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あたたかな宮崎の伝統工芸。可能性を広げるコラボ【宮崎ものづくり紀行】

日本のひなた、宮崎県。九州の宮崎は神話の時代から「日向」と称されてきました。明るく、あたたかく、心地いい気候は、この地ならではの伝統工芸も育んできました。
宮崎で大切に受け継がれてきた伝統工芸品と、Creemaのクリエイターのものづくりがコラボレーションしたら、一体どんな作品が生まれるのでしょうか。このたび、宮崎県とCreemaが初めてタッグを組みました。宮崎の伝統工芸品の商品開発や改良アイデアを、クリエイターの自由な発想や技術で、より魅力あるものにするために共同で作品開発に取り組みます。
今回Creemaのクリエイターとコラボレーションするのは、縁起物の「のぼりざる」、焼き物のうつわ「小松原焼」、そして宮崎の自然が育んだ「竹炭アイテム」。3組のコラボレーションが実現し、宮崎県内で伝統工芸の担い手とクリエイターが作品制作を行いました。その様子をお届けします。
縁起物の郷土玩具「のぼりざる」を次世代に伝えたい
1組目は、縁起物の「のぼりざる」と、心が明るくなるような絵を手がける画家とのコラボレーションです。
宮崎県延岡市で、子どもの健やかな成長を願い端午の節句に飾る縁起物「のぼりざる」を制作する橋倉由美さん。現在では、のぼりざるの唯一の作り手となりました。

のぼりざるは、延岡に江戸時代から伝わるとされている郷土玩具です。田畑の作物を食い荒らす猿を退治したところ、豊作となったものの、子どもの疫病が流行ってしまった。猿の祟りではないかと、のぼりざるを作って供養したところ、疫病は収まり、人々は喜んで豊作と健康を祝ったといわれています。
かつての延岡では、鯉のぼりとともに、のぼりざるが端午の節句を彩っていました。5月の風に吹かれて、張子の猿が上下する様子はなんだか愛嬌があるんです。

橋倉さんは、延岡周辺でしか紹介していない「のぼりざる」を、より多くの人に知ってもらうことで次世代に繋いでいきたいと願って、今回の企画に参加しました。
そこで出会ったのが、画家のむらいさきさん。

アクリル絵の具を中心に使い、自然をモチーフに明るく心が上向く絵を制作しています。
2人は、最初の打ち合わせから意気投合。ウェディングのお祝いになるようなアイテムと、春夏秋冬をテーマにしたデザイン、犬と猫をモチーフにした作品を作ることにしました。
ベースとなるのぼりや張子の猿を橋倉さんが作って、むらいさんへ送り、むらいさんが絵付けをして完成させます。

完成したお猿さんは、橋倉さんの想像以上! 愛らしいお猿さんに「びっくり、かわいい、うれしいの3つの言葉が浮かびました」と笑顔で話す橋倉さん。

橋倉さん「今回こんなふうにコラボレーションできて、作品が完成したことはもちろんだけれど、むらいさんと出会えたご縁が嬉しいです」
むらいさん「今度は純和風の作品にも、一緒に挑戦してみたいですね」

伝統の小松原焼が、植物と出会った姿を見たい
2組目にご紹介するのは、小松原焼と盆栽のコラボレーションです。
陶芸家の朴平意さんは、安土桃山時代から400年以上の歴史を持つ小松原焼を制作しています。

「人と同じでない自分らしさ」「均整とはひと味違う味わい」「特徴あるゆがみ」を大切に、ルーツを持つ薩摩焼とはひと味違う小松原焼の魅力を引き出しています。
小松原焼は、表面の細かな割れ、「蛇蠍(だかつ)」「鮫肌」という技法が特徴的です。

そんな朴さんは、生活にやすらぎとうるおいを感じられるような「植物とコラボした新たな小松原焼作品」を作りたいと考え、今回の企画に参加しました。
そして選ばれたパートナーは、群馬県前橋市にある創業60年の盆栽屋・石井盆栽です。
石井盆栽の大島幹也さんは、「伝統的でありながら、モダンな盆栽を」をコンセプトに、赤城山や浅間山など雄大な群馬の山々に囲まれながら盆栽を育てています。

大島さんは、盆栽と世間のギャップを感じていると言います。世間や時代に合わせて新しい提案をしていきたい、と盆栽のさらなる可能性を探るために、今回の企画に参加しました。
大島さん「均整ではない小松原焼と同じように、盆栽も1本として同じ姿・特徴の木はありません。唯一無二の掛け合わせだからこそ、新しい盆栽の可能性があると思いました」
朴さんは、大島さんとのコラボレーションを直感で決めたといいます。
朴さん「会う前から決めてたの。僕は盆栽が好きだし、そのなかでも大島さんの盆栽は焼いた鉢に植え込んだときのバランスが抜群なんですよ。それで実際に会ってみたら、ちょっと普通の人じゃないなってひと目見て嬉しくなりましたね」

