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波佐見に益子に有田焼。その違いって?知るほど面白い、日本の焼き物12種類まとめ

波佐見に益子に有田焼。その違いって?知るほど面白い、日本の焼き物12種類まとめ

私たちの毎日の生活に欠かせない「うつわ」。
長崎の波佐見焼や石川の九谷焼、栃木の益子焼など、古くからつくられてきた日本の焼き物は今もなお、私たちにとって身近な存在です。その道具としての美しさは日本だけでなく、世界でも認められているほど。

 

ところでそんな和食器ですが、それぞれどんな特徴や違いがあって、産地がどこか、知っていますか?
たとえば、みなさんご存知の牛丼屋さん「吉野家」では創業当時から現在も、実は佐賀で焼かれた有田焼の丼が使われているんです。もしかすると、知らず知らずのうちに自分の家でも日本の焼き物を使っていた! なんてこともあるかもしれません。

 

今回は、Creemaでも人気の代表的な和食器・日本の焼き物の産地と特徴を12種類、ご紹介します。また、最後に陶器と磁器の違いについても解説します。つくられている産地の背景や特徴を知っていれば、焼き物を見る目が変わって、これからの和食器選びがますます楽しくなるはずです。

目次

● 日本の有名な焼き物12種類

● 焼き物は大きく分けて4種類。陶器と磁器の違い。

● 焼き物の代表・日本六古窯とは? 種類は?

1)波佐見焼(はさみやき) 【九州地方/長崎県】

2)九谷焼(くたにやき) 【北陸地方/石川県】

3)有田焼(ありたやき) 【九州地方/佐賀】

4)益子焼(ましこやき) 【関東地方/栃木】

5)備前焼(びぜんやき) 【中国地方/岡山】

6)美濃焼(みのやき) 【中部地方/岐阜】

7)萩焼(はぎやき) 【中国地方/山口】

8)やちむん  【九州地方/沖縄】

9)瀬戸焼(せとやき) 【中部地方/愛知】

10)萬古焼(ばんこやき) 【中部地方/三重】

11)丹波焼/丹波立杭焼(たんばやき/たんばたちくいやき) 【近畿地方/兵庫】

12)小石原焼(こいしわらやき) 【九州地方/福岡】

● 日本の焼き物のルーツを知って、食器選びの楽しさを広げませんか?

日本の有名な焼き物12種類

日本で人気の有名な焼き物は、波佐見焼(はさみやき)、九谷焼(くたにやき)、有田焼(ありたやき)、益子焼(ましこやき)、備前焼(びぜんやき)、美濃焼(みのやき)、萩焼(はぎやき)、やちむん 、瀬戸焼(せとやき)、萬古焼(ばんこやき)、丹波焼/丹波立杭焼(たんばやき/たんばたちくいやき)、小石原焼(こいしわらやき)、以上の12種類。

それぞれの産地や発祥、特徴についてご紹介していきます。

焼き物は大きく分けて4種類。陶器と磁器の違い。

▲ こちらは上部分は磁器土で、下半分は陶器土でつくられた片口。陶芸家・また壱陶房さんの作品です。

はじめに焼き物の "基本のき" 、陶器、磁器の違いについてお伝えします。土を練り固めて焼いた焼き物、その種類は大きく4種類(陶器、磁器、炻器、土器)に分けられます。

なかでもよく耳にするのが「陶器」と「磁器」ではないでしょうか。

 

陶器と磁器の違いは、原料の土の成分や、焼き方の違い、そして焼き上がりにあります。

陶器は、地中の粘土層から掘り出された粘土が用いられ、土っぽい質感です。磁器はガラス質を含む石を砕いたものが用いられており、ツルッとした質感のものが多いという違いがあります。

陶器とは

・原料:地中の粘土層から掘り出された粘土が用いられる
・焼き方:1000〜1300℃で焼く
・素地:茶色やグレーなど土の色がある
・特徴:水分を吸うため釉薬をかけることが多い
・見分け方:たたくと鈍い音がする
 例)益子焼、萩焼、やちむんなど

