまして、その可愛さに衝撃を受けました。その頃、私はマレーグマがとても好きで、ベルリンベアのマレーグマバージョンを作ってみようと思ったのが作家活動の最初の一歩です。そこから、販売するにあたって自分のオリジナリティを意識して顔のパーツをもっと下に寄せたぬいぐるみを制作するようになりました。
ー 創作活動を続けられる中で大切にしていることはなんでしょうか
とにかく自分が可愛いと思うものを作ることですね。完成した時に自分でもちょっと笑ってしまうような、手に取った人を笑顔にしてくれるような表情になるよう心がけています。
できあがった子たちに出会うと、どの子も全員一回は「可愛い!」って自分で自画自賛してしまいますね。中でも、完成直前の「目」をつける作業は毎回本当に嬉しくて、目がつくことで初めてぬいぐるみたちに表情が出るのでやっぱりその瞬間がたまりません。あとは、お迎えいただいたお客さまが「ぬい撮り(ぬいぐるみ撮り)」をしてSNSに写真を載せてくださっているのを見つけて、自分が作って送り出した時と違う表情になっているのもまた嬉しいんです。
ー 北村日乃さんがいつも一緒にいる子について教えていただけますか?
こちらが「ねずじろう」と申します。
子年を迎えるお正月のぬいぐるみを作るにあたって制作した試作だったのですが「ネズミに見えない」ということでボツになったものなのです。販売はできないということでうちの子になって最近はずっと私のSNSに登場してもらっています。
この子も、声が聞こえるというか、喋っているように思えるんです。
Instagramでもよく投稿にセリフを付けているのですが、私が考えているというよりはねずじろうの言っている通りというか、言われた言葉をそのまま付けています。「〇〇なのよ」とこの子は言うんですけれど、最初の方の投稿を見ると「〇〇やで」って大阪弁なんですよ。人間と同じように、一緒に生活していくうちにぬいぐるみもキャラが変わるんだな……ということを最近知りましたね。
私自身、制作関係なくぬいぐるみがすごく好きで、落ち込んでいる時に一緒にいてもらったり、お腹が痛い時に添い寝してもらったり、仕事の面接など緊張する時にも連れて行ったりしているのですが、同じようにこのぬいぐるみたちを手にしていただく方が不安な時や元気になりたい時に触ったり見たら元気になるような、救いになるような存在になってくれたらいいなと思っています。
ぎゅーっと詰まったその顔は、愛情と思いの丈
そういえば子どもの頃、親からもらったぬいぐるみと何をする時もいつも一緒にいたっけ。今回のインタビューを通してそんなことをふと思い出しました。小人のように寝ている間に特別何かをしてくれるわけでもないですが、そばにいてくれるだけで、そのふわっとした柔らかな手触りで心を落ち着かせてくれる。ぬいぐるみにはやはり、なにやら不思議な力がありますよね。
実は私も自宅にふたつ飾っているのですが、今まで気づかなかっただけで、もしかしたら私にもコソコソと話しかけてくれていたのでしょうか。今日家に帰ったら、腰を下ろして耳を傾けてみようと思います。もしくは、声をかけてもらえるよう日頃の行いを改めなければと北村日乃さんの素敵なお話を伺い感じました。
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