BLOG
【今、私が会いたい人】どこにもない“自分だけ”の服作り|ファッションデザイナー・MOTOHIRO AOKIさん

こんにちは。クリーマ編集部の緑川です。
クリーマスタッフの「今、私が会いたい人」。今回ご紹介するのは、デザインからパターンメイキング、縫製にいたるまで、服制作の全行程をご自身で行われているファッションデザイナー MOTOHIRO AOKIさん。
作品を初めて見たときから、洋服ながら、どこか日本らしい“和”の雰囲気を感じさせる独創的なデザインが忘れられず、「いつかお話を伺ってみたい…!」と思っていました。
今回は、実際に服作りをされている自宅兼工房にお邪魔し、服作りに至った経緯や込められたこだわり、想いを伺ってきました。MOTOHIRO AOKIさんの服作りへの思い、ぜひ最後までご覧ください。
ものづくりとファッションへの想いから服作りの道へ

ー 「ものづくり」を始められたのは、いつ頃からですか?
子供の頃から授業の工作や美術が好きでした。牛乳パックなどを使って、何かを作ったりしていましたね。周りから褒められることが多かったので、”ものづくり”というのは、昔から好きでした。

ー 数あるカテゴリのなかで「服」を選んだのはなぜでしょうか?
中学・高校くらいの時にファッションに色気付いたというか…目覚めて(笑)もちろん、その時は作っていないのですが、徐々に服に対して興味を持ちはじめ、進路を決める際に、根底にあった「ものづくりが好き」と「服やファッションが好き」という想いが合致して、洋服を作る仕事をしてみたいと思うようになりました。
なので、服作りという部分に関しては、専門学校に進学してからになります。実は、音楽など、服作りではない方向に熱が違う方向へ向いた時期もあったんですが、最終的には「やっぱり服を作りたいな」というところに戻ってきました。

"どこにもないもの"をつくりたい
ー いつ頃から、現在のような活動を始められたのですか?
だいたい7、8年前からですかね。それまでも、様々なところで仕事をしてきたのですが「よし、洋服関係でやっていこう」って考えたタイミングで一度メーカーに就職しました。
そのときは、洋服ではなく、帽子やバッグ、アクセサリーなどの小物関係を製造・卸しなどをしているような会社でしたが、営業や商品デザイン、開発、買付などを経験しました。
ー なるほど。一度、メーカーに就職されたのですね。
はい。その後は、5、6年ほどWEB上でセレクトショップをやっていました。セレクトショップと服作りを並行して行っていましたが、少しずつウエイトが服作りに移っていき、今のように服作りのみスタイルになっていきました。

ー 服を「売る」側から「作る」側になった転機はありますか?
洋服って、それ単体で完成するものではなく、人が着ることで、完成すると考えているんです。
売る側だったセレクトショップの時は、シャツだったり、ズボンや帽子はこういうものがあって…と、ありものを自分の中で「編集」して、表現していく部分に面白さを感じていました。そこで、オリジナリティを出している素敵なショップも多かったんですよね。
武州藍染 クレイジーパネル パッチワーク ウッドボタン シャツ
ですが、オリジナリティを突き詰めていくうちに、やっぱり”どこにもないもの”っていうのを考えるようになったんです。
今は、インターネットがあって、世界中にあるものを、いつでも、どこでも、だれでも買えますよね。その中で自分の個性を出していくことに少しずつ限界を感じるようになってきて…
結局、オリジナリティを追求していくと「自分で作った方がいいのでは?」と思うようになり、服作りを始めました。
常に"より良く"を求めて。オールハンドメイドへのこだわり

ー 服のデザインからパターンメイキング、縫製に至るまで、全てご自身の手で行なっていると伺い、大変驚きました。服作りで大切にしている部分を教えてください。
"洋服屋"を名乗るのであれば、自分の手で作るのが普通だと思っています。
やはり、自らの手でパターンを書いたり、生地を縫ったりしていると「ここのステッチはもっと細かくした方がいいな」とか「縫い代を5mmから7mmにした方がいいな」など、より良くするための発見があります。
もちろん、デザインだけして、工場に発注したり、パタンナーに任せてしまうことも可能ですが、どうしても気づけない部分が出てくるんです。