 

磁器とは

・原料:長石や珪石など、ガラス質を含む石を砕いたものが用いられる
・焼き方:1300〜1400℃で焼く
・素地:白、透かすと少し透明、透明な釉薬をかけることが多い
・特徴:半ガラス質で水分を吸わない
・見分け方:たたくと金属製の高い音がする
 例)波佐見焼、九谷焼、有田焼など

 

炻器(陶器と磁器の中間的な性質を持つ焼き物)とは

・原料:鉄分の多い粘土を用いたり、岩塩で施釉したりするものなどがある
・焼き方:1100~1250℃で焼く
・素地:非透明である点で磁器と区別される
・特徴:水分を吸わないため陶器と区別される
 例)備前焼、萬古焼、信楽焼など

焼き物の代表・日本六古窯とは? 種類は?

日本六古窯の種類は、瀬戸焼、備前焼、常滑焼(とこなめやき)、信楽焼(しがらきやき)、丹波立杭焼(たんばたちくいやき)、越前焼の6つ。
日本六古窯とは、中世から現在まで生産が続き、1000年の歴史を持つ代表的な6つの窯の総称で、磁器などは中国から朝鮮から渡ってきたものですが、日本六古窯の焼き物は生粋の「日本生まれ」です。

1)波佐見焼(はさみやき) 【九州地方/長崎県】

Creemaでみつけた、波佐見焼の食器

▲ 【波佐見焼 マグカップ】マリーゴールド マグカップ オーシャンブルー
▲ アセミコ 波佐見焼カップ  大 緑 (Mint)
▲ 【波佐見焼】 和山 菊型 小皿 

近年テレビや雑誌などのメディアでよく取り上げられるようになった波佐見焼、よく名前を聞く方も多いのではないでしょうか?

 

波佐見焼は長崎県・東彼杵郡波佐見町でつくられています。現在は磁器として知られていますが、初め1580年頃に波佐見で焼かれていたのは陶器だったそうです。その後、磁器をつくる技術がまだなかった日本に朝鮮から磁器をつくる技術が伝わり、良質の原料が発見された波佐見でも本格的に磁器の生産が始まります。
また、中国の内乱の影響で中国から焼き物の輸出が減ったことで、波佐見の焼き物は海外へも輸出されるようになり、職人が分業しながらつくる大量生産体制に特化していきます。

 

波佐見焼の従来の見た目の特徴は、透けるような白磁の美しさと、青藍(せいらん)色の呉須(ごす)という顔料で絵付けされた「染付」にありますが、最近では "手づくりなのにたくさんつくれる" という生産体制の特徴を生かしてつくられたモダンなデザインの食器も増えてきました。

 

デザインが多様になり、従来の特徴にはないようなモダンなデザインの波佐見焼もたくさん出てきましたが、庶民の日用品として気軽に買えて使える、といった "親しみやすさ" は今もなお引き継がれています。

波佐見焼(はさみやき)

・産地:長崎県・東彼杵郡波佐見町
・種類:磁器
・特徴:職人の分業による大量生産制・白磁を生かしたモダンなデザイン

2)九谷焼(くたにやき) 【北陸地方/石川県】

Creemaでみつけた、九谷焼の食器

▲ kokuzougamaさんの作品
▲ いっぷく碗 釉彩椿

色とりどりの絵付けが目を引く、九谷焼。見ているだけで時間を忘れてしまいそうな芸術性は、贈答品としても求められ、国内外でファンが多い焼き物です。

 

石川県南部の金沢市、小松市、加賀市、能美市で生産される九谷焼は、明治初期に九谷村(現在の石川県加賀市)の藩士・後藤才次郎が有田から焼き物の技術を持ち帰ったあと、1655年頃に初めて焼成されたといわれています。

