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伝統をより魅力あるものへ。うちわと刺繍、箔とグラスアートが出会ったら【京都ものづくり紀行】
京都には、千年の歴史に育まれた技と美意識が息づく伝統工芸品「京もの」があります。伝統的な技術が脈々と受け継がれ、現代の感性とともに続けられている京都ならではのものづくり。
そんな「京もの」の担い手と、Creemaのクリエイターが出会ったら? 「京もの」の伝統的技術・技法を活かしつつ、斬新でクリエイティビティ溢れる、新たな作品づくりに挑むクリエイターを募る「アイディア募集コンテスト」を開催しました。
全国のCreemaクリエイターから寄せられた、70件以上ものアイディアのなかから、今回は3組のコラボレーションが実現。京都府内で実際に京ものの担い手とクリエイターとが意見交換を行い、その後もオンラインでやりとりをしながら共同で作品制作に取り組んできました。
今回Creemaのクリエイターとコラボレーションするのは、樂焼に、京うちわ、箔押しの職人たち。作品の幅を広げ、新しい挑戦を求めて企画に参加されました。完成した作品はCreemaのサイト内や、2025年1月に開催される「ハンドメイドインジャパンフェス冬(2025)」にて販売を行います。
この記事では、2組のコラボレーションをご紹介。京都府内で行われた商品開発・制作アイディアミーティングに伺い、作品づくりの想いやコラボレーションの面白さについて聞きました。
塩見団扇・秋田悦克さん × petacoの富士商会・petacoさん
コラボレーション1組目は、京うちわとミシン刺繍です。
京都でうちわを作って70年以上の塩見団扇さんは、創業から積み重ねたものづくりの力に現代の技術やデザインを取り入れて、今の生活に使われる、新しい風を届けるうちわ屋さん。
「京うちわ」は、都うちわとも呼ばれ、江戸時代に京都の御所で使われていた装飾性を高めたうちわが、のちに町衆に広まったものなのだとか。うちわ面と柄の部分が別に作られ、あとからはめこむ構造が特徴です。
塩見団扇さんはこれまでもデザイナーとコラボレーションし、伝統的なうちわだけでなく、現代のライフスタイルにあう一味違ったうちわを作ってきました。
秋田さん:京都にいると70年なんて、まだまだ若い会社なんです。老舗と同じことをやっていてもしょうがないので、こんな新しいもん作れへんやろか、って考えてやってみるし、そのほうが楽しいですね。
秋田さんが出会いを求めていたクリエイターは、夏の涼をとるだけでなく日本の文化としてうちわを伝えていくために、デザイン・モチーフの斬新なアイディアを考えて一緒に作っていける人。
選考の結果、数十ものアイディアから選ばれたのは「petacoの富士商会」のpetacoさんです。40年以上イラストレーターとして活動している経験を生かし、自身の図案をもとに半衿をはじめとした和小物をミシン刺繍で制作しています。
毎日のように着物で暮らしているというpetacoさん。日本の四季をテーマに、季節のうつろいを身につけられるような小物を毎日の暮らしのなかに提案しています。
petacoさん:いつもの刺繍で、身につける和小物を作ってお客さまへお届けするというのも面白いんですけど、自分ができない技術を使って一緒にものづくりを完成させていくというのは、また違う面白さがあります。私がいちからうちわを作ろうとしたら何年かかるかわかりません。塩見団扇さんとご一緒してなにか素敵なものができたら面白いだろうなと思って、アイディアを応募しました。
うちわを縁起物に。熊手をあしらってお正月に飾るアイディア
petacoさんのアイディアは、うちわを縁起物としてリデザインするというもの。熊手をモチーフに、刺繍をほどこした布をうちわに張ってお正月に飾ってもらおうと考えました。うちわなら薄くて軽く、飾る場所を選びません。
petacoさん:年々大きくしていく風習がある熊手ですが、うちわにオーナメントをひっかけられるようにしたら、その年によって付け替えたり、干支のオーナメントを増やしたり、従来とは別のかたちで場所をとらずに毎年楽しめると思ったんです。
秋田さん:京都で商いをしていますから、まわりに縁起物を扱っていらっしゃる方も多いんです。ただ、うちわ屋としてはなかなか手を出しづらい領域で。petacoさんのアイディアを聞いて、その手があったかと思いました。じつは以前に木をイメージしたうちわを作っていて、季節によっては緑の面をクリスマスツリーのように飾ってほしいと考えていたんです。なのでオーナメントのアイディアはすっと入ってきましたね。
違う視点を持つからこそ気づけたこと、生まれたもの
お2人に、今回のコラボレーションをしてみた感想を聞いてみました。
秋田さん:意外だったのは、京都の私たちと、東京に暮らすpetacoさんの知っているおかめさんの顔が違ったこと。関西と関東で表情が違うんですね。
petacoさん:それに、関西の熊手ではおかめさんよりも恵比寿さんが多いそうなんです。今回のコラボレーションならではの気づきでした。
petacoさん:難しかったのは、うちわとして実現可能な刺繍への落とし込みです。当初のアイディアは面で表現する刺繍やパッチワークで熊手を表現していたのですが、なかなかうちわに張るのは難しいことがわかったんです。しばらく寝かせてみて、線画の刺繍で表現するというひらめきで乗り越えました。
秋田さん:せっかくアイディアをいただいたのに、技術的に難しいことは難しいとお伝えしたので、気分を害されないかなとかいろいろ考えてしまいました。
