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【今、私が会いたい人】「ガラスが好き」だから、もっと上手くなりたい。|吹きガラス作家・Craftripさん

【今、私が会いたい人】「ガラスが好き」だから、もっと上手くなりたい。|吹きガラス作家・Craftripさん

こんにちは。クリーマで法務を担当している柿内です。
普段は契約書や規約と向き合う毎日ですが、この日はオフィスを飛び出し、埼玉県・川越へ。蔵造りの街並みを歩いた先にあるガラス工房を訪ねました。

工房の扉を開けると、中はまるで別世界。外は雨が降り出しひんやりとするなか、炉の火が絶えず灯る工房は、夏の空気をそのまま閉じ込めたような暑さでした。

▲ Craftrip・金子さん。真っ赤に熱せられたガラスを竿の先で静かに回しながら、ほんの数秒のタイミングを見極め、ひとつの作品へと形づくっていく。その真剣なまなざしに、思わず息をのみました。

訪れたのは、吹きガラス作家・Craftripさんの工房です。海が好きな私は、Craftripさんの作品の、水面のような光のゆらめきに思わず目を奪われました。ガラスなのに今にも動き出しそうな不思議な佇まいに自然と心が惹かれたのです。

窓辺に置けば時間や光とともに表情を変え、手に取るたびに、どこか知らない景色に、ふっと連れ出されるような不思議な魅力があります。

その魅力はどのようにして生まれているのか、ガラスとの出会いから制作へのこだわり、そしてこれから思い描く未来まで、じっくりとお話を伺いました。

▲「ガラスは割れてしまわない限り、形や色を変えることなく残っていくもの。だからこそ、責任をもって、“永く大切にしたい” と思っていただける作品を作りたい」と話すCraftrip・金子さん。

一度きりの炎に、ガラスへの「好き」を注いで

工房には、完成した作品だけでなく、試作のガラスも数多く並んでいました。その一つひとつが、新しい表現を探し続けた軌跡なのだそうです。

「私は、最初から図面やデザイン画を細かく描いて作るタイプではないんです。
日常のなかで、『この光きれいだな』とか、『この色の組み合わせ好きだな』とか、そういうものを少しずつ頭の中にためておいて。
ある日、『こうやったら作れるかも』と思ったら、とりあえずやってみます」

猫の耳がちょこんと飛び出した風鈴も、そのひとつ。図面を引くよりも、頭の中にあるイメージをどう吹きガラスで再現するか、その “作り方” に意識を向けているといいます。

けれど、ひらめきをすぐに完成形にできるわけではありません。吹きガラスは、温度やタイミングが数秒違うだけで、まったく別の表情になってしまう一発勝負の世界です。

「失敗することはたくさんありました。でも失敗するなかで、『どの瞬間がいちばんきれいに見えるか』とか、『繰り返し作ることの大切さ』とか、少しずつ学んできました」

▲ Craftripさんの言葉や工房にある試作の数々からは、数えきれない試行錯誤が滲むようです。

「日々、『もっと上手くなりたい』という気持ちがどんどん大きくなっています。
昔作った作品を今見ると、『光の入り方が違うな』とか、『少し歪んでいるな』とか、気になるところが出てきます。1週間前の作品を見てもそう思うことがあるので、きっと今作っている作品も、未来の自分が見たらまた違って見えるんだろうなと思います」

そのCraftripさんを支えているのは、かつて恩師からもらった「ガラスを好きでいることがいちばんだよ」という言葉。
取材のあいだ、Craftripさんの口からは、何度も「好き」という言葉がこぼれていました。

炉の前で生まれる、一瞬の美しさ

今回は特別に、「吹きガラスの風鈴」の制作風景を見学させていただきました。

竿の先に巻き取ったガラスを絶えず回しながら、炉へ入れたり出したりを繰り返すCraftripさん。その動きには無駄がなく、熱せられたガラスは、ほんの数秒ごとに表情を変えていきます。