九谷の窯は一度廃窯となってしまいますが、その約80年後に金沢で九谷の再現が試みられ、この後石川県南部の各地で窯ができたことで、さまざまな美しい画風が誕生します。
1873年のウィーン万博をきっかけに、九谷焼は主要な輸出品となり、「ジャパンクタニ」として世界にも広まっていきました。

 

九谷焼の最大の特徴は、何といっても「九谷五彩」とよばれる、赤・黄・緑・紫・紺青の5色の絵の具を厚く盛り上げて塗る鮮やかな彩法です。

現代ではその多色づかいを生かした可愛らしいデザインやモダンなデザインも増え、より種類豊富で個性も豊かな九谷焼を楽しむことができます。

九谷焼(くたにやき)

・産地:石川県・金沢市、小松市、加賀市、能美市
・種類:磁器
・特徴:黒の輪郭線を用い、赤、黄、緑、紫、紺青などの呉須を使って彩色した鮮やかな絵付け

3)有田焼(ありたやき) 【九州地方/佐賀】

Creemaでみつけた、有田焼の食器・作品

▲ 銀彩染付フリーカップ 【福珠窯(有田焼窯元)】
▲ The UTSUWA | モダンデザインの有田焼抹茶碗

先にも述べた通り、日本には17世紀初頭まで磁器を焼く技術がありませんでした。
朝鮮からやってきた朝鮮人陶工らによって磁器を焼く技術が受け継がれたのですが、そのとき磁器の原料となる白磁鉱が発見され、日本で初めて磁器が焼かれた場所が、有田焼の産地・佐賀県有田町でした。

 

当初有田焼では、当時日本に輸入されていた中国の磁器の作風に影響を受けた、白地に藍色1色で図柄を描いた「染付磁器」を中心につくっていましたが、その後1640年代に中国人陶工によって技術革新が行われ、赤を基調とした「赤絵(色絵磁器)」が生み出され、より華やかな様式が加わります。

 

白い素地に描かれた赤・黄・緑・青など、より豊富な色を使った美しい絵柄を持ち、耐久性に優れた有田焼は、現在も日用品として、そして美術品としても、愛用されています。

有田焼(ありたやき)

・産地:佐賀県・有田町
・種類:磁器
・特徴:ガラスのような透明感のある白磁・繊細な絵付け(藍色1色の染付磁器・華やかな色絵磁器)

4)益子焼(ましこやき) 【関東地方/栃木】

Creemaでみつけた、益子焼の食器

▲ 手描きの紋様が特徴 益子焼4寸皿(黒)×2枚組
▲ スープカップ しずく柄 飴釉 ほっこりかわいい益子焼
▲ 美味しいご飯が手軽に炊ける益子焼の一合土釜 kamacco(茶)

ゴールデンウィークと11月頃に行われる益子陶器市でもよく知られる、栃木県・芳賀郡益子町でつくられる益子焼。

江戸時代末期、笠間で修行した大塚啓三郎が窯を築いたことに始まるといわれています。

 

益子焼の陶土は、良質であるものの粗く精巧な器をつくるには向かなかったため、当初は主に水がめ・火鉢・壺などの日用品が制作されていました。その後、益子焼でつくられた花期や茶器などの民芸品が日本全国に広まり、発展を遂げます。

 

益子焼に使用する土は、砂気が多く、ごつごつとした土の質感があります。そのため厚手で重いものが多く、割れやすいといった点もありますが、釉薬と非常に相性がよく、重厚な色合いとぼってりとした肌触りが特徴です。

益子焼(ましこやき)

