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【今、私が会いたい人】セレクトショップのように、ジャンルを超えて。自分の “好き” だけで終わらないものづくり|figさん

【今、私が会いたい人】セレクトショップのように、ジャンルを超えて。自分の “好き” だけで終わらないものづくり|figさん

こんにちは。クリーマで法務を担当している近野です。
今回「今、私が会いたい人」でご紹介するのは、キャンドルと彫金アクセサリーを手がけている、fig・岡田さんです。

Creemaでアクセサリーをさがしていたときに、思わず目を奪われたfigさんの作品。そして別の日にキャンドルをさがしていて、また心惹かれたものがありました。それも、figさんの作品でした。デザインだけでなく、作品に込められた思いにも惹かれ、同じクリエイターさんだと知って驚いたのを覚えています。

アクセサリーも、キャンドルも、どちらの作品にも強く惹きつけられる。この不思議な魅力の源をもっと知りたくて、実際にお会いしてお話を伺うことにしました。

▲ 今回は、彫金アクセサリーを制作する工房へ伺いました。(写真左:fig・岡田さん、右:クリーマ・近野)

オーガニックなアロマキャンドルで本物の癒しを届けたい

—— ものづくりを始めた背景を教えてください

「最初に手がけたのはアロマキャンドルでした。それまでは、ファッションやインテリアが好きでセレクトショップやインテリア会社で働くなど、好きを仕事にしてきました。ハードな働き方を15年以上続けたあと、一度立ち止まり、自分と向き合う時間を持ちました。そこでに気づいたのが、香りが私にとって欠かせない存在だということでした。

疲れているときにそっと癒してくれたり、張りつめた感情をほぐしてくれたり、幸せな気持ちをさらに高めてくれたり。香りがもたらしてくれる力の大きさに改めて気づき、美容というよりはリラックスできる場所として『香りにこだわったアロマトリートメントサロン』を立ち上げ、アロマキャンドルづくりを始めるようになりました」

▲ 森を歩く気分になるボタニカルアロマキャンドル Bordeaux

「当時、アロマキャンドル自体はどこでも手に入るのに、私が求めるオーガニックなアロマキャンドルが市販ではなかなかみつかりませんでした。

天然の植物などから抽出したアロマオイルには薬理作用※がありますが、人工香料を使った香りは同じようにいい香りでも、本当の意味でのリラックス効果をもたらす成分はないに等しいんです。

それなら、自分で作ってしまおう。そんな思いから始まりました。ハンドメイドだからこそ、素材に妥協せず、本物の癒しを届けられるようなアロマキャンドルを一つひとつ丁寧に作っています」

※薬理作用:植物に含まれる特定の成分が体の機能に働きかける作用のこと。

—— 歴史上の人物や星空を香りで表現したり、ユニークなものも多いですよね?

▲ 満天の星空を感じる✴︎アロマキャンドル the night

「『歴史上の人物シリーズ』は、つい最近完成したばかりの新作です。
もともと “人” が大好きなんです。歴史上の人物に対しても、強い好奇心があって。ひとりの人間としてどんなものが好きで、どんなことを考えて生きていたんだろうって、気になって仕方がないんですよね(笑)

美術館に行くのも趣味のひとつで、ある日ふと思ったんです。『マティスだったら、どんな香りを好むんだろう?』『彼の色彩や感性を、香りで表現するとしたら?』そんな想像から、このシリーズの制作が始まりました」

▲ 歴史上の人物シリーズは、アンリ・マティス(画家)、クレオパトラ7世(古代エジプト女王)、フィンセント・ファン・ゴッホ(画家)、マリー・アントワネット(フランス王妃)、ル・コルビュジエ(建築家)の5人。

「個人的にいち押しなのが、近代建築の父と呼ばれる建築家、ル・コルビュジエのブレンド。世間的にはあまり知られていない人物かもしれませんが、彼の圧倒的な個性と独自性を香りで表現してみたくて。今までのfigにはない雰囲気の、このシリーズでいちばん好きな仕上がりになりました」

▲ 瓶もラベルも、とことんこだわった一品。
▲ 実際にコルビジェのキャンドルの香りを試してみると、森のような香りが広がり、心がゆったりと落ち着きました。

一生飽きないと確信した、彫金との出会い

▲ phases of the moon・ムーンストーンシグネットリング

—— 彫金アクセサリーを始めたきっかけは?

