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300年の伝統を、気負わずまとう。浜ちりめんが「洗濯機で洗えるシルク」を生み出すまで【しがのいいもの Vol.1】

by おぎ
2026.07.01
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300年の伝統を、気負わずまとう。浜ちりめんが「洗濯機で洗えるシルク」を生み出すまで【しがのいいもの Vol.1】

地域に深く根差した伝統的工芸品・地場産業が数多く息づく、全国屈指の “ものづくり県” である滋賀。時代に合わせて柔軟に姿を変えてきた個性豊かな手しごとが、今も私たちの暮らしに息づいています。
「しがのいいもの」では、そんな滋賀の伝統的工芸品と地場産品を、6回にわたってお届け。脈々と受け継がれてきた伝統、新たな挑戦—— 滋賀のものづくりの魅力を、再発見してみませんか。

滋賀県長浜市で、およそ300年にわたって受け継がれてきた絹織物「浜ちりめん」。

美しい光沢と、シボの豊かな風合いが特徴の浜ちりめんは、最高級のシルクから作られた生地です。京友禅や加賀友禅の生地として使われ、長く日本の美しい着物文化を支えてきました。そんな伝統ある産地も今、着物離れやライフスタイルの変化を受け、大きな転換期を迎えています。

そのなかで、新たな可能性に挑戦し続けているのが、有限会社𠮷正織物工場。時代の荒波に直面しながらも、伝統の技を絶やすことなく、現代のファッション業界へとその可能性を広げようとする挑戦が始まっています。今回は、代表の𠮷田和生さんにお話を伺いました。

海外の有名ハイブランドや国内の著名なセレクトショップがこぞってその美しさに惚れ込む、浜ちりめんの魅力。そして「シルクは手入れが難しい」という現代の常識を覆すために、13年をかけて開発した世界初の「洗濯機で洗えるシルク」が生まれるまで。

伝統とは、単に古い形をそのまま残すことではない。職人の情熱と、現代のライフスタイルに寄り添うたゆまぬ革新—— そんな浜ちりめんの挑戦をご紹介します。

𠮷田和生さん|有限会社𠮷正織物工場・代表
滋賀県長浜市を拠点に、300年の歴史を持つ伝統的な産業「浜ちりめん」の製造・販売に従事。家業の伝統を受け継ぎながら時代の変化を見据え、10年前から洋服向け生地の開発に着手。

現代の気候に合わせた「夏用ちりめん」の誕生

ーー 300年もの間、浜ちりめんは、その技術が受け継がれてきたのですね。しかし、伝統を守る一方で、現代に合わせたアップデートも行われていると伺いました。

「おっしゃる通りです。伝統というのは、ただ過去の遺産をそのまま守っていれば良いというものではありません。時代やお客様のライフスタイル、もっと言えば現代の気候に合わせて、私たち作り手側も常に進化していかなければ、産地ごと衰退してしまいます」

𠮷田さんは、伝統のちりめんが抱えていた課題についてこう説明します。

「古代ちりめんは、江戸時代に生まれたちりめんです。八丁撚糸という技法で撚りをかけた糸だけを使っているので、濡らすと結構縮みます。今のちりめんは改良されて、濡らしても非常に縮みにくいものになっています」

▲一口に「ちりめん」と言っても、バリエーションはさまざま。撚りから生まれる凹凸が美しく、触り心地もさらりと気持ちいい。

これにより、まずは現代の衣服としても安心して使えるベースが整いました。

さらに、これまでなかった「夏向けのちりめん」の開発にも着手したといいます。今から約28年前、𠮷田さんがまだ若かった頃のことです。

「およそ5年かけて、浜ちりめんにも夏向けの生地を作り出しました。浜ちりめんには夏向けの生地がなかったんです。今はもう温暖化で暑くなりましたから、着物の世界でもこういった夏用のものが求められています」

𠮷田さんが開発した夏用の生地は、着物の世界でも今、有名になっている「さわやかちりめん」。

「これはさらっとした夏用のちりめんです。通気性がよく軽いという特徴があります。触ると、シャリッとした感じです。日本の厳しい猛暑の中でも、シルクの気品を保ちながら驚くほど涼しく過ごせます」

海外ハイブランドも惚れ込む、浜ちりめんの風合い

ーー 着物用の生地から始まった浜ちりめんが、現代の洋服ファッションの世界へと広がっていった経緯について教えてください。

「着物はどうしても今、需要がだんだん少なくなってきています。浜ちりめんは300年の歴史があるんですが、やっぱり使っていただかないと、せっかく生地ができあがっても意味がありません。それで現代の洋服にも使っていただきたいということで、10年前から取り組んでいます」

洋服の型紙に合わせて裁断できる「広幅(ひろはば)」の生地を生産するために、工場へまったく新しい大型の織機を導入した𠮷田さん。その挑戦は思わぬ出会いを生み出します。広幅の生産体制を整えて間もない頃、生地サンプルが偶然海外の超有名ハイブランドのデザイナーの目に留まったのです。

「そのブランドさんには、なんと1000メートルも注文いただきました。ひょんなことで、いろいろなご縁がつながって、その後も、主だったラグジュアリーブランドに使っていただいています」

▲ 海外ブランドに採用されたものと同じ生地で仕立てた「さわやかストール」。

海外のクリエイターたちは、浜ちりめんが持つ「ヨーロッパにはない、日本独自の手法で進化してきた唯一無二の構造や風合い」に激しく揺さぶられたようです。

「この製品を作ったのをきっかけに、国内のブランドさんからも生地の注文をいただけるようになりました。高価なんですが、風合いと質の良さから、国内の著名なセレクトショップなどにも使っていただいています」