・産地:栃木県・芳賀郡益子町
・種類:陶器
・特徴:重厚な質感とぽってりとした釉薬

5)備前焼(びぜんやき) 【中国地方/岡山】

Creemaでみつけた、備前焼の食器

▲ 備前焼の丸いかわいいマグカップ(明るめ)
▲ 備前焼 蚊取り線香立て

備前焼は、岡山県・備前市周辺を産地とする炻器(せっき)です。
日本六古窯(にほんろっこよう)のひとつとされ、古くから焼き続けられている焼き物とされています。

備前焼の歴史は平安時代まで遡ります。古墳時代につくられていた須恵器(すえき)の製法が次第に発展し、平安時代に庶民の日用品として碗・皿・瓦などが生産されたのが始まりです。

 

備前焼は、良質の土を一点ずつ成形し、乾燥させたのち、釉薬を一切使用せずにそのまま約2週間前後、1,200度以上の高温で焼き締められます。釉薬を使わないため、土感を感じられる味わい深い質感のある焼き物に仕上がります。

また、高温で焼き締められているので強度が高く割れづらく、熱しにくく冷めにくい保温力があり、ビールを入れればきめ細かな泡が長持ちし、内部に微細な気孔があるためお酒やワイン、ウイスキーを入れるとまろやかでこくのある味になる、といった利点が豊富に揃った、お酒好きにはぜひ使っていただきたい焼き物でもあります。

日本六古窯とは?

中世から現在まで生産が続き、1000年の歴史を持つ代表的な6つの窯の総称。
磁器などは中国から朝鮮から渡ってきたものですが、日本六古窯の焼き物は生粋の「日本生まれ」です。
瀬戸焼、備前焼、常滑焼(とこなめやき)、信楽焼(しがらきやき)、丹波立杭焼(たんばたちくいやき)、越前焼の6つ。

備前焼(びぜんやき)

・産地:岡山県・備前市
・種類:炻器
・特徴:釉薬を使用せずに焼き締められた土感のある質感

6)美濃焼(みのやき) 【中部地方/岐阜】

Creemaでみつけた、美濃焼の食器・作品

▲ 立体アルファベット キャセロール鍋 20㎝ (ガス&IH使用可能)
▲ 美濃焼 水明カップ 水 コップ/焼酎カップ/ビアカップ

美濃焼が生産されている、岐阜県・東濃地域(土岐市・多治見市・瑞浪市・可児市)は、日本一の陶磁器の産地として知られています。生産量はなんと、日本の陶磁器生産量の約半分!

 

そんな美濃焼は、ほかの産地の焼き物と異なり焼き物の様式を持っておらず、多種多様なデザインがあります。
また、美濃焼では土でつくられた陶器だけではなく、今では磁器も生産されています。

 

安土桃山時代から江戸時代初頭にかけては、茶の湯の流行とともに茶人の好みを反映した芸術性の高い焼き物が種類多様に生産され、江戸時代には日用品の食器の産地にもなり、江戸時代末期になると磁器の生産も開始されました。現在では日本の和食器・洋食器の大半を生産する大窯業地です。

美濃焼(みのやき)

・産地:岐阜県・東濃地域(土岐市・多治見市・瑞浪市・可児市)
・種類:陶器、磁器
・特徴:食器類生産量が全国シェアの約60%・様式がなく「特徴がないのが特徴」といわれることも・庶民の食卓やお店でもよく使われる

7)萩焼(はぎやき) 【中国地方/山口】

Creemaでみつけた、萩焼の作品

▲ そば猪口(ねこ)
▲ 【萩焼伝統的工芸品】タンブラー大白萩掛分け筒碁笥底

古くから茶道の世界では、「一楽・二萩・三唐津」という表現が用い、茶人が好きな抹茶茶碗を「京都の楽焼」、「山口の萩焼」、「佐賀の唐津焼」の順番に格付けしていたといいます。

特にこの萩焼は現代でも茶人好みの茶陶として非常に有名で、使い込むことでより美しく風合いが変化する、奥の深い焼き物です。

 

