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「今、私が会いたい人」虹色に変わるチタンで、誰もが楽しめるアクセサリーを作りたい|Asさん

「今、私が会いたい人」虹色に変わるチタンで、誰もが楽しめるアクセサリーを作りたい|Asさん

こんにちは。今年の4月に新卒入社し、現在はイベントの企画を担当している薄田です。

先日、私が「この作品を身に着けるためにピアスホールをあけたい!」と思ってしまうほどその魅力に引き込まれたアクセサリーを手がける、Asの丸山さんにインタビューさせていただきました。

 

出会いは私がまだインターンをしていた頃、イベント開催のお手伝いに行ったときでした。そこにAsさんが出展されていらっしゃり、虹やシャボン玉のようにキラキラと輝く作品に目を奪われました。

「まるで虹を手に取っているみたい。」

Asさんの作品に出会ったとき、そう感じたのをよく覚えています。「チタン」を素材にしたそのアクセサリーは、きらめくグリーンや水面のように光るブルー、太陽のように輝くイエローにふんわり優しいピンクなど…… ひとつの作品からシャボン玉のようにさまざまな色が発せられています。まだピアスホールもあけてもいませんでしたが思わずピアスを購入してしまいました。

▲ 購入してからピアスホールをあけました!実際に購入したピアス

今回As:丸山さんにインタビューする機会をいただいたのですが、実際にお話を聞いて目の前で制作の様子を拝見することで、Asさんの作品はもちろん、作品づくりにかける想いにますます引き込まれていきました。

今回は、そんな魅力を余すことなく皆さまにお伝えできればと思っています!

▲ 写真左:クリーマ 薄田、右:As 丸山さん。Asさんの工房にて

素材を循環させられる彫金の魅力

――ものづくりの道へ進むことになったきっかけを教えてください

両親が家業で彫金教室を行っていたので、物心ついた頃から見よう見まねで金属を溶かしたり叩いたりしていました。特にきっかけはなく、気づいたときにはものづくりとともに生活していたんです。

陶芸だと落としてしまったら割れてしまうし、絵画だと途中で失敗してしまうとダメになってしまうこともあります。でも金属は、一回溶かしてしまえば元に戻り、また同じように使うことができるんです。切った端材、削った時に出た粉も、全部集めてまた固体にすることができる。この循環が彫金の魅力であり、私がこの世界にはまった理由のひとつでもあります。

▲ 素材ごとに集めている端材

実は、高校生の頃は音楽の道を志していたり、大学では哲学を学んだりと紆余曲折ありましたが、やっぱりものづくりが好きだと気づいて、2016年頃に本格的にクリエイター活動を始め、今に至ります。

発色が魅力。表現の幅を広げてくれるチタン

―― さまざまな素材がある中で、なぜ「チタン」を選んだのですか?

ゴールドはゴールド、シルバーはシルバー、基本的にはどれも素材の色は決まっていて、そこに作り手が何か変化を起こすことは難しいことがほとんどです。そんな金属素材の中でもチタンは、色を発色させることが可能で、その分、表現の幅が広がります。それがチタンの最大の魅力であり、おもしろさだと思います。

▲ 素材となるチタン

「発色」は何度やっても未だに予想しないことが起こったりして、それが化学の実験みたいでワクワクしますね。

▲ 「チタンの発色って単純に楽しいんです!」と熱くお話されるAs:丸山さん

―― 工房に入ってまず目に入ったのがたくさんの機械です。これらの機械をどのように使ってアクセサリーを作っているのか気になります。

まずは先ほどの棒状のチタンをこちらの機械でローラーの溝に入れて、圧をかけることで厚みや形を調整します。

次に、成形したチタンを適切な長さにカットし、それぞれアクセサリーの形にしていきます。

その後、チタンの輝きを出すためにグラインダーという回転工具でゆっくり、丁寧に磨きをかけます。

チタンの溶接には特殊な機械を使っています。素材の性質上、溶接する際に酸素に触れてしまうとチタンが酸化してしまうため、酸素に触れないよう溶接を行っていきます。

▲ 「ピッ!」という音とともに激しい光が私の目に飛び込んできました。その光の正体は、なんと電気。チタン同士を通電させることにより、酸素と化合させることなく溶接が可能になるとのこと。溶接といえば火花を散らしながら行うイメージだったので、驚きました。

溶接する際の温度は1,600度以上になり、注意して行わないと非常に危険な作業です。1回あたりペン先程度の狭い範囲の溶接しかできないため、何度も繰り返して溶接を進めていきます。

▲ 今回初めて知ったのですが、チタンの溶接はほかの金属と異なり、金属加工技術の中でも非常に困難とされている作業だそうです。真空状態で溶接する必要があるため、この機械が必要ということでした。

―― そして最後は、私がずっと気になっていた発色の作業! チタンをあの美しい色に発色させるにはどんな工程があるのでしょうか。

特殊な液体にチタンを入れ、スライダックという変圧器を使い電圧を変化させながら色を調整していきます。

▲ 左手で電圧を調整しながら、右手で発色させている様子
▲ チタンそのもののシンプルなシルバー色から、ものの1秒程度で色が変化します。まるで魔法のよう!