13年の試行錯誤が生んだ、世界初「洗濯機で洗えるシルク」

世界中のトップデザイナーたちが惚れ込んだ、浜ちりめんの独特の風合い。でも、𠮷田さんはそれで満足しませんでした。
浜ちりめんが、もっと気軽に、多くの人に愛されるために—— 注目したのは “手入れのしやすさ” でした。

「洋服の世界にシルクがあまり使われない理由は、お手入れが非常に難しいからです。もっと日常的にたくさん使っていただこうと思うと、お手入れ簡単な、洗える生地を作らないといけない。13年かかってようやく、洗濯機で洗える技術を開発しました」

「シルクは家庭で洗えないもの」という常識を覆した瞬間でした。この技術を核に生まれた自社ブランドが「2M, 38S(ふたつきさんじゅうはって)」です。

「浜ちりめんの生地は、作るのに2か月かかります。原料の生糸を入れてから生地になるまでは、38工程。2か月で38ステップを、そのまま『2M, 38S』という名前にしようということで、デザイナーさんが提案してくれました」

HMJでの見どころ

そんな熱い想いと技術が詰まった𠮷正織物工場の浜ちりめんが、この夏に開催される日本最大級のクリエイターの祭典「HandMade In Japan Fes’ 2026(以下、HMJ)」に出展します。当日ブースでは、今最も情熱を注いで展開している「洗濯機で洗えるシルクスカーフ」のほか、海外のラグジュアリーブランドで採用された生地で仕立てた「さわやかストール」などを中心に、たくさんのラインナップで皆さんをお迎えします。

▲ 世界が惚れた生地も、会場で実際に手に取ることができます。

「今現在はスカーフに力を入れています。肌に触れるスカーフだからこそ、洗濯機で洗えるという特徴を伝えていきたいと思っています。
スカーフはどんな色、柄にも染められますので、オリジナルのスカーフを作りたいクリエイターの方にも、ぜひ気軽にブースに立ち寄っていただきたいです」

滋賀県犬上郡豊郷町の染色工房で手捺染で染め上げられたスカーフは、「汚れたら自宅の洗濯機で簡単に洗える」イージーケア性を備え、汗をかきやすい夏の日常づかいにぴったりな一枚です。

当日ブースで特に見てほしい、触ってほしいポイントを𠮷田さんに伺いました。

「多分スカーフというと、皆さん海外の有名ハイブランドを代表するような、つるつると光沢のあるスカーフをイメージされると思います。あれは洋装用のシルク生地で、ツイルやサテンなど、ヨーロッパで多く使われてきた生地です。

ちりめんの技術をベースにしたシルク生地は、奥からにじみ出る上品な光沢があります。こういった光沢の違い、それからちりめんならではのやさしい手触りを、手に取って感じていただきたいです」

▲ 浜ちりめんならではの「シボ」が入った、柔らかな光沢が魅力。

シルクのイメージを覆す、やわらかで肌に吸い付くようにとろんとした心地良い手触り。こればかりは、言葉や写真だけでは伝えきれません。ぜひ会場のブースで直接触れて、その違いを肌で体感してください。

取材を終えて

滋賀県長浜市で300年もの歴史を紡いできた「浜ちりめん」。印象的だったのは、伝統とは決して “変わらないこと” ではない、ということでした。

職人たちが2か月・38工程という時間と手間をかけ、300年磨き上げてきた技術があるからこそ、13年かけて開発した「洗えるシルク」という挑戦も実現できたのだと思います。伝統の上に革新を積み重ねる、そのたゆまぬ情熱に深く胸を打たれました。

海外のハイブランドがひとめぼれした世界基準の美しさを、私たちの日常の中で気兼ねなく、洗濯機で洗いながら楽しめるという、この上ない贅沢。

この夏に開催されるHMJは、そんな日本のものづくりの結晶に直接出会えるまたとない貴重な機会です。ぜひ会場へ足を運び、𠮷田さんが誇る「奥からにじみ出る上品な光沢」と、一度触れたら忘れられなくなる優しくとろんとした手触りを、あなた自身の五感で受け止めてみてください。きっと、シルクへの常識が、鮮やかに覆る瞬間に出会えるはずです。

今回ご紹介した浜ちりめんをはじめとした滋賀の伝統的工芸品・地場産品を、HMJの会場で直接ご覧いただけます。
「しがのいいもの、旅する工芸~Creema 滋賀ものづくり紀行~」Sエリア「滋賀KOUGEI」へ、ぜひお越しください。
ご来場お待ちしております。
 

HandMade In Japan Fes' 2026
日時:2026年7月11日(土)・12日(日)11:00~19:00
場所:東京ビッグサイト西1・2ホール
入場料:※税込。小学生以下、無料。有料託児サービスあり
 前売券:1,300円 (1日券) / 2,000円 (両日券)
 当日券:1,500円 (1日券) / 2,500円 (両日券)
チケットはこちら
公式アカウント:InstagramX
主催:日本最大のハンドメイドマーケットプレイス「Creema(クリーマ)」
後援:J-WAVE、TOKYO FM
公式HP:https://hmj-fes.jp/

<文=オギユカ>

※ 本記事は滋賀県の伝統的工芸品・地場産品に係る販路拡大の取組の一環として、 株式会社クリーマが制作しています

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