萩焼の素地は、柔らかく焼き締まりの少ない陶土を使ったふっくらとした独特の優しい質感。
土が荒いため、浸透性・保水性・保温性が高く、釉薬の収縮率の違いにより貫入(表面にできる細かなヒビ)ができ、使い込むうちにそこから水分が浸透することで、萩焼特有の「七化け」と呼ばれる、器の風合いの変化が愉しめます。

萩焼(はぎやき)

・産地:山口県・萩市
・種類:陶器
・特徴:ふんわりとした質感・使い込むうちに貫入と七化けができ、風合いが変化する

8)やちむん  【九州地方/沖縄】

Creemaでみつけた、やちむんの食器

▲ 緑釉唐草文お茶碗 大 (沖縄のやちむん 壺屋焼)
▲ 菊文水玉の小鉢 大 (沖縄 やちむん)

「やちむん」とは、沖縄の言葉で "焼き物" のこと。
1616年、当時中国や東南アジア、朝鮮などと貿易をさかんに行っていた沖縄に、朝鮮人陶工が製陶技法を伝えたのが始まりだとされています。

 

初めは釉薬をかけず、低温焼成する焼き物で「アラヤチ」と呼ばれていましたが、その後沖縄の職人によって紋様や絵付けを施して釉薬をかける「ジョウヤチ」になっていったといいます。

大正時代に入ると県外への輸出も増え、それにより華やかな装飾が施された「琉球古典焼」も生まれます。
昭和の初めには柳宗悦らによる民藝運動によって、さらに人気が広まりました。

 

どことなく異国の風情も感じさせる和の食器は、沖縄の自然や海の青にも調和する、愛嬌を感じる雰囲気です。

やちむん

・産地:沖縄県・那覇市壺屋地区、読谷村
・種類:陶器
・特徴:葉っぱや魚など、自然のものをモチーフにした親しみのある絵付け

9)瀬戸焼(せとやき) 【中部地方/愛知】

Creemaでみつけた、瀬戸焼の食器

▲ キャニスター - m.m.d. -
▲ souzyu-en modern 川 Sサイズ ご飯茶碗 瀬戸焼

よく陶磁器の食器のことを「セトモノ」と呼んだりしますよね。あの呼び方はこの瀬戸焼からきている名前です。

瀬戸焼も備前焼と同じく日本六古窯になっており、1000年以上の歴史を誇る、日本人が長く愛用してきた焼き物のひとつです。

備前焼は釉薬をかけずに焼き締める技法でしたが、瀬戸焼は当時唯一、釉薬をかけて焼く焼き物でした。古墳時代に朝鮮から伝わった須恵器の技法が始まりとなって瀬戸の周辺で窯場が広がり、鎌倉時代には植物の灰を釉薬にした灰釉(かいゆう)陶器が焼かれるようになります。

 

鎌倉時代にはそれまで釉薬をかけた焼き物はなく、瀬戸だけのものでした。釉薬がかかった焼き物は素焼きに比べて耐水性に優れ、彩色する色の幅が広がり、釉薬ならではの光沢や色、模様がつきます。そのため実用食器として好まれ、東日本を中心に広がっていきました。

その後江戸時代には有田をはじめとした九州地域で磁器の生産が始まると、瀬戸でも磁器を焼き始めます。以来瀬戸焼では、旧来の陶器を「本業焼」、磁器を「新製焼」と呼び、陶器と磁器の両方をつくっています。

瀬戸焼(せとやき)

・産地:愛知県・瀬戸市
・種類:陶器、磁器
・特徴:あらゆる色合いの釉薬が使われ、特徴もさまざま・陶器と磁器のどちらも存在するが現在は磁器が主となっており、セトモノと呼ばれるほど日本の食卓にも浸透している

10)萬古焼(ばんこやき) 【中部地方/三重】

Creemaでみつけた、萬古焼の食器

▲ 萬古焼の急須とカップ

夏によく見かけるブタの形をした蚊遣り、あれも萬古焼で有名な品のひとつです。

萬古焼は耐熱性に大変優れた焼き物で、陶器と磁器の中間の性質を持つ炻器に分類されます。その耐熱性から、急須や土鍋がよくつくられ、特に国内の土鍋のシェアは7〜8割なんだとか。「萬古焼」という名前はあまり知らなくても、ブタの蚊遣りや急須、土鍋などは、意外と私たちの暮らしに馴染み深いですよね。