あとは、作る以上、最後まで責任を持ちたいと思っています。
他の人に任せてしまうと、なんとなく自分が“100%作ってる”とは言えないので…。街で着ている人を見かけたり、何かで紹介されたときに素直に喜べないというか。妥協せず、自分の中で納得できるものだけをお客様に届けたいと考えています。
藍染、剣道着、袴…日本の伝統を活かして

ー 青木さんの作品は、「藍染」を用いた作品が多いですね。
もともとは、様々な素材を使って、古着のリメイクなどをしていました。服作りに自分の“色”を出していくことを考えたとき、お祭りの衣装で藍染の半纏を着たりしていて、藍染の生地が昔から好きだったというのもあり、「日本古来の生地を使って、カッコいいものを作れないかな?」という思いがあったんです。
ただ、そういった素材を洋服に落とし込んだときに自分が“いいな”と思えるものに出会うことがほとんどありませんでした。それで、自分と同じような感覚を持っている方に向けて何かできたら…と考えた結果、藍染を用いるようになりました。
ヴィンテージ 藍染 袴 リメイク パッチワーク テーラードジャケット
ー「藍染」の良さってどんなところでしょうか?
日本古来で歴史のあるということはもちろんですが、やはり独特の「色」ですね。これは、まだまだ勉強中ではあるのですが、スラブ生地や、この前は藍染のオックスフォード生地を作ってみたり。染める職人さんや使う生地によっても、色や風合いが変化していくあたりが面白いですね。

ー 藍染の他に「剣道着」を用いた作品も印象的です。
もともとは、古着のリメイクをやっている中で、始めたものなのですが、純粋に剣道着をリメイクした服って、珍しいかなと思って作っています。
もともと自分が剣道をやっていたというのもあるんですけど。生地が厚いので、多少無骨になってしまいがちなんですが、その分シルエットや着心地にはこだわっています。

何気ない"日常"を取り入れる
ー パッチワークなど独創的なデザインが目を引きますが、どのような時にアイディアを思いつきますか?
意外と身近な部分だったりするんですけど、例えば、外歩いていて何か幾何学的な模様を見つけたりすると、これを服に活かすどうなるのかな?と考えたりします。三角形のパッチワークは、飲み物の缶の模様から取り入れました。
あとは、絵を描いている友人も多いので、そうした部分も影響しているかもしれません。「モンドリアン」という有名なパターンがあるんですけど、これを藍染だけでやってみると、どうなるかな?とか、洋服とは関係ない部分から持ってくると、面白くなるのでは?と、いつも考えています。
【受注生産】藍染 剣道着 リメイク パッチワーク MA-1 Jacket Japanese Indigo Kendo J
レディースやインテリアにも挑戦していきたい
ー 今後、考えていることはありますか?
服に関していうと、今は、メンズが中心なんですが、ワンピースとかコートなど、レディースの作品も作りたいなと思っています。また、ラグマットやクッションカバー、ポーチなど、インテリアや小物を中心に服以外のカテゴリも今後製作して行こうと考えています。

【受注生産】藍染 袴リメイク パネル クラッチ バッグ JP Indigo Hakama Remake Bag2
ー 青木さんの服は、どんな風に着て欲しいですか?
私自身も、気合の入ったものをみると、創作意欲が湧いてくることがあるので、「着るとテンションが上がる」ものであったり、そうでなくとも「なんだか着心地がいいな」など、着ることによってポジティブになれる存在であれたら嬉しいなと思っています。

服は着ることで完成する
全ての工程を自らの手で行うMOTOHIRO AOKIさんの服作り。その背景には、セレクトショップ時代の「どこにもないものを」というオリジナリティを追求する想いがありました。
インタビューの中で語られていた「服は着ることで完成する」という言葉の通り、着る人のことを考え、表からは決して見えない部分までミリ単位でこだわる姿勢がとても印象的でした。
今回のインタビューを通じて、少しでもその”こだわり”がみなさんに伝われば嬉しいです。MOTOHIRO AOKIさんの作品が気になった方は、ぜひギャラリーをチェックしてみて下さいね。