petacoさん:でもね、ちゃんと言ってもらわなくちゃわからないから、言っていただいてよかったんですよ。せっかくならいいものを作りたいですから。
この日のミーティングでも、お2人はうちわに張ったときにより映えるように柄の位置を調整することや、より美しく見えるパーツの選定と仕立てについて、作品のブラッシュアップを目指して議論しました。
金彩扇子作家・米原康人さん × RayColors・堀木れい子さん
コラボレーション2組目は、箔押しとグラスアートです。
伝統工芸士の米原康人さんは、京扇子に箔加工を施す職人です。また、箔柄素材を家具や内装材としてインテリアに提案する新しい試みにも取り組んでいます。
京扇子は分業で作られ、扇骨、地紙、上絵、箔押し、折、附け、とそれぞれの専門知識や技術を持った職人が連携します。米原さんは箔押しの職人として、家業を継ぎました。
米原さん:金、銀箔を使った工芸の表現には、日本人の信仰や美徳の歴史が刻まれています。その時代、時代で紡いできた表現技法や意匠は、職人が現代まで繋ぎ、進化させてきた財産です。箔押しで受け継がれている金、銀の表現が持つストーリー、伝統工芸として繋いできた表現を “今” のライフスタイルに溶け込むよう編集し、ご提案しています。
米原さん:日本の工芸の加飾表現技法「箔押し」を大切な文化として未来へ繋いでいきたいと思っています。現在の作品は扇子が中心です。扇子以外の新しいジャンルのものに、箔を使っていただけるクリエイターさんに出会いたいと思い今回の企画に参加しました。
米原さんが作品づくりのパートナーに選んだのは、グラスアート作家のRayColors・堀木れい子さんです。堀木さんは、沖縄でカラーセラピーを生かしたグラスアートを制作しています。
グラスアートは、フィルムアートとも呼ばれ、窓用に開発された専用のカラーフィルムをカットしてガラスやアクリルに貼り、最後にワイヤーを貼ることでステンドグラスのような表現ができる技法です。
堀木さんは窓用のフィルムを活かして、インテリア雑貨も作っています。グラスアートはガラスに限らず、表面がつるつるしたものなら、アクリル、石、木、金属、ホーローなどに施せます。堀木さんの作品の明るい色彩は、見る人に元気と癒しを与えてくれます。
米原さん:以前堀木さんが土佐和紙の職人さんとコラボレーションしたという話を聞いたんです。だったら箔を押した和紙も素材として生きるのではないかとイメージが浮かびました。とはいえ、表現の方向性はまったく違っていて、堀木さんなら自分が引き出せるのとは別の表情を、箔で作ってくれると思ったんです。
日々の彩りとして手に取ってもらうために、日常に根ざしたものを
せっかく販売するので、大きなアートピースではなく日常に根ざしたインテリア用品を作ることに決めた2人。
実際の制作は、京都で米原さんが和紙に箔を押し、沖縄の堀木さんへ送って、堀木さんが和紙を切ってグラスアートに加えて完成させます。
堀木さん:米原さんが箔を押した和紙を素材として送ってくださって、もう受け取った瞬間から「はやく作りたい!」とうずうずしました。グラスアートのフィルムには不透明なものもあるのですが、箔の風合いは奥行きがあって全然違うものでした。
その箔を見たときに「マルコポーロ」のイメージがすぐに浮かびました。東洋だけでなく西洋だけでもなく、オリエンタルないろんな文化が混ざりあったようなイメージです。ばっちりいいものができたので、ハマってしまって、シリーズとして展開してみました。
それぞれの「光」を取り込んだクリエイションの出会い
実際に作品を制作してみての感想をお2人に聞いてみました。
米原さん:ほかのクリエイターさんが、箔を使ってどんなイメージを湧かせるのか、どんな表現をされるのか、知ることができて勉強になりました。自分のなかにバリエーションとして取り入れることができました。
堀木さん:まだまだ違うものも作れそうですよ。和風な表現も合うと思うし、エジプトのようなイメージも合うはず。箔とグラスアートでいろんなところにワープできそうです。
米原さん:この箔の色は、銀が焼ける過程で出てくる色味なんです。悪く言ってしまえば、ピカピカの状態から黒くなっていく劣化ですが、そこに味わいを見出し、深みがあるよね、とすくいあげたのが日本人の美意識だったんですね。その深みを堀木さんにはうまく活かしてもらったと思います。
完成した作品実物を前にしてのこの日のミーティングでは、裏からも綺麗に見える処理など今後の改良の可能性をディスカッションしました。
取材を終えて
京ものの担い手と、Creemaのクリエイターとのものづくりのコラボレーションの様子をお届けしました。
それぞれの方のプロフィールや作品を拝見したときには、この出会いから一体どんなコラボレーションが生まれるのだろう? と想像がつきませんでした。しかし、実際の作品づくりの現場で、お互いをリスペクトし、いいものを作ろうとアイディアを交わし合う様子は、こちらまでわくわくしてしまうほど。今までにない作品が生まれる様子とその熱を、皆さんに少しでも感じていただけたらと思っています。
「京都ものづくり紀行」の特設ページでは、今回ご紹介した2組以外のコラボレーション作品もご紹介しています。
受け継がれてきた伝統と現代のクリエイティビティとがあわさって生まれる、今の私たちを惹きつける作品ばかりです。ぜひお楽しみください。
<文=オギユカ>
※ 本記事は京都府の伝統工芸品・地場産品に係る販路拡大の取組の一環として、 株式会社クリーマが制作しています