 

その耐熱性は、萬古焼で使われる陶土に秘密があります。土の原料にはリチウムという鉱石が約40%ほど含まれ、その効果で直火や空焚き、ガスレンジなどにもその耐熱性を発揮するのだそうです。

現代では、蚊遣りや急須、土鍋はもちろん、タジン鍋や炭コンロなどもつくられています。

萬古焼(ばんこやき)

・産地:三重県・四日市市
・種類:炻器
・特徴:耐熱性に優れ、土鍋や急須などに活かされることが多い

11)丹波焼/丹波立杭焼(たんばやき/たんばたちくいやき) 【近畿地方/兵庫】

Creemaでみつけた、丹波焼の食器

▲ 丹波焼 昇陽窯さんの作品

丹波焼の最大の特徴は、窯の中で約1,300度の高温で50〜70時間に渡って焼き締められることによって器の上に降り積もった燃えた薪の灰が原土の中に含まれた鉄分と融け合い、自然発色する「自然釉(しぜんゆう)」と呼ばれる独特な色と模様です。炎の当たり方によってもひとつずつ違った表情を見せるのが丹波焼の面白さです。

 

平安時代や鎌倉時代は、ろくろを用いずに成形する紐作りという手法で形を整えていましたが、現在は丸型はろくろを使用したり、丹波焼ならではの足で蹴る左回転の蹴りロクロなどが取り入れられています。

江戸時代以降は釉薬の使い方や技法も多様になりましたが、今もなお、伝統的な風合いを引き継いだ丹波焼がつくられています。

丹波焼/丹波立杭焼(たんばやき/たんばたちくいやき)

・産地:兵庫県・篠山市今田地区
・種類:陶器、炻器
・特徴:長時間焼成することで灰と陶土が融け合ってできる自然釉の模様

12)小石原焼(こいしわらやき) 【九州地方/福岡】

Creemaでみつけた、小石原焼の食器

▲ engiya-japanさんの作品
▲ 小石原焼 楕円鉢 白マット 飴釉 森山實山窯 森山寛二郎

点々が連なった模様や波打った線、引っ掻き模様などさまざまな技法で描かれた幾何学的なモチーフが組み合わさった模様が特徴の小石原焼。素焼きはせず、釉薬をかけて焼く陶器です。

 

民芸運動の影響を受けて小石原焼も注目されるようになり、柳宗悦にも影響を与えた20世紀を代表するイギリス人の陶芸家、バーナード・リーチも「用の美の極致である」と絶賛したといわれています。
シンプルな色合いながらも道具としての美しさが際立つ小石原焼は、現代の生活にもしっくりと馴染み、愛用されています。

小石原焼(こいしわらやき)

・産地:福岡県・朝倉郡東峰村
・種類:陶器
・特徴:点や線を用いた素朴で幾何学的な模様

日本の焼き物のルーツを知って、食器選びの楽しさを広げませんか?

イギリスや北欧、ヨーロッパなどの食器には興味があるけど、 "日本の食器" のことは身近すぎて知らないことが多いかも。そもそも、産地が違うと何が違うの? そんなふうに感じる方は少なくないかもしれません。


その土地ならではの土や原料を使って、その土地で職人が手がける日本の焼き物。

その日本の焼き物には、技法や見た目の違いはもちろん、それぞれのストーリーがあり、歴史があります。

 

最近では現代の空気も取り入れつつ、その焼き物ならではの技法や特徴を引き継いだ新しい日本の焼き物が生まれつつあります。日本の焼き物のルーツを知ることで、これからの和食器選びがますます楽しくなるはずです。

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