「新型コロナウイルスの感染が急速に広がったことがきっかけでした。アロマトリートメントサロンは一時的に閉めざるを得ず、時間ができたので、以前からずっと興味があった彫金※の教室に通ってみることにしたんです。

実際に始めてみたら、想像以上におもしろくて、どんどん夢中になっていきました。彫金って、とても奥が深いんです。金属を削ったり、叩いたりしながら、自分のイメージを形にしていく作業には、無限の表現の可能性があります。」

※彫金:金属の表面に彫刻や装飾を施し、美しい模様や立体的なデザインを作り出す技法のこと。

▲ さまざまな彫金道具が仕舞われている棚。

「彫金は使う道具の種類が非常に多いことでも知られています。専用の工具を理解して、目的に応じて正しく使い分ける知識や技術が必要です」とfigさん。ひとつの作品を完成させる工程では大体20〜30種類ぐらいの道具を使い、同じ道具を何度も使うことはほとんどないのだそう。

▲ 金槌だけでも10種類以上。作品のデザインに合わせて使うそうです。

「彫金は、デザインを考えるところから始まり、金属を削る、刻印を打つ、石を留める、磨くといった、さまざまな工程がありす。作品にもよりますが、完成までに通常で1か月、3〜4か月かかることも珍しくありません。

なかでも、金属を彫って石を留める『石留め』は、地金と宝石の美しさを最大限に引き出す、重要な工程です。石の形は一つひとつ異なるため、その都度留め方を変えなければならず、デザインによっても手法は無数に存在します。繊細で緻密な作業のため、神経を集中させる必要があり、うまく仕上がったときには思わずホッとします」

▲ 2㎜のムーンストーンを留めている様子。このような非常に小さな石の場合はルーペで覗き込みながら作業をするそう。

「また、ついこだわってしまうのがやすりやリューターを使う磨きという工程です。その名の通り、金属を磨き上げる作業で、単純なようで難しい。
例えば、ロウ付は金属同士がくっついたら完了ですが、磨きは『もっとやったら、もっと完成度が高くなるんじゃないか』と思ってしまいます」

▲ デザインによってもリューターの種類は変わり、複雑な曲線や狭くて磨きにくい隙間などは非常に時間と手間がかかるそうです。

「やすりやリューターの粗さを少しずつ変えていくので、磨きは一回では絶対に終わらない作業です。ちょっとした傷が気になってやり直すことも多く、終わりがないんです(笑)」

▲ 「オーダー出来るナンバー・イニシャルネックレス・星/月」
繊細で立体的なデザインはより多くの道具と高い技術が必要。数字やアルファベットのデザインはハンドメイドならではの表情が魅力です。
▲ バーナー作業の様子。ロウ付けはもちろん、金属を柔らかくする焼きなましという工程でも使うそうです。
▲ 「美術館のようなart déco ピアス/silver925」
滑らかな曲線が繋がったデザインは、様々な彫金技法で完成させたfigさん人気のピアス。

「時間も手間もかかる彫金ですが、その醍醐味は、手仕事による自由な表現と緻密な技術が融合することで、独自の作品を生み出せることだと思います。

使う道具や技術も多様で、知れば知るほど、新しい発見があるんですよね。
まだまだ知らないこと、できるようになりたいことがたくさんあって、『これは一生、飽きることはない。ずっと続けていきたい』と、心から思っています」

独りよがりにならないものづくりを

—— アロマキャンドルと彫金アクセサリーを制作されていますが、figさんとして大切にしていることがあれば教えてください

「最初はアロマキャンドルだけをfigとして販売していましたが、彫金アクセサリーを作り始めたときに、新しいブランドを立ち上げるかどうか悩んだんです。
でも最終的には、セレクトショップのような感覚で、キャンドルもアクセサリーも一緒に並べていいんじゃないかと思いました。

ジャンルは違っても、ものづくりにおいて大切にしている想いは同じです。それは、独りよがりにならないこと。

たとえばキャンドルの香りをブレンドするときも、必ず誰かに試してもらって、納得いくまで何度も作り直します。アクセサリーも、見た目だけでなく、お洋服に引っかからないか、つけ心地はどうか、といった細かな部分まで大切にしています。

自分だけがいいと思っていないか? そうやって必ず立ち止まりながら、手に取ってくれる人の心地よさを何より追及したいと思っています」

インタビューを終えて

figさんの作品に触れて気付いたのは、私が本当に求めていたのは、香りや見た目の良さだけではないということ。

「自分も、使い手も、心からいいと思えるものを、こだわりを持って、丁寧に作り続ける」—— そんな想いが込められた作品に惹かれていたのだと思います。

figさんは、「好きなことをしたい」「いいと思うものを作りたい」という気持ちを大切にしながらも、それ以上に受け取り手がどう感じるかを常に大切にしていらっしゃいました。
その姿勢こそが、figさんらしい個性と、手に取る側の心地良さを両立させているのだと感じます。

これからも積極的に新作に取り組まれるとのことなので、とても楽しみです。ぜひ皆さんも、figさんのギャラリーページを訪れてみてください!

<文=Creemaスタッフ>

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