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【今、私が会いたい人】こだわりの眼鏡をオーダーメイド感覚で。|眼鏡職人・眼鏡ノ奥山さん
こんにちは。クリーマの奥野です。
眼鏡をかけて30年。もはや生活をしていくなかで、なくてはならない道具でありながら、顔の印象の決め手となるファッションアイテムでもあります。良き友だからこそ、その眼鏡選びには毎回いろいろと頭を悩ませてきました。
先日、ようやく自分の納得がいく眼鏡に出会えました。それが「眼鏡ノ奥山」 さんの眼鏡です。
今回は、眼鏡ノ奥山さんにインタビューする機会をいただき、工房におじゃましてきました。工房があるは、のどかな下町の西葛西。地元で長年「奥山メガネ」として親しまれている老舗の眼鏡店でした。
眼鏡は試して買うものと思っている方も多いと思うのですが、ネットで眼鏡の販売を始めたきっかけを教えていただけますか?
私で4代目になるのですが、自分の祖父にあたる2代目の頃から「作るだけじゃダメだ」というのは常日頃思っていたようです。近所にチラシを配りにいったり、広告宣伝活動というものを絶えずやっていたそうです。
近所の方々は、うちが眼鏡を作っているというのはもちろんご存じの方が多いのですが、ちょっと離れると日本国内はもちろん、同じ東京都内、区内でも知らない方が殆どです。
インターネットを使えば、日本中のもっと多くの人々に発信できる、奥山眼鏡を知ってもらえる、と考えました。そんな時に「Creema」のことを知り、販売を始めました。
ネット販売だとお会いしてサイズ合わせができないので、難しいことが沢山あるのは予想していました。そこで、「今かけているメガネがあれば、ここの寸法を教えてください」と細かく確認するようにしたり、試行錯誤を繰り返しました。
Creemaでは購入前にお客様とメッセージのやりとりが出来るので、その点は非常にありがたいです。毎日身につけるものだからこそ、丁寧なやりとりで安心・信頼していただけます。こちらとしても、ずっと使えるお客様に合った眼鏡をご提供したいので。
今では沖縄から北海道まで、全国の方々に奥山眼鏡を使っていただけて、本当に嬉しいです。
一つひとつ手作業で仕上げています
実際に眼鏡を作っているところを見学させていただけますか?
もちろん。ぜひご覧になってください。
デザインの要望とお客様の鼻や耳の位置にサイズを調整して1件毎に設計データをコンピューターで作成し、フレームの基となるセルロイドプレートを連動したフライス盤により精密に切り出します。自動化できるのはここまで、あとは全て手作業です。
切り出されたセルドイドプレートを、パーツごとに糸鋸で丁寧に切り離していきます。眼鏡ノ奥山の眼鏡は全てがこの工房での手作りです。
ヤスリを使いバリ(素材の残材部分)や角を取っていきます。力が必要ながらも繊細な工程です。
粗目のグラインダー(砥石を使って研削を行う工具)でフレームの曲面を作っていきます。かなり眼鏡らしくなってきました。
細い目のグラインダーで表面のツヤが出るように磨き上げていきます。マット加工の場合はツヤを出した上でツヤを消す、という工程が加わります。
これで大体、完成です。
作業時間はかかるけれど、長く使う事を考えたら素材は「セルロイド」
セルロイドのフレームは珍しいですね
うちは代々セルロイドを使っているのですが、それにはこだわりがあります。
セルドイドは植物由来の合成樹脂で、クスノキの芯の部分とニトロセルロースを溶かしたものがベースになります。これはとにかく、仕上がりが綺麗なんです。磨き上げた時の光沢感、半透明の色合い、マーブル模様の美しさが特徴です。
今は「アセテート」という素材がフレームの主流になっていますが、セルロイドに比べて強度が弱い。だから眼鏡のフレームとして利用する場合は、金属の芯を入れないといけないんです。その素材だけでは柔らかいので、必ず補強が必要になる。でも、この金属のプレートが入ってると美しくないんですよね。
一方、合成樹脂は「磨き上げると美しく、金属の芯がなくても眼鏡として機能する」というメリットがあります。
価格的に高いものですし、固くて弾力がある分セルドイドの方がずっと手間が掛かるんです。アセテートは磨く時間はあっという間に終わってしまうけど、使用していると傷がつきやすい。
硬い分、作業時間はかかるのですが、出来上がったものは傷がつきにくい。お渡しした後の事を考えてセルロイド素材にこだわっています。
どんな時代にも合う眼鏡を作りたい
私自身、個性があるけど主張しすぎない「眼鏡ノ奥山」さんのデザインが気に入っています
ありがとうございます!眼鏡は高額なものですし日常的に使うものです。様々なシーンに対応できて、どんな時にも違和感が無いデザインを目指しています。そんな眼鏡こそが、長く大切に使ってもらえるんじゃないかと思っています。
おしゃれなファッションアイテムとして、奇抜なデザインもあってもいいと思うのですが、そのシーズンが終わって翌年使えなくなる眼鏡は作りたくないんです。いつ見ても「また掛けよう」と思ってもらえるような、どんな時代にも合う眼鏡作りを心がけています。
お客様の要望や、お顔の形に合せるために、縦横の比率を変えることもあります。そんな時、奇抜なデザインは雰囲気がガラッと変わってしまうんです。
そんな背景もあり、うちでは縦横を伸ばしたときにも雰囲気が崩れないデザインを設計上のルールにしています。
インターネットでオーダーメイド感覚の眼鏡を
気に入った眼鏡に仕立てて頂くためのポイントはありますか?
せっかくCreemaではネット上でコミュニケーションが取れるので、できるだけお客様とやりとりしたいですね。それが一番「お気に入りの眼鏡作り」の近道だと思います。
時には、今かけてるものを送って頂くこともあります。どんなフレームも、長年かけ続けてるとその方のお顔の形に馴染んでくるんです。実物を送っていただかなくても、耳の先の寸法と鼻の距離の寸法を頂けると、だいたいその方のお顔の形がわかります。
お顔の写真と寸法を頂けたら、細かいアドバイスやご提案もできるので、できるだけお顔に馴染むぴったりの眼鏡をご購入いただきたいです。直接お会いしなくても事前にやりとりができれば、オーダーメイドのような眼鏡をお届けできます。
個性を引き立てるアイテムになれたら嬉しい
眼鏡って掛けている内側からは見るためものですが、外側からは見られるものでもありますね
本当にそうですね。どこでどんな眼鏡を選んだとしても、そこには何かしらの自身の意図があって選択しているはずです。金額に関わらず、選ぶことそのものが「自分にはこんなデザインが似合うんじゃないか」「普段こういう服の色が多いから、この色の方がいいんじゃないか」。無意識に何かしらの選定基準があった上で判断されてると思うんですよ。
ということは、きっと「どう見せたい」「どう見られたい」というイメージがあるはずです。
お客様によくお伝えするのですが「毎日身につけるものだからこそ、自己主張のアイテムとして使って欲しい」。そう思っています。眼鏡をかけた方の個性をより一層引き立てられる存在になれたら、嬉しいですね。
最後に
今回、奥山さんにお話しを伺って「毎日身につけるものだからこそ、良い物を」と改めて思いました。
セルロイド素材へのこだわりや、時代に流されないデザイン、手作業で仕上げる工程一つひとつに意味があり、それが奥山さんならではの眼鏡を作り出していらっしゃいました。
みなさんも、ぜひ自分の個性を眼鏡で演出してみるという発想で、自分だけのこだわりの眼鏡を見つけてください。