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秋の色はどう生まれる? 草木染めからガラスまで。5人が生み出す秋の色。

秋の色はどう生まれる? 草木染めからガラスまで。5人が生み出す秋の色。

少しずつ朝夕の風が涼しくなり、いよいよ秋が近づいてきました。
皆さんは秋と聞いて、どんな色を思い浮かべますか?

春の色が芽吹くように現れるなら、秋の色はにじむように少しずつ表れてくる気がします。
鮮やかな紅葉の赤や黄色、こっくりとした果実の紫、夕暮れの黄金色。Creemaの作品にも、そんな秋の気配が色づき始めました。

秋の色は、どんなふうに生まれるのだろう。
そんなことを思い、秋の色彩を作り出す5名のクリエイターに、秋の色が生まれる瞬間や、色の表現に対するこだわり、制作の裏側にある試行錯誤を尋ねてみました。

落ち葉を模した染め作品、茜染めのシャツ、山々を映すガラス、夕暮れの七宝焼き、水彩画のようににじむ器。
移りゆく短い秋を一日一日旅するように、それぞれの色彩をめぐります。

目次

1. 落ち葉の美しさをまとった、本革のしおり|KUMAKOUBOUさん
2. 茜と鉄で育てる、小豆色のシャツ|ISTIST -イストイスト-さん
3. 光で色を変える、秋の立山連峰のアクセサリー|hara-glassさん
4. 一瞬の黄金色を閉じ込めた、七宝焼きのピアス|mio min mioさん
5. 紫苑色ががにじみ合う、秋を彩るうつわ|Enkelさん
6. 豊かな秋の色を、暮らしのなかに

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1. 落ち葉の美しさをまとった、本革のしおり|KUMAKOUBOUさん

積もる落ち葉の中から拾い上げる、ひときわ色鮮やかな一枚の葉。

「その美しさを、自分でも表現してみたい」。そんな思いから生まれたのが、KUMAKOUBOUさんの本革のしおりです。黄緑から黄色、そして鮮やかな紅色へ。まるで本物の葉のように、いくつもの色彩がゆるやかに移ろいます。

「落ち葉のグラデーションは鮮やかですが、派手にならず、やわらかな印象になるよう染めています。葉っぱの破れや穴がある部分も自然に見えるよう、細かな色の変化を意識しています」

目に映った秋の色を、そのまま染料でつくれるとは限りません。
KUMAKOUBOUさんが使う染料には白がなく、色によってはうまく調色できないことも。

「再現できる色には限りがあるので、もどかしいときもあります。それでも、自分が納得できる色になるよう心がけています」

限られた色から、どうすれば自然な葉の表情をつくれるのか。その試行錯誤のなかで大切にしているのは、目にはっきり見える色だけでなく、無意識のうちに感じ取る “印象のための色” なのだといいます。
その積み重ねがあるからこそ、小さな一枚の葉にも、本物の自然が持つ気配が宿っていくのかもしれません。

夏の爽やかな黄緑から、秋色へとゆるやかに移ろうこのグラデーションは、拾い上げたあの一枚の葉が見せてくれた、ほんの一瞬の輝きを閉じ込めたもの。
手のひらにのる小さな革の上に、秋の色彩がそっと息づいています。

2. 茜と鉄で育てる、小豆色のシャツ|ISTIST -イストイスト-さん

赤やピンクを思わせる茜(あかね)に、鉄を掛け合わせることで生まれる、深みのある小豆色。日本で古くから使われてきたこの染料に、あらためて光を当てたのが、生地選びから縫製、染色まで一貫して手がけるISTIST -イストイスト-さんです。

もともとこのシャツは、「自分たちが普段から着たいもの」を求めて生まれたのだそう。着心地にこだわって仕立てたそのシャツに、秋に合わせて選んだのが小豆色でした。

「茜染めというと、鮮やかでやわらかなピンクをイメージする方が多いと思います。そんななかで、秋にも着やすいよう鉄でくすませた小豆色を選びました。性別を問わず、肌なじみがよく、ほかの服とも合わせやすい色合いにこだわっています」

植物から生まれる色は、いつも同じではありません。植物染料ゆえに染め上がりの濃淡や風合いは少しずつ変化し、日光の下と室内、見る人によっても表情が違って見えるのだそう。

「ひとつの植物がもつ、いくつもの色素が重なり合うからこそ生まれる、複雑な色を目指しています」

そのための染色には、最短でも3日間かかります。
草木染めならではの煮出し染めで、熱湯のなかでじっくり染める上げることで、できるだけ深みのある色に仕上げているそう。生地そのものも、柔らかくくたっとした風合いに変化していきます。

茜と鉄、植物が持ついくつもの色素、そして時間。さまざまなものが重なって生まれる、ひとことで言い表せない小豆色。
色を見て感動できるような—— そんな複雑な色を、ISTIST -イストイスト-さんは目指し続けています。

3. 光で色を変える、秋の立山連峰のアクセサリー|hara-glassさん

澄んだ光を受けて、きらりと表情を変えるガラス。hara-glassさんの「ガラスの立山連峰」は、富山の山々を思わせる三角形のフォルムから生まれました。

いくつものガラスパーツを組み合わせながら試行錯誤するなかで、立体的な三角形にすると光が屈折し、ガラスのきらめきがより際立つことに気づいたのだそう。
富山出身で、登山が好きなhara-glassさん。よく訪れる立山の姿と作品のフォルムが重なったことから、「ガラスの立山連峰」と名付けられました。

