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【あの作品のB面】子どもの姿がヒントに。木工作家が、小さな砂場を作る理由

表からは見えにくいけれど、確かに存在するもうひとつの側面。制作の裏側や試行錯誤、発見など、知る人ぞ知る魅力に迫ります。
普段は語られない「あの作品のB面」を、一緒に覗いてみませんか?
今回「B面」を覗くのは、木工作品を手がけるTsünagaTTe(つながって)さんが作る、ヒノキの砂場。
自宅のお庭やベランダ、ガレージなどで遊ぶことができる45cm四方の大きさの砂場は、いわば “マイ砂場”。暑さで公園に出かけづらくなるこれからの季節にも、おうちで大好きな砂場に触れることができる作品なんです。
地元・岐阜県の「東濃ヒノキ」にこだわり、インテリアやカトラリーを作るTsünagaTTeさん。自身の子どもたちからヒントを得て生まれた砂場には、どんな物語があるのでしょうか。
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子どもの姿の向こうに見えた、ありし日の自分
きっかけは、まだ幼かった3人の子どもたち。
ほかの遊具もあるにも関わらず、砂場で永遠に遊び続けるのではと思うほど夢中になっていたのだそう。TsünagaTTeさんも一緒になって砂を触りながら、ふとある記憶がよみがえりました。
それは、自分自身が小さかった頃のこと。砂場で「棒倒し」をして遊んでいた日々の光景です。
砂で山を作り、そこに木の枝を刺し、両手で砂をかきわけていくーー
そんなシンプルだけど夢中になれるゲームが、幼い頃のTsünagaTTeさんは大好きでした。
思い出とともに湧き出した、懐かしくて、どこかあたたかい気持ち。その記憶をインスピレーションにしてできたのが、この砂場です。
砂場には、その棒倒しで遊べる棒がセットになっています。TsünagaTTeさんいわく「倒れやすそうだけど、なかなか倒れない」絶妙な長さを探って何度も試作を重ねたのだそう。倒れるとキョロキョロと動く目玉に、遊び心を感じます。
除菌砂は、手触りにもこだわって選んでいます。さらさらな砂は掻き分けていく気持ちよさがありますが、棒倒しには難易度が少し高い砂です。いかに倒さないようにするか、工夫しながら遊べます。
ヒノキの手触りに包まれる、癒しの砂場
TsünagaTTeさんの作品には、主に「東濃ヒノキ」が使用されています。「東濃ヒノキ」は、工房のある岐阜県で産出されるヒノキで、香り高く、ツヤ、キメの美しさが特徴。

なかでもTsünagaTTeさんが惚れ込んだのは、「まるで赤ちゃんの肌のよう」な、優しい肌触りです。
その肌触りを最大限に引き出すため、砂場に限らず、すべての作品で強いこだわりをもっているのが磨きの工程。最後の仕上げでは、自身の手で紙やすりを使い、ツルツルになるまで磨き上げます。時間も手間もかかりますが、どうしても妥協できない大切な工程です。
この「木製ヒノキ砂場」も、箱、蓋、スコップ、棒倒し用の棒に至るまで、すべて丁寧に磨き込まれています。子どもの手にも優しく馴染み、その心地よさに無意識に手に取ってしまいそうです。
子どもたちを見つめて生まれた作品たち
「自分自身も、子どもたちと一緒に成長してきた」と話すTsünagaTTeさん。砂場のほかにも、子どもたちと向き合う毎日からヒントを得て、作品を作ってきました。
たとえば、孫・子どもへの誕生日プレゼントや、クリスマスプレゼントに人気の「ままごと朝食セット」。「東濃ヒノキ」をはじめ、国産の山桜、杉の木を使った、いろいろな木の個性に触れられるおもちゃです。
出産祝いやお食い初めにおすすめなのが、こちらのカトラリーセット。「東濃ヒノキ」の手触りが優しい、スプーンとお箸のセットです。スプーンにはカーブがついていて、子どもが握り持ちで食べやすい形状。
「兄弟でお揃いにしました」「出産祝いにはいつもこれ」など、リピートする人も多い作品です。
TsünagaTTeさんのいち押しが、毎月オブジェを変えて楽しめる「季節の飾り12か月セット」です。浮かんだ三日月を背景に、四季折々の風景を月替わりで飾って楽しむことができます。
ひな祭りや子どもの日の飾りも入っていて、これひとつで節句飾りにも。子どもと一緒に飾れば、季節の変化に気づくきっかけにもなりそうです。
大人に向かう子どもたちと作る、これから
砂場で遊んでいた小さな背中は、今やすっかり大きくなりました。
子どもたちが成長するにつれて、作品の幅も大人向けのものが自然と増えてきたんだそうです。
例えば、こちらの手形プレート。もともとは主に子どもの誕生記念向けに制作していた作品に、ウェディングの記念バージョンが加わりました。
自身の経験から、今後は大人向けに、「限りある命を懸命に生きた証」を残すメモリアルとしても展開していきたいと考えているんだそうです。
贈りものを選ぶ理由や背景は、一人ひとり違うもの。
使い手の背景に寄り添いながら、その想いを彩る作品を届けていきたい。それが、TsünagaTTeさんが一つひとつの作品に注ぎ続ける、真摯な想いです。
<文=庄司彩>
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