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【“気になる” に寄り道。】何十、何百の試作が導いた、レザーと刺繍のひとつのかたち。
いま編集部が “気になる” 作品にフォーカスを当て、編集部目線でその魅力をお伝えする「“気になる” に寄り道」シリーズ。読みものをきっかけに、皆さんにもちょっとした “寄り道” を楽しんでいただけるとうれしいです。
今回は、色や刺繍のバリエーションが豊富な、filhoさんのレザー作品をご紹介します。
シンプルな佇まいに、ちょこんと添えられた刺繍。好きな色やモチーフで選べる楽しさがあり、ギフトとしても人気の作品です。けれど、そのひとつのデザインが生まれるまでには、何十、何百もの試作が積み重ねられているだそう。
作品が完成に辿り着くまでの、果てしない道のり。その一端を覗きながら、filhoさんのものづくりの魅力に寄り道してみませんか。
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確かな手応えを感じるまで。作って、使って、また作る
手にしたときの使いやすさも、美しい佇まいも。filhoさんのレザー作品は、その裏に隠れた無数の試作から生まれています。「こんなのあったらいいな」から始まり、「形にする → 使う → 改良する → 使う → 思いつく → 形にする...」を幾度となく繰り返す。その積み重ねのなかで納得のいくデザインがぽつり、ぽつりと生まれていきます。
例えば、この「小さな財布」。この形に辿り着くまでに、実に4年、試作は30回にも及んだといいます。
きっかけは、大学時代の友人。「こんなお財布を作れない?」と紙で作ったお財布のサンプルが届いたこと。それが原点です。
そこから、多くの人に使ってもらいながら、声を聞き、自らも試し、少しずつ改良を重ねていきます。試行錯誤のなかで、複数のパーツを一枚革で構成する仕様に辿り着きました。パーツもステッチも減り、デザインはよりシンプルに、美しく。さらに、作るスピードも上がりました。
ほかのアイテムも同じように、自ら使い、また正直に意見をくれる友人に託し、アイデアと実際の使用感の誤差を一つひとつ埋めていきます。
蓋の開け閉めのしやすさ、手にしたときの馴染み方、ポケットや鞄に収まる感覚、テーブルに置いたときの見え方まで。細部にまで工夫を凝らし、何度も調整を重ねていきます。
そうして、自身の思い描いていた理想と、使い手の「使いやすい」「気に入った」という声が重なったとき、ようやく完成を迎えるのです。
小さいからこそ、表現にこだわり抜きたい。研究を重ねた刺繍
そうして生まれたお財布やキーケース、カードケースには、小さな刺繍があしらわれています。この刺繍もまた、ベースの作品と同じくらい時間をかけて生み出されているのだそう。
小さい面積の中で、点と点を糸で結んで表現する刺繍。面を塗りつぶすように刺す刺繍とは異なり、わずかな点の位置や糸の張り具合で印象が大きく変ってしまいます。
ワンポイントとしてさりげない刺繍にするため、細密になり過ぎないよう、色や形をヒントに図案を描きます。
例えばカモの刺繍なら—— 頭の緑、口ばしの黄色、体の茶色とベージュ、お尻の白い羽。その特徴を最小限の要素でまとめ、ミニマルに表現しています。
さらに、完成までになんと何百もの形を試したという、「綿毛」の刺繍。シンプルな形ながら、フワッと風に舞うような軽やかさをひと目で伝えるために、綿毛の本数や長さ、角度に至るまで徹底的に研究を重ねました。
こうしてできあがったワンポイント刺繍は、選ぶ私たちに楽しさをくれ、作品に愛着を添えてくれます。
モチーフも豊富で、「あの人はペンギンが好きだったな」「色は青が好きだな」と贈る相手を思い浮かべながら選べるひとときが生まれます。そんな時間も届けたいと、刺繍のバリエーションは少しずつ増えていきました。
「これだ」と思える瞬間まで。繰り返すものづくり
やさしく丸みを帯びた、シンプルなフォルム。
何度もの試作を経て形づくられた、その小さな面に添えられるワンポイント刺繍。
豊富な色やモチーフから「好き」を選べるfilhoさんの作品は、何十、何百回もの試行錯誤の先に生まれていました。
—— そろそろ寄り道の時間もおしまいのようです。
どうぞ次回もお楽しみに。
<文=庄司彩>