「四季折々に表情を変える立山連峰を身近に見ているからこそ、愛着もひとしおです」

なかでも秋の色をつくるときに大切にしたのは、一色ずつの美しさではなく、色と色の組み合わせ。色を単体で考えるのではなく、組み合わさったときにどんな表情になるかを大切にしながら、少し意外に感じる配色にも挑戦しているといいます。フォルムがダイナミックな「ガラスの立山連峰 秋」では、色のトーンを落ち着かせてバランスをとっているそうです。

▲ 見る角度でガラスの重なり方が変わり、異なる印象の色合いに。

そうして選んだ色に、さらに表情を加えるのが、ガラスを通る光と、窯の中で起こる変化です。

「ガラスには透明、不透明などたくさんの色があり、厚みや光の入り方によっても見え方が変わります。同じ配色や形で制作しても、窯の中では偶然の溶け方や揺らぎが生まれる。完全にはコントロールできない部分も含めて、ガラスの魅力だと思っています」

▲ 落ち着いたブルーとブラウンに、ダイクロガラスのきらめきがポイント。

身につけたときの色にも、hara-glassさんならではの視点があります。作品単体としての美しさだけでなく、実際に肌や服になじみながら、顔まわりではっと目を引くような色になることも意識しているといいます。

▲ こちらはくすみグリーンとブラウンの組み合わせがやさしいニュアンス。

深みのある秋色に、ガラスならではのみずみずしい透明感。光を受けるたび、耳元や胸元できらりと表情を変えるその色は、窯の中で生まれる偶然と、hara-glassさんの手によるコントロールが、静かに溶け合った結果なのかもしれません。

4. 一瞬の黄金色を閉じ込めた、七宝焼きのピアス|mio min mioさん

日没が早くなり、ふと見上げた空の色に足を止める。
そんな秋の夕暮れの一瞬を映したのが、mio min mioさんの七宝焼きです。

『秋の暮』をテーマに制作されたこの作品。秋が深まるにつれて薄明の時間が短くなっていくなかで、青空から黄金色へと移り変わる、その一瞬の美しさを七宝焼きで表現しました。

「こだわったのは、透明感と黄金色のグラデーションです。秋の澄んだ空気を表すために、下地の銅板に透明釉薬を重ねました。そして、黄金色に染まりきらめく空の様子は、純銀箔の上に黄金色と明るいブラウンの透明釉薬を重ねることで表現しています」

七宝焼きは、釉薬の種類によって、温度や炉に入れる時間、重ね方で色味が微妙に変わります。思い描いた色を出すために試作を重ねても、なかなか理想にたどり着けないことも。

「イメージ通りの色が出た瞬間や、想像を超える美しい色が生まれたときの喜びはひとしおです。その “色との対話” が、七宝焼きの魅力だと感じています」

mio min mioさんが作品に映すのは、夕暮れだけではありません。季節とともに表情を変える自然から色を見つけ、七宝焼きならではの艶のある輝きと鮮やかな彩りで、アクセサリーに落とし込んでいます。

▲ こちらは、秋の味覚「さつまいも」がモチーフ。
▲ 9月の澄んだ空気に映える月をイメージしたピアス。

艶やかな輝きと、重なり合う色のグラデーション。七宝焼きに閉じ込められたその一瞬の色は、窯の炎との “色との対話” を重ねた先に生まれた、ひとつの景色なのかもしれません。

5. 紫苑色ががにじみ合う、秋を彩るうつわ|Enkelさん

一日の終わり、あたたかな明かりが灯る食卓。そこに秋の色を添えてくれるのが、Enkelさんの「紫苑光(しおんこう)」です。
モチーフになったのは、秋に咲く紫苑(しおん)の花。さらに、実はこの紫にはもうひとつ、Enkelさん自身の記憶も重なっています。

「幼い頃に宝物にしていたビー玉も紫色で、私にとって大切な色でもあるんです。『紫苑光』という名前には、紫苑の花のような色と、その向こうから差し込むやわらかな光、というイメージを込めています」

器の上に広がるのは、ひと言では「紫」と言い切れない色。青紫のなかにピンクや緑がにじみ、水彩画のようなグラデーションを描いています。
一色の紫を塗るのではなく、複数の色の釉薬を重ねて生まれる発色だそう。重ねすぎれば濁り、薄すぎれば印象が弱くなるなかで、釉薬の濃さや重ねる順番、筆の動かし方を少しずつ調整しながら、奥行きのある色を探っていきます。

最後に色を仕上げるのは窯の中の火。窯のどこに置くか、どのように火が流れるかによって発色が変わり、同じように作っても一枚ずつ違った表情が現れます。

「思い描いた通りにならないこともありますが、窯を開けたとき、想像していなかった美しい色の重なりに出会えることがあります。その偶然性も陶芸ならではの魅力で、制作を続ける喜びになっています」

紫苑の花や幼い頃の記憶から始まり、いくつもの釉薬と火を経て生まれる「紫苑光」の色。秋の果物や焼き菓子はもちろん、いつものおかずを盛りつければ、料理の色と重なってまた新しい表情を見せてくれます。

「意識しているのは、料理を盛りつけたときに、器の色と料理の色が引き立て合うことです。作品だけで完結する色ではなく、食卓に置かれ、日々使われることで生きる色を目指しています」

何をのせようかと考える時間まで、秋の食卓が少し楽しみになるうつわです。

豊かな秋の色を、暮らしのなかに

秋の色は、どんなふうに生まれるのだろう。
5人の作り手に尋ねてみると、その過程は、まるで季節が少しずつ移ろっていくように、少しずつ生まれていくものでした。

こだわりと偶然を行き来しながらできた秋の色たちはどれも、私たちの日常にそっと溶け込みながら、豊かな時の流れを感じさせてくれます。

暮らしのなかに、お気に入りの秋の色をひとつ。 いつもの毎日に、そんな心地良い彩りを迎え入れてみませんか。

<文=庄司彩>

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