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クリエイターに聞く「新作が生まれるまで」
こんにちは、クリーマのMDチームです。Creemaの特集ページやメールマガジンの企画・編集、公式SNSの運営を担当しています。
今回は、私たちが毎朝チェックする、多い日では1万点近くにもなる「新作」に焦点を当てた特別企画 クリエイターに聞く「新作が生まれるまで」というテーマでお届けします!
クリエイターのみなさまが、いつもどのようにして新作を構想しているのか、気になりませんか?
3名のクリエイターに「新作が生まれるまで」の過程をのぞかせていただきました!
小さな箱庭と物語を届ける。銀世界さん
最初にご紹介するのは、植物たちが息づく小さな箱庭のような作品を手掛ける銀世界さん。
ご紹介する新作は、本物の卵の殻のなかに植物をアレンジした”卵に眠る箱庭”シリーズの新作で、『雨上がりの空の色』と名付けられた作品。澄んだ水色の花たちが、雨が上がった後の、透き通った晴れやかな空を思い出させます。
晴れた空が恋しくなるこれからの梅雨時期や、澄んだ青空が気持ちいい夏にもぴったりの新作です。
彩度の低いデザインをまとめるのが一番得意だったことから、そんな風景を表している「銀世界」というお名前で活動を始められたそう。きりっとした、だけど優しい響きが、作品の世界観を表しているようです。
銀世界さんの作品には「森の魔法」や「雲に咲く桜」、「Sazanami(さざ波)」……まるで物語が始まりそうなタイトルが付けられており、それぞれ違った表情の植物が息づいています。
新しい作品を生み出すとき、どのようにイメージを膨らませているのでしょうか?
まず、頭の中にイメージになる風景を「文字」で思い浮かべることから始めます。スケッチ等はとくにせず、あまり視覚的な情報には頼らないタイプです。
銀世界さん
小説を読んでいるときや、外を歩いているときに聞こえる木の揺れる音を聞くとぱっと思いついたりします。
夏の作品だったら、雨や海の音や匂いを実際に感じ取るといったふうですね。
そこから作品のストーリーを短文で考えて、実際の作品の雰囲気をイメージしながら作ります。
今回は「雨上がりの空の色」という作品を作りました。雨で曇っている日でも、初夏の明るさを感じられるような水色がテーマです。
銀世界さん
「雨の日の窓際に佇む明るめの水色」「部屋で過ごしながら、窓の外を見るついでに時々目に入る」「どんよりした低気圧でもちょっとしたみずみずしさを」……というシチュエーションから、ストーリーを考え制作しました。
家にいることも多い時期かと思いますので、日常的に視界に入ることを想定して、主張を抑えたデザインで、お部屋にさりげなく溶け込むように仕上げました。
お部屋に飾れば、いつもの空間がもっと特別な場所になりそうな銀世界さんの作品。
こんな風に丁寧に、作品の背景となるストーリーから考えられていたのですね。
箱庭の中の花たちも、どこか幻想的な雰囲気をまといながら、いきいきと瑞々しい姿を見せています。花たちの魅力が活きた作品を手掛ける銀世界さん、どういったきっかけで"ボタニカルエッグ"の制作をはじめられたのでしょうか。
もともと大きなディスプレイの装花や、結婚式のブーケなどを作るのが専門でした。
銀世界さん
その製作途中で出る花の小さな欠片を「使わないもの」として捨ててしまうのに疑問を持ったことがはじまりです。卵の殻を使っている理由も同じですね。
「普段使わない小さな自然の素材を集めたら、環境や暮らしに優しいサステナブルな作品ができるんじゃないか」という所から、「卵に眠る箱庭」というシリーズが生まれました。
「タマゴノコネコ」はよりわかりやすい可愛さを重視した作品で、猫の置物として楽しみつつ、さりげなく部屋の中に花を取り入れてもらえたら、というコンセプトで作っています。
「卵に眠る箱庭」は、どちらかというとアート・オブジェ寄りのシリーズになります。
銀世界さん
たくさんの人から評価されるというよりは、10人に1人の方から「いいね!」と言ってもらえればうれしい! そんな作品です。
銀世界の作品を選んでくれたお客さまから「この場所に、こう飾ったよ!」とコメントや写真をもらえた時が一番楽しいですね。
作品にはアイデアの元になったストーリーをカードにして同封していますが、文章を書くのが好きなので「作品のストーリーも好きです!」と言ってもらえた時も、とても嬉しく思います。
作品そのものはもちろん、銀世界さんの想いやストーリーも魅力的な「卵に眠る箱庭」。
どんな天気の日にも、日々をもっとみずみずしく感じられる魔法を届けてくれそうです。
日常に、少しの変化やエッセンスをプラスしたい……そんなとき、ぜひお迎えしてみてくださいね。
まるでデッサンのような造形美。metal-figureさん
ステンレス鋼材をはじめとした金属で、デザインから組み立てまでを手掛けるmetal-figureさん。
ユニークな形に仕上げられたスタンドは、ワイヤーがまるで空中にデッサンを描いた線のようで、モチーフがのびのびと表現されています。
今回ご紹介する新作は、レトリバー犬をモチーフにしたスタンドです!