▲ 回す手を少しでも止めると、柔らかいガラスは重力で形が崩れてしまいます。
▲ 息を吹き込むタイミングや温度のわずかな違いが、仕上がりを大きく左右します。
▲ 工房には、ガラスが竿に当たる澄んだ音だけが響いていました。

目の前で少しずつ形を変えていくガラスを見つめながら、Craftripさんの言葉を思い出していました。

「ガラスは、光や時間によって表情が変わる素材です。
その変化が、日常の中にほんの少し非日常を連れてくる。手に取った瞬間に、知らない景色や時間に出会えたり、感情や記憶がふっと動いたりする。そんな体験をお届けしたいと思ったんです」

竿の先で生まれるこの一瞬の形が、やがて誰かの日常に届き、小さな非日常を届けるのかもしれません。

「好き」であり続けるための、新しい旅へ

── ガラスを続けてきたなかで、やめようと思ったことはありましたか?

「一度もありません。でも、苦しいと思った時期はありました。
学校を卒業して工房でアシスタントをしていた頃は、自分の作品を作る時間がほとんどなくて。毎日ガラスには触れているのに、自分が作りたいものを作れない。その頃は少しだけ、ガラスを嫌いになりそうでした。

それでも、やめたいとは思わなかったんです。周りには本当に技術のある方ばかりで、毎日学ぶことがたくさんありました。
『今は学ぶ時期なんだ』と思って、とにかく目の前のことを一つひとつ吸収しようとしていました」

▲「もっと上手くなりたい」という気持ちは、今も変わらないそう。

インタビューの最後に、「これから挑戦したいこと」を伺うと、思いがけない新たな挑戦について話してくださいました。

「まだ、自分の中で完成形だと思えたことが一度もないんです。だからもっと学びたい。
その一歩として、今年の秋からイタリア・ベネチアのムラーノ島へ行こうと思っています。そこは13世紀から続くガラス工芸の聖地で、ベネチアンガラスが生まれた場所です。

実は、去年ヨーロッパ旅行をした際に立ち寄ったベネチアで、本場のガラス工房を巡りました。そこで目にした装飾技法や表現の豊かさに心を奪われてしまって。
イタリアのガラスは、日本とはまた違った魅力があります。色づかいも装飾も本当に繊細です。
帰ってきたら、自分の作品も少し変わっているんじゃないかなと思います」

ブランド名の “Craftrip” には、「ものづくりを通して、旅を届けたい」という想いが込められているそう。その言葉のように、今度はCraftripさん自身が新たな景色を求めて旅立とうとしています。

この旅で得た経験が、これからどんな作品へとつながっていくのか。次に生まれる作品にも、新たな出会いや景色が映し出されていくのかもしれません。

インタビューを終えて

工房で過ごした数時間を振り返って、私のなかにいちばん強く残っているのは、「好き」という言葉です。

「ガラスが好き」
だからもっと上手くなりたい。もっと学びたい。

インタビューのなかでCraftripさんは、何度もそんな想いを語っていました。
そのまっすぐな気持ちがあるからこそ、作品には飾らない美しさがあり、光を受けるたびにさまざまな表情を見せてくれるのかもしれません。

同じものはふたつと生まれない。だからこそ、一つひとつの作品に、その瞬間だけの表情が宿っているように感じます。

この記事が公開される頃には、Craftripさんはイタリアへの出発を目前に控えています。新しい技術を学び、新たな表現と出会ったその先で、どんな作品が生まれるのでしょうか。

その旅の続きを、私もひとりのファンとして楽しみにしています。
ぜひ皆さんも、Craftripさんの作品を通して、自分だけの “小さな旅” を見つけてみてください。

▲ 工房で出会って購入したガラスリングは、私のお守りのような存在です。
▲ 写真左:クリーマスタッフ・柿内、右:Craftrip・金子さん

<文=Creemaスタッフ>

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