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【"気になる" に寄り道。】麦農家から、帽子づくりへ。150年続く “本物” の麦わら帽子
いま編集部が “気になる” 作品にフォーカスを当て、編集部目線でその魅力をお伝えする「“気になる” に寄り道」シリーズ。読みものをきっかけに、皆さんにもちょっとした “寄り道” を楽しんでいただけるとうれしいです。
今回は、軽やかで涼しい「本物の」麦わら帽子を作り続ける老舗・田中帽子店さんをご紹介します。
手に取ってまず驚くのは、その軽さ。そして、風がふわりと抜けていくような通気性のよさ。麦わらならではの自然素材がもたらす心地よさは、夏の装いにぴったりです。
デザインは、クラシックな定番からちょっとめずらしい個性的な形までさまざま。実用性はもちろん、かぶるだけでコーディネートに上品なアクセントを添えてくれる。そんな魅力は、どこから生まれているのでしょうか。
田中帽子店さんの歴史や、受け継がれる職人の技、そして作品に込められた想いに触れながら、その魅力に寄り道してみましょう。
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帽子店のルーツは、“農家” ?
もともと埼玉県春日部市で、農家を営んでいたという田中帽子店さん。米や麦の生産が盛んなこの地域では、農作業の合間に、乾燥させた麦の茎を細く編んで作る麦わら帽子の材料「麦わら真田」を製造していました。
そうしたルーツを持つ田中帽子店さんが大切にしているのは、「愛着を持っていただけるよう、一つひとつ丁寧に、昔から変わらぬ帽子づくりを続けていく」という揺るぎない信念。
麦わら帽子づくりの工程は、ほとんどが手作業。特徴的なのが、帽子の「つむじ」の部分から麦わら真田を一筆書きのように縫いつなぎ、形を作っていく縫製技法です。簡単そうに見えますが、硬い麦わらを完成品の形をイメージしながら絶妙に縫い繋げていくには熟練の技を要します。
丁寧な仕上げは、被り心地にも大きく影響します。麦のささくれがチクチクしないよう、最後の仕上げは特に慎重に行うという田中帽子店さん。本物の麦わらの良さを十二分に届けるための、使い手への心配りです。
「今」に似合う、昔ながらの帽子づくり
いまや流行の移り変わりが早い時代。そのなかでも、田中帽子店さんが大切にしているのは、その流れにただ乗るのではなく、自分たちのものづくりの軸を持ち続けること。
手作業であるからこそ、麦の色のグラデーションを調整したり、飾りのリボン付けを全体のバランスを見ながら工夫したり。
さりげない工夫で今の感覚に寄り添ったデザインに仕上げながらも、伝統的な製法を守り続けています。時代に合わせて、けれど芯は変えず。そんな姿勢と、機械ではできない細やかなこだわりから、帽子の “新しい表情” を生み出しているのです。
例えば、ロングランで人気の左:Anne(アンヌ)と右:Franka(フランカ)は、麦の太さの違いで価格帯も手に取りやすく調整された作品。麦の太さひとつでも、装いに添えるニュアンスも変わってきます。
常に新しいデザインにも挑戦しています。2025年の新作には、レトロな雰囲気を追求した帽子や、明るい色のリボンを持つ帽子も登場しています。
Berka(ベルカ)は鬼麦と呼ぶ特殊な編み方の麦わら真田を使用。あえて太いリボンで麦の表情を隠すことで、レトロな雰囲気とユニークなデザインを両立させています。
Anika(アニカ)は定番の黒リボンが多いなか、「明るい色のリボンが欲しい」というお客さまの声に応え、白すぎず暗すぎないクリーム色のリボンを採用。幅広い年代の方が日常にすっと溶け込むような、派手すぎないデザインを大切にしています。
数多くの麦わら帽子を生み出してきている田中帽子店さん。開発に特に苦労し、思い入れがある帽子といえばOrel(オレル)の麦わらキャップだそう。カンカン帽やツバの長い帽子、中折れハットが多い中で麦わらキャップは珍しい存在です。
特にツバの長さの調整に苦心。長すぎると野暮ったく見え、短すぎると顔に影が落ちず日除けとして機能しないため、男女ともに似合う「エンジニアキャップ」のような雰囲気を目指し、調整を繰り返したそう。
「この子」と呼びたくなる名前を
そんな多様なデザインにもうひとつ彩りを加えているのが、「名前」。
田中帽子店さんの帽子には、「Sari」や「Orel」、「Anne」といった可愛らしい名前が付けられています。商品番号だけでは味気ない。手に取る人が「この子」と呼びたくなるような、愛着ある存在になってほしいという想いが込められています。
名前を決めるのは悩むことも多い作業。帽子のイメージに合う名前を絞り出すために、社員が今までもらった名刺やネットを参考にしたり、社内で投票を行ったりすることもあるのだそう。
なかには「娘の名前に似ているので」という理由で帽子を選んだというエピソードが。帽子の名前が使い手との特別な「ご縁」を生むこともあるんです。
麦わら帽子を、「もっと自由に楽しんで」
長年帽子を作り続け、日本人の頭の形に合った型を多数保有していることは、田中帽子店さんの大きな財産です。これにより、輸入帽子ではサイズが合わないと感じる人でも、ストレスのない被り心地に。
本物の麦わらで丁寧に作るからこそ生まれる快適な被り心地と、上品な佇まいを兼ね備えた田中帽子店さんの麦わら帽子。
そこには、明治時代から続く田中帽子店さんならではのルーツと、熟練の職人技、そして “本物” への揺るぎない信念が詰まっていました。
「私、帽子が似合わないんです」そんな言葉をよく聞きますが、実際に試着するとよく似合う人が多いと語る田中帽子店さん。先入観を持たずに、気に入った帽子、気になった帽子に気軽にチャレンジしてほしいと願っています。
豊富なデザインのなかから、この夏の装いに似合う麦わら帽子を選んでみませんか。伝統の技で丁寧に仕立てられる麦わら帽子は、この夏の心強い相棒になってくれるはずです。
—— そろそろ寄り道の時間もおしまいのようです。
どうぞ次回もお楽しみに。
<文=増山真帆>