家の近くで会うゴールデンレトリバーがモチーフです。初めて会ったときに、たまたま背後からヌッと現れたので、びっくりしたのと同時に、その大きさ・存在感に感心しまして……。
metal-figureさん
少し恐縮したような上目づかいの彼に、友人のような親しみを感じました。その後、YouTubeでレトリバーの動画をとめどなく流しながら、いろいろなポーズの検証をしましたところ「伏せ」ポーズが気に入りまして、今回製作することにしました。
きっと犬好きなら「そうそうこのポーズ!」と思わず声が漏れてしまうくらい、シンプルなのにリアルなシルエット。表情は見えないはずなのに、口元や顔の覚悟から親しみを感じるから不思議です。
metal-figureさんは普段、どんなふうに新作を思いつくのでしょうか?
友人や家族から欲しいモノや好きなモノを聞いて、その後インスタで検索した画像や動画などを参考にしています。
metal-figureさん
あとは、美術館やギャラリーで他の作家さんの作品を見ることを心掛けています。今は現代アートの展示がとても多くて、今の時代の感性がダイレクトに伝わるので刺激になります。
イメージイラストが固まったら、曲げやすい試作用の細い(1.5mm)針金で形を作ります。つじつまが合うように、何度も曲げたり伸ばしたりを繰り返して形を整えていくため、ここの段階にはすごく時間かかるそう。
試作機が出来たら、実際の径の針金で作っていきます。この段階で溶接し、固定を行います。
無駄なラインは省き、よりスタイリッシュなデザインへと仕上げていきます。
最初は紙にドローイングで大体のイメージを描くのですが、いざワイヤーを曲げ始めると思いどおりにいかない事がよくあります。
metal-figureさん
そんな時にあーでもないこーでもないと繰り返していくと、平面では表現できない収まりをみせる事があって、「ピタリとはまる」そんな瞬間が好きです。3Dスケッチとでも言うのでしょうか、立体をやっていて良かったなと嬉しくなります。
そしてやっぱり、高評価をいただいた時は一番嬉しい瞬間です!
ハンドメイド品、それも立体品を、実物ではなく写真や作品紹介文を見て信用して買ってくださるのはありがたい一方、作り手としては緊張することでもあります。ガッカリさせたらいけないと、発送後はいつもハラハラしています。
そんな時に高評価をいただけると物凄ーくホッとして「良かった~」と寿命が延びた気がします。楽しいという言葉では表しきれないほど、感情の揺れは相当なものです。
「これだ!」という形を求めて試行錯誤し、作品を生み出すmetal-figureさん。
ワイヤーで描く造形美は、写真はもちろんですが、きっと手に取った時により一層伝わってくるはずです。
金属という素材だけど、親しみを感じさせる絶妙なデザイン。実際に手に取って、様々な角度から眺めてみたくなりますね。
「無の動物」への愛をこめて。chippitomuさん
そのまなざしは、どこを見つめているのだろう、何を考えているんだろう。そんな独特の存在感のある「無の動物」をモチーフにしたイラストをもとに作品制作されるchippitomu(チッピトム)さん。
ハシビロコウにカメレオン、カカポにアオアシカツオドリ……彼らへの愛情があふれたイラストに魅了される方が続出しています。(どんないきものだっけ……?と疑問に思った方は、ぜひギャラリーページで確認してみてください!)
いったいどんなきっかけで、新たな動物と出会い、イラストにしていくのか。新作とあわせて、これまでのエピソードを教えてもらいました。
chippitomuさんの初夏の新作は、大人気のハシビロコウのイラストがプリントされたサマーバッグ。
地球にも優しいジュート素材を使用していて、内側はビニール皮膜で撥水効果も◎ 実はかばんの内側にも4匹の動物が隠れており、使っている最中も楽しいバッグとなっています!
