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【"気になる" に寄り道。】1400年変わらない、岩絵具を使って。時間の重なりを感じる腕時計
いま編集部が “気になる” 作品にフォーカスを当て、編集部目線でその魅力をお伝えする「“気になる” に寄り道。」シリーズ。読みものをきっかけに、みなさんにもちょっとした “寄り道” を楽しんでいただけると嬉しいです。
今回は、文字盤からケース、ベルトまで、すべて手づくりにこだわって腕時計を作る、シーブレーンさんをご紹介します。シーブレーンさんの作品のなかでも「iroha」シリーズは、日本画に使う伝統的な「岩絵具」を文字盤に使用している、希少な腕時計です。長い歴史を持つ岩絵具特有の美しさと、オールハンドメイドのあたたかさを身につける、腕時計の世界に寄り道しましょう。
シーブレーンさんの、岩絵具を使った一つひとつ手づくりの腕時計
ふと手元の時間を確認するたび、不思議と奥行きのある複雑な色合いが目に入ります。
シーブレーンさんの腕時計シリーズ「iroha」のいちばんの特徴は、文字盤の独特な風合いです。
近づいて見てみると、いろんな色が混ざり合っていて、質感もざらっとしているよう。その秘密は、「岩絵具」にあります。
岩絵具とは、日本画を描く際に用いられる、主に天然の鉱物を砕いて作る絵の具のこと。7世紀ごろに当時の朝鮮王朝・高麗の僧侶が、紙や墨とともに日本へ伝えたといわれています。
その後建築や美術に用いられ、伝統的な絵の具として重宝されてきました。たとえば奈良の高松塚古墳の壁画や、法隆寺金堂旧壁画などでもその美しさを見ることができ、長年経った今でもあせることなく美しい色を伝えています。
そんな岩絵具に着目したのが、日本画家としても活動しているシーブレーン・牛島さん。もともとは一般的なアクリル絵の具で着色していた文字盤に、岩絵具を塗ってはどうだろうかーー と生まれたのが、この「iroha」シリーズです。
数ある岩絵具のなかでも、天然アズライトから作る「群青」と、天然マラカイトから作る「緑青」は、なんと約1400年以上、素材や技法も変わることなく現代まで受け継がれ、使い続けられているのだそう。世界でも類を見ない長い歴史を持った、美しい絵の具です。
「iroha」シリーズに使う岩絵具は、すべて天然の鉱物から作られています。
文字盤を作るときには、岩絵具に膠(にかわ)という接着剤を混ぜて、和紙に幾重にも塗り重ねて制作します。これは、日本画の伝統的な技法なんだそう。透明感と色の奥行き、ざらざらとした鉱物の質感を感じられる、美しい文字盤ができあがります。
文字盤のほかにも豊かな時間を届けたいというシーブレーンさんのこだわりは随所に見られます。
「iroha」シリーズは、文字盤から、時計の針、それらを収めるケース、ベルトに至るまで、すべて特製、手づくりで作られているんです。
「手づくりでしか生み出せない、一つひとつ心を込めてつくられたものの魅力は、決して忘れられてはいけないし、非常に大きな可能性を持っている」と語るシーブレーン・牛島さん。
ケースは、真鍮やシルバーを手作業で加工。そのため防水性はありませんが、手づくりならではのぬくもりある雰囲気が、岩絵具の美しい色合いを引き立てます。
革ベルトの色も豊富に揃い、文字盤に合わせて好みで選ぶことができます。ベルトは簡単に交換できるので、その日の装いや気分で付け替えるという楽しみ方も。
ベルトには上質な牛革を使い、裏側には染色や塗装がされていない植物タンニンなめしのヌメ革を貼っています。塗料やなめし剤によるかぶれや、汗等による染料の色落ちを抑え、肌に優しいベルトに。
オプションでベルトの長さを変更することも可能。細かなところまで使い手に寄り添うことができるのも、手しごとならではの魅力です。
irohaのほかに防水性のあるシリーズも展開していますが、Creemaにはその機能にはあえてこだわらず、シーブレーンさんが「私たちが本来やりたかった、手しごとのものづくり」で作られた、オールハンドメイドの腕時計のみ掲載しているのだそう。
時間を確認する。動く針の奥に、長い歴史を持つ美しい色と、鉱物が生まれるまでの遥かな時間をみる。手しごとのあたたかみに触れ、心が柔らかくなる。そんなひとときが、1日のうちに何度も、時計を見るたびに訪れる。
一本の腕時計には、手づくりだからこそ叶えられる、豊かな “時間” への願いが込められていました。
—— そろそろ寄り道の時間もおしまいのようです。
どうぞ次回もお楽しみに。