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「今、私が会いたい人」ココにしかない帽子。”かぶってみたい”と思ってもらえるように|帽子作家・KENT HATさん

こんにちは。クリーマ編集部の川越です。
普段は編集部としても読みもの記事を書いたり、取材のため作家さんにお会いしに行ったり、動画制作をしています。
今年の4月に新社会人としてクリーマの一員となって以来、嬉しいことにたくさんの作品に触れる機会をいただきました。そんな中でも初めて見た時からずっと心に残っていた帽子がありました。
帽子にこだわったことがなかった私に帽子の魅力を教えてくれた作品、それがKENT HATさんの帽子でした。見た人を楽しませてくれるアイデアやものづくりへのモチベーションはどこからくるのか、帽子作家・KENT HATのケントさんにお伺いしてきました。

ポンと乗せただけで一気に素敵になる、帽子の魔法に魅了されて
― 帽子作りの道へ進まれたきっかけはなんですか?
帽子を作る前はキャラクターデザインの仕事をしていました。キャラクターの洋服を作るにあたってそのキャラクターのトータルコーディネートを意識するようになり、そこで自分でも帽子を取り入れてみたのがきっかけです。帽子を変えるだけでコーディネートの幅が広がり、大げさかもしれませんが頭にポンと乗せただけで魔法がかかったように一気に素敵になるんです。その頃から自分の中で重要なアイテムという位置付けになっていきました。

そんな中で、サイズ展開が少ないなどの理由で「かぶりたいのにかぶれない」という人がいることを知りました。それなら自分で作ってみようと思い30歳になるタイミングで9年間勤めた会社を辞め、帽子作りを教えてくれる学校へ通い始めました。

どうしたら、僕の作った帽子だとわかってもらえるのだろう
― メロンパンハットやアップルパイハット、食パンハットなど、楽しくなるようなデザインの帽子をたくさん作っていらっしゃいますが、帽子作りに悩まれる時期はあったのでしょうか?
帽子を学んでいた時は、海外の職人さんが作るようなヴィンテージ寄りの帽子や老舗ブランドの高級路線にも憧れていました。ですが、すでにあるものをまた自分が同じように作っても意味がないような気がしていて。
帽子職人と言っているものの、そう言い切れるほどオリジナルの帽子を作れているだろうか、どうしたら帽子だけを見ても僕が作ったものだと伝わるのだろうかと、それがすごく悩みでした。

― 転機はなんだったのでしょうか
1年目はお客さまからいただいた要望をそのまま再現するオーダーメイドの帽子を作っていましたが、あるイベントで初めて完全に自分のオリジナルで作った帽子を出したときに、お客さまの反応がすごく良かったんです。そこで、思い切って好きなように作ってみても受け入れてもらえるんだと知りました。それが自分の個性を帽子というツールで表現していこう、と思うようになったきっかけです。その頃からオリジナル性と実用性のバランスを意識し始めました。
自分の「作りたい」帽子と、みんなが「かぶりたい」と思う帽子
― デザインやコンセプトで大切にされていることはなんですか
最近はモチーフを明確にすることを心がけています。結局、モチーフが分かりにくいとお客さまの反応もあまり良くなくて…。
今まで帽子の型を作ってから生地を問屋で探していましたが、生地の種類にも限界があります。モチーフにぴったりの生地を見つけられず妥協することもあったので、今では生地を探しながらモチーフのイメージを膨らませています。色味が似ていることはもちろん、例えば、メロンパンなら焼きたてのようなほっかり感のある生地でないとメロンパンの形にしてもモチーフが中途半端になってしまいます。
実用性を優先しすぎてテーマがぼやけないよう、モチーフを最大限に表現する。洋服のように自由度が高く、かぶっても可愛い、お部屋に飾っても楽しい、を意識しています。

試行錯誤を繰り返してたどり着いた、自分だけの型作り
― 頭の中のアイデアがどのように形になっていくのですか?
日々の生活の中でも「何か帽子にできないかな」と常にアンテナを張って情報収集をしています。そこで頭に浮かんだイメージをある程度形にしていき、まず型を作ります。帽子作家はみなさんそうだと思いますが、型作りで結構悩んでいます。本来は木で作るものなのですが、帽子の木型を作れる職人さんは国内でもほんの数名なんです。初めは発泡スチロールでも試してみましたが、型に生地を押し込む工程で軽すぎてうまく力を入れることができませんでした。そこで、ある程度の重さは必要なのかと気づきました。

詳しくはお教えできませんが、試行錯誤をしながら3年ほどかけてやっと今の形に固まってきた、という感じです。これなら木型に比べて軽く、削りやすいので微調整もききます。逆に、木型だったらメロンパンハットのような複雑な形の帽子はできなかったかもしれないです。
色々と構想はあったのですが、「どうやって作ればいいのか」と悩んでいた帽子もあって。そんな時に自分に合った最適なやり方を見つけられたおかげで自由度のあるデザインが可能になり、帽子を自分のイメージにより近づけることができました。



見た人、かぶってくれる人が一番笑顔になってくれそうなものって何だろう
― 人気作品でもある、パンの帽子を作ろうと思ったのはなぜですか?
パンは食べるのも、モチーフとしても好きだったので何となくのアイデアはありました。そんな時、あるパンの映画を観て、人々に優しく寄り添い、食べた人をふんわり温かく包み込むパンの強い力に惹かれました。


秋の新作も!!
手作りでしか出会えない魅力を。帽子に込めた思いも一緒にお届けしたい
― 手作りの魅力は何でしょうか
型は一緒でも、全く同じ帽子はできません。一番個性が出るのはつばの部分で、微妙なシルエットはよく見ると手作り感が残っていて面白いです。しっかりしていても人の手で作られているので「ハンドメイドはやっぱり違う」と感じていただけると思います。
発送時はサイズ調整テープやお手紙、説明書なども同封して、帽子に込めた思いも一緒にお届けできたらと思っています。「こんな人が作っているのかな」と僕の個性や人間性が伝わったら嬉しいですね。


― 嬉しい瞬間はありますか?
帽子は身につけて完成するものだと思っているので、お渡しした後に一言でもリアクションをいただけると次の作品へのモチベーションにもなり、とてもありがたいです。毎回レビューにはドキドキ、お客様の反応で一喜一憂しています。
実際にかぶったお写真をいただいたり、コーディネートしてSNSへ投稿してくれたり。帽子を加えることで、ファッションをより楽しみ、素敵なコーディネートになっているとわかるのが一番嬉しいです。

“ワクワク“心を掴む帽子作り。インタビューを終えて
「帽子をきっかけに、会話や、出会い、笑顔など、コミュニケーションが生まれるきっかけになったら嬉しい」と語ってくださったKENT HATさん。
KENT HATさんの帽子は、普段帽子をかぶらない人にも「かぶってみたい」と思わせるような作品ばかり。私もその魅力にはまった一人です。
購入してくださった方へ、心を込めてじっくり丁寧に形にしていく姿。型に帽子の生地をかぶせ、蒸気を当て蒸し、乾燥させる。この工程を何度も繰り返し、複雑な形を全て手作業でつけていきます。1つの帽子を完成させるだけでも数週間かかるそう。可愛くてユニークな帽子には、ものづくりのプロフェッショナルとしてのただならぬ思いと根気がありました。
帽子を通してワクワクを届けたい。今回お話を伺うことができ、KENT HATさんがこんなにも帽子作りに惹かれた理由がちょっとだけわかった気がしました。
手作りだからこそできたデザインと温もりの詰まった、KENT HATさんにしか作れない帽子。ぜひ一度かぶってみてください。