新しいイラストを描く時にどんなふうに着想を得ているのかおたずねすると……
動物園に行ったり、動物の動画を見て、心が揺さぶられた動物がいたらそれをすぐにイラストに描いています。動物は好きですが、涙がでるほど心を揺さぶられた動物しか基本的には描きません。
chippitomuさん
そして一晩寝て起きて、興奮が冷めやまなかったら作品にしてみようというスタンスです。なので、いつも120%、本当にこの動物良いんですよ~!!最高でしょう!!という気持ちで作品を作っています。
涙がでるほど心を揺さぶられた動物しか基本的には描かない、というchippitomuさんが、ここまで「無の動物」に惹かれたのにはどんな理由があったのでしょうか。
きっかけはハシビロコウとの出会いでした。
chippitomuさん
私の中で動物といえば、犬、猫だった時代が長く、動物は好きだけど、マニアックな動物は全然知りませんでした。
そんな私がある日出会った1冊の本が、ハシビロコウの写真集です。
その本を見てなぜだか無性に気になって、会える動物園を探して、直接ハシビロコウに会うためにバスに乗って行きました。
私が出会ったハシビロコウはとても大きくて、そしてやっぱりほとんど動きませんでした。
風が吹いても他の小鳥たちが飛び立っていっても、その場から動かないハシビロコウの我が道をゆく凛々しさに涙がこぼれそうになりました。私もああなりたいなと。
その時から自分のペースで生きる動物たちを追い続けています。
chippitomuさんが心を揺さぶられイラストを手掛ける動物たちは、決して誰もが知っているメジャーな動物ではありません。
一体どのようにして、そんな動物たちとの出会いを果たすのでしょうか?
ニッチな動物はTwitterの動物園や動物好きな方からの情報が多く、映像から入ることが多いと思います。
chippitomuさん
初期の頃は、自分で動物園に行って感激した動物を描いていたのですが、最近はTwitterのタイムラインを見ていると自然といろんな動物の情報が入ってくるのでそこでの出会いが多くなっています。
誰が見ても絶対に可愛いって思う動物よりも、これのどこが可愛いの?という世間ではあまり知られていない動物の良いところを見つけて広めたい気持ちが強いので、必然的にマニアックにどんどん引き寄せられています。
また、虫好きな夫がいるのですが、彼の影響もかなり大きいと思います。
アオアシカツオドリは彼がTwitterで見つけた動画を見せてくれて、求愛ダンスが可愛すぎて一気に描き上げました。夢は家族でガラパゴス諸島にいくことです。(アオアシカツオドリはガラパゴス諸島の鳥であることと、ガラパゴス諸島のたくさんのいきものをみてみたいからです)
アオアシカツオドリの求愛ダンス、気になりますよね。chippitomuさんの言葉を機に検索して観たところ、のんびりと思うがまま、感情豊かに羽を広げて愛情を表現する姿に尊さすら感じました。
「可愛い!」だけじゃない、心が震えるほどの深い感情の動き。
作品から覗き見るchippitomuさんの視点には、そんなエネルギーが詰まっているようでした。
私はイラストを描くときに、自分だけの視点を入れるのですが「この動物はこの瞬間が一番陽気で面白くて可愛いんですよ!」というところが伝わるようにしています。
chippitomuさん
アオアシカツオドリはただ踊っているだけじゃなくて、見たことないくらいゆっくり踊って求愛している雄と、それを見ているのか見ていないのかわからないような顔で待っている雌がいて、双方がかみ合ってなさそうなところが面白いんだよ、という視点を盛り込みました。
その可愛さをお客様に受け入れてもらったその瞬間が、一番幸せで楽しいです!
無理して笑わなくても、人に合わせなくても、あなたはあるがままで大丈夫。
chippitomuさんのイラストをみていると、「無の動物」たちの姿からそんな勇気をもらえる気がします。
ユニークさとやさしさの両方を持つそんな作品を、暮らしのおともに迎えてみませんか?
次はどんな新作に会えるかな?未知との出会いをお買い物で楽しもう。
3名のクリエイターの新作と、新作を生み出すまでのお話をうかがいました。
インスピレーションの源や構想の立て方は人それぞれですが、創造意欲をかきたてられ、わくわくと新たなものづくりに取り組むクリエイターの姿は、お話を聞いているだけでこちらまで胸が高鳴るようでした。
明日は、そして来週は、どんな新作と出会えるんだろう?
きっとクリエイター自身もまだ分からない、みたことのない素敵な作品と、これからもたくさん出会えますように。
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