その後は、何度も液体につけたり出したりを繰り返し、色の最終調整を行い、ようやく完成です。

―― 発色ってどういう原理なんですか?

簡単に言うと、錆(さび)があの独特の虹色を生み出しています。鉄であれば赤茶色、銅であれば緑青色など、金属によって錆の色は違うのですが、ひときわ美しい色合いに錆びる金属がチタンなんです。

錆の上を酸化皮膜が覆っている状態なのですが、膜自体は無色透明で、膜の厚さによって光の屈折率が異なり、このような虹色に見えています。この膜を取る方法は、削り取るしかないので、何かしらの強い衝撃が加わらない限り、半永久的に美しい発色が保たれます。

どんな人でも楽しめて、誰もが似合うアクセサリーを作りたい

[片耳用]立体フープピアス [TOGURO] 002 color01

―― 作品制作におけるこだわりについて教えてください

貴金属は、素材によって価格が大きく変わってきますし、人によってはアレルギーを起こす方もいます。どうしても手に届く人と届かない人がいるんです。せっかく作るなら、誰もが楽しめるアクセサリーを作りたいと思いました。
金属アレルギーが出にくいという素材面と、気軽に身に着けることができるコスト面、両方を兼ね備えているのが「チタン」でした。

 

さらにチタンには、着色ではない “発色”という魅力があります。発色により表現の幅が広がるからこそ、色味を活かす意味でもデザインはできるだけシンプルになるようにしています。

それはあまり多く手を加えてしまうとデザインのためのデザインになってしまうと感じるからです。私は、美しいものは洗練されていてかつシンプルなものだと思っているので、誰もが似合う、できるだけシンプルなアクセサリーになるように心がけています。

―― シンプルなものを作るときのポイントってありますか?

おもしろいのが、形は良いと思っても、いざ発色させてみると微妙ということが本当によくあるんです。トータルでちょうどいいデザインにしなければいけないので、とにかく何度もやってみるのが一番! 頭で考えず、とにかくなんでもつくってみる。なんでもやってみる。これが私のスタイルかなと思います。

〔両耳用〕かたちあそびピアス まる

―― 最後にこれからの目標を教えてください

アレルギーで悩んでアクセサリーを使えない、という方々にもっともっと知っていただき、たくさんの方に愛してもらえるような作品づくりをしていきたいです。

インタビューを終えて

▲ 写真左:As 丸山さん、右:クリーマ 薄田

Asさんの制作工程は想像以上に複雑で、予想もしていなかった機材を使い、様々な技術を組み合わせたものでした。ずっと気になっていた虹やシャボン玉のような美しい色合いは、チタンという素材の特性と、それを活かすための絶妙な液体の調合と電力調節、そして長年の勘やセンスが融合して生み出されていることがわかりました。

プロフェッショナルな技術を目の当たりにし、作品ができあがっていくのを肌で感じることで「やっぱり、ものづくりっておもしろい」、改めてそう思いました。

そしてあのとき、もしあのイベントにいなければ、私はAsさんに出会うこともなく、ピアスを楽しむこともなく、今回のインタビューも実現していなかったはずです。私にとっては、運命の出会いだったように感じています。

 

これからイベントチームの一員として取り組んでいくにあたり、私自身が経験したような、素敵な出会いを、イベントをきっかけに生み出していけたらいいなと考えています。

今は7/23(土),24(日)に開催される「ハンドメイドインジャパンフェス2022」の準備の真っ最中です! 一人でも多くの方々に素敵な出会いを届けられるよう、力を尽くしています。クリエイターの皆さんとお話しながらお買いものを楽しめる良い機会です。ぜひ、東京ビッグサイトまで足を伸ばしてみてください。きっと私のように、運命の作家さんとの出会いが待ち受けているはずです!

「ハンドメイドインジャパンフェス2022」公式HP

これまでの作り手インタビューはこちら

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