コラボレーションのための鉢を受け取ったとき、大島さんは、一見同じように見えても一つひとつ違う釉薬の流れ方の味わいに感銘を受けたと言います。
大島さん「同じ釉薬でも、1鉢1鉢、表情が異なります。その鉢に何を植えようかと考えるのは楽しかったです。伝統的でありつつ、モダンな盆栽に仕立てたくて、そのバランスを取るのが難しかったですね」
朴さん「これからも型にはまってないような遊び心のあるものを作りたいね。すべてはバランス。遊び心を入れて、ゆがみがあっても、バランスをとれていれば良い作品になるんだよ」

宮崎の自然が育んだ竹炭を、生活の癒しとして取り入れてほしい
3組目のコラボレーションは、オーガニックと製法にこだわった竹炭と、アップサイクルデザイナーが出会いました。
「宮崎の自然が育んだ竹の良さを伝えたい」。そんな思いで、地元の竹資源を有効活用するものづくりに取り組んでいる有限会社竹炭の里(たけすみのさと)の飯田浩一郎さん。

素材である竹を育てるところからこだわり、オーガニックで栽培・育成しています。竹炭作りとともに持続可能な里山づくりに取り組んでいるのが竹炭の里です。その竹を、昔ながらの本格土窯を使い、職人さんが一つひとつ手作業で丁寧に焼き上げて、最高品質の竹炭が生まれます。

竹炭が持つ消臭効果や、夏冬の湿度を一定に保てる調湿効果を活かして、生活を彩るインテリアアイテムを作りたいと、飯田さんは今回の企画に参加。
機能性とともに部屋を彩る作品のアイデアを考えたり、一緒に作るクリエイターとの出会いを求めていました。

コラボレーションのパートナーに選ばれたのは、プロジェクトAlter。社会課題を解決することを目標に、デザインとサイエンスを活用する東京のチームです。プロジェクトAlterからは創業者の清水麗子さんと、デザインエンジニアの竹越美夏さんが参加します。
これまで、食材のアップサイクルや、バイオプラスチックの開発などに取り組んできました。
竹炭の里の飯田さんは、若いプロジェクトAlterと一緒なら、伝統的な製法と竹炭のよさを守りつつ、今まで思いつかなかったようなイノベーションを起こせるのではないかと、コラボレーションを決めました。
今回は、竹炭を材料に、その消臭効果や吸湿効果を生かしたインテリアアイテムづくりに挑みます。

この日は、プロジェクトAlterのふたりが作成したプロトタイプを飯田さんとともに確認しました。
飯田さんが提供した枝やパウダーの形状にした竹炭を、プロジェクトAlterがブロックやシートに加工して、消臭アイテムとして使えるタグや一輪挿し、ランプシェードにデザイン。

飯田さん「いやぁ、予想以上です! このランプシェードの折り方なんて、なかなか辿り着かないアイデアですね」
竹腰さん「レーザーでシートに折り目をつけて、ミウラ折りという折り方を参考にして制作しました。表面積も大きくなるので、竹炭の吸着力をしっかり生かせます」
清水さん「素材はシンプルに生かしつつ、でもちょっと真似しにくいようなデザインを作れたと思っています。黒の色がかっこいいので、インテリアシリーズとして揃えたくなるような展開も考えたいですね」

完成した作品を、HMJでお披露目
こうして出来上がったコラボレーション作品が、2025年1月18日(土)〜19日(日)に開催された日本最大級・クリエイターの祭典「ハンドメイドインジャパンフェス冬(2025)」(以下HMJ)でお披露目されました。

HMJ当日は多くの来場者さんがブースを訪れ、作品を手に取っていました。
参加したクリエイターからは、「来場者さんと話すなかで、新しい気付きがあった」「目の前で作品が売れていく様子が励みになった」という声が。
実際に作品を見ながら使い手と直接話すことで、今回のコラボレーションの手応えも感じられたようです。
取材を終えて
宮崎で大事に受け継がれてきた伝統工芸を、新しいアイデアでさらに広がりのある作品へと進化させた今回のコラボレーション。わくわくするようなアイデアが生まれ、どの組も本当に楽しそうにものづくりについて語り合われている様子がとても印象的でした。
「宮崎ものづくり紀行」の特設ページでは、今回ご紹介した3組以外のコラボレーション作品もご紹介しています。あたたかな宮崎から生まれてきた作品を、ぜひお楽しみください。

<文=オギユカ>
※ 本記事は宮崎県の伝統工芸品・地場産品に係る販路拡大の取組の一環として、 株式会社クリーマが制作しています