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【あの作品のB面】より身近に、多くの人に。一度は作らないと決めた、アクセサリーへの挑戦|ガラス工房Merhabaさん

表からは見えにくいけれど、確かに存在するもうひとつの側面。制作の裏側や試行錯誤、発見など、知る人ぞ知る魅力に迫ります。普段は語られない「あの作品のB面」を、一緒に覗いてみませんか?
今回「B面」に迫るのは、ガラス工房Merhabaさんの、万華鏡のような煌めきが美しい「プリズム」シリーズのアクセサリー。
「色で遊ぶ」をテーマに、吹きガラスで器やオブジェなどをメインに制作しているMerhabaさん。一度は作らないと決めたアクセサリーが生まれるまでに、どのような転機があったのでしょうか。
虹色に輝く、プリズムガラスのアクセサリー
透き通ったガラスの中に、とりどりの色が煌めく。Merhabaさんの人気シリーズ「プリズム」は、ヴェネチアンガラスの技法をベースに、いくつもの小さなパーツを作り、それを一枚の板のように並べて、熱で溶かし竿に巻き取って吹いて形を作るーー と、膨大な手間と時間をかけて生み出される作品です。
色や模様は、水面の煌めきや万華鏡をイメージ。いろいろな幾何学模様を組み合わせ、試行錯誤の末に生まれた美しい模様は、ガラスの透明感、きらきらと反射する輝き、落ちる影まで美しいところが魅力です。
作品をより多くの人に届けるための変化
一度は「アクセサリーは作らない」と決めていたというMerhabaさん。アクセサリー制作に踏み切った背景には、「変化が必要」という思いがあったそうです。
ガラスという素材や、イベントに合わせた置物は、季節によって作品の売れ行きに変動があるもの。加えて、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、生活が徐々に元に戻り始めたころ、インターネットでの作品販売が伸び悩んだのだそう。
もうひとつ問題だったのが、メインの作品である吹きガラスの制作。
通常、制作パートナーである奥さまとふたりで制作していますが、個展の在廊などで一人が欠けると制作ができなくなってしまいます。小さいアクセサリーであれば、特徴的な模様のパーツを先に制作しておけば、その後の工程は奥さまに任せることができる。
限りある制作時間のなかで、使い手により喜んでもらえる新しい作品として、Merhabaさんの人気作品のひとつ「プリズム」シリーズの魅力を身近に感じられるアクセサリーが誕生したのです。
こだわりの仕上げで、美しい色と光があふれ出す
このプリズムの美しさをアクセサリーに落とし込むには、いくつもの工夫がありました。
まずは、一つひとつサイズが違うパーツをどのように合わせ、きれいな四角形にしていくか。プリズムを作るパーツは、熱で柔らかくしたガラスを棒のように引き伸ばし、カットして作ります。手作業で作るガラス棒の太さは均等にはならないので、大量に作ったパーツのなかから、きれいに揃う組み合わせを探し出していきます。
表面の仕上げにもこだわりが。角度によって光と色の変化が出るよう、切りっぱなしの断面をあえて残しています。角はケガをしないよう、程よく焼いて滑らかに。カットしたガラス面のシャープな雰囲気を感じる、絶妙な仕上がりです。
Merhabaさん自身も実際に身に付けて、アクセサリーパーツの選定やチェーンの長さなど、細かいところも調整。理想的な仕上がりを追求しました。
実際にアクセサリーを発表すると、すでにプリズムの器を愛用しているお客さんから「待っていました」との声も。手に取りやすい価格で販売したことで、これまで器の購入を悩んでいた人にも、プリズムの魅力を届けられる作品になりました。
作品を、より多くの人に届けたい
アクセサリー制作への挑戦には、作品をより多くの人に届けたい、という思いがありました。
今年は、これまで関東中心だった個展も全国へ広げ、海外への展開も考えているのだそう。
たくさんの人との出会いを楽しみに、ガラス工房Merhabaさんの挑戦は続きます。
<文=庄司彩>