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「今、私が会いたい人」良い畳をもっと広めたい。畳屋11代目のこだわりが詰まった畳雑貨 - 松屋畳店さん

はじめまして。クリーマ開発チームの高橋です。

 

今回の作り手インタビューでは、Creemaで畳を使ったブックカバーや名刺入れなどの畳雑貨を販売している松屋畳店・大川さんに会いに行きました。

 

松屋畳店は群馬県桐生市で江戸時代から代々続く歴史ある畳屋で、大川さんはその11代目。本業は畳の張替えなどを行っており、大川さんご自身も畳製作技能士一級の資格を持つ職人さんです。

 

そんな大川さんがなぜ、ブックカバーをはじめとした畳雑貨を作ることになったのか。クリーマ随一の畳好きで、松屋畳店さんの「ミニ畳」も愛用している私がお話を伺いました。

「良い畳」をもっと知ってほしい。畳雑貨を作る理由
―老舗畳店の大川さんが、名刺入れやブックカバーなどの作品を作ることになったのはどのような経緯だったのでしょうか?
四方縁 畳ブックカバー富士山~麻の葉縁 紺~文庫サイズ
https://www.creema.jp/item/607153/detail

皆さんも感じていらっしゃると思いますが、今、畳に触れていただく機会がものすごく少なくなっています。住宅は洋室が主流で、新しく家を建てる時でも畳の部屋自体がない。畳の需要が激減している上に安価な中国産のい草が入ってきて、国内のい草の生産農家さんは私がこの業界に入った17,8年前と比べて半分程になってしまいました。

 

良いい草が無いと、良い畳は作れない。この状況をなんとかしなくてはいけない。そんな思いでブックカバーを作り始める前から、畳のコースターやオブジェを作って街の催し物で出していました。ある時それを目にしたお客様から、ブックカバーがあればいいのにという声をいただき、「それだ」と(笑)

 

畳の特徴の一つが、裏表両面使えること。畳は裏返し(畳の表面を裏返して貼り直すこと)や表替え(畳の表面を交換すること)をすることで、長い間きれいな状態で使える敷物なんです。でも、そのことをご存知ない方が多いようでなかなかご用命がないんですよね。ブックカバーの中には両面使える作りにしたものがありますが、それも畳が両面使えるという特徴を知ってもらうための工夫です。

招福縁起柄焼印 い草文庫ブックカバー~富士山~其の弐
https://www.creema.jp/item/292300/detail
▲畳と同じように、裏返して使えるブックカバー。
―「良い畳」とはどういったものなんでしょうか?

畳の良し悪しは、畳の材料である植物、い草の長さと量で変わります。い草は、根本は白く穂先は赤く細くなるので、真ん中の緑色で太さが一定の部分を畳に使います。長いい草を使い目方の入った畳は、目が詰まっていて肌触りがよく、日焼けも均一で艶が出て美しい黄金色になるんです。安価な畳の端は、赤や茶色、白のい草が混じり、摩擦に対する耐久性もなくすぐに剥けたり傷んだりしてしまいます。焼けると色がこげ茶色になってしまい、ところどころに黒い筋が出て、い草の密度が低いので裏側にまで焼けが回ってしまうこともあります。

▲上が中国産、下が国産の畳表の日焼け後。並べてみると、色や目の詰まり方が全く異なるのが分かります。

私の畳雑貨は畳の魅力を知ってもらうために作っているので、国産の上級品のい草の中でも真ん中の一番美しい部分だけを使っています。本業は畳屋ですし、畳を広めたい、畳業界を元気にしたいという気持ちでやっているので、畳雑貨で利益を出すことは考えてないんです。ぜひ手に取っていただいて良い畳を知ってほしいですね。

たたみ御朱印帳 富士山 えんじ縁(大サイズ)
―日本のい草農家さんが作ったい草の良い部分だけ使われた、小さいながらもこだわり抜かれた畳雑貨なんですね…!素材の他にも、畳雑貨には畳の技術は応用されているのでしょうか?

ブックカバーなどの畳雑貨は畳とは作り方が全く異なるので、そういった点はあまり多くないですね。ただ、急な変色を避けるため、またい草を強くするために数ヶ月熟成させてから商品として出荷するようにしているのは普段の畳工事での扱いと同じです。あと、名刺入れなどの縁取りの入れ込みは、畳の縁の処理に似ていて畳屋が使う独特の技術かもしれません。

▲名刺入れにポケットを縫い付ける作業。江戸時代から続く松屋畳店の商紋「へ大(やまだい)」が内側に刻印されています。
▲少し余裕をもたせながら縁取りを縫い付けているところ。ピンと張って縫い付けてしまうと、折り曲げた時に引っ張られて縁取りが切れてしまうんだそうです。
▲目打ちを使って縁取りを入れ込みます。この技術が、畳の縁の処理に似ているそうです。
―Creemaでも、ブックカバーや名刺入れなど畳雑貨の人気が高いです。

きっと日本人の遺伝子なんでしょうね、畳の匂いを良いと感じたりするのは。家に畳がない人でも、「懐かしい」とか「いい香りがする」とか言ってくれるんですよね。

 

畳がない家に住んでいる方にもこういった畳の作品を手に取ってもらって、やっぱり畳っていいねって思っていただける。そうやって将来も畳を好きでいてくれたら、例えば家を建てる時に部屋を和室にするって選択肢が出てくる。家に和室はあるけど長い間畳替えをしていない人なら、新品の良い畳と見比べることで畳の傷みに気付いて、じゃあ畳替えをしようとか。

 

そんなきっかけに繋がれば、い草農家さんや畳縁のメーカーさん、地域の畳屋さんの仕事が増える。そうやって業界が盛り上がっていけばいいなと思います。

 

実際、畳雑貨がきっかけでうちに畳をご用命くださった若いご夫婦もいらっしゃいますよ。

装飾ミニ畳 桜舞
https://www.creema.jp/item/816218/detail
▲一面に桜の焼印を押したミニ畳。お部屋に敷く畳にも希望すれば同じように桜の焼印を散らすことができるそうですよ。何畳もの畳に押す作業はとても手間のかかる作業ですが、その分畳一面に桜が舞っている様子は壮観です。
11代目の畳屋として。「畳を広めたい」こだわりの源
―11代続いているってすごいことだと思うのですが、やはり自然に後を継ごうと思われたのでしょうか?

初めから継ぐとは決めていなかったですね。他のこともやってみたくて大学にも行きました。でも、やっぱり「自分の代で止めてしまうのか」という気持ちもあり、だんだん畳に対する思いが強くなって。大学を中退して畳屋になる修行を始めました。

―畳の仕事で難しいのはどんなところですか?

その家、その部屋に合わせて畳の大きさを調整するところです。

よく「畳一畳」といいますが、実はその家ごとにサイズが違うんです。畳を作って持って行ったらはまらなかったとか、隙間ができてしまったといったことは許されません。そのためにしっかり採寸し、ミリ単位で制作しています。

▲畳の芯の部分。この上に畳表を貼ることで畳になります。
―畳屋さんの仕事をしていて嬉しかったことや、やりがいを教えてください。

やはり畳を張り替えたときに喜んでいただけるのが一番嬉しいですね。畳を張り替えたお部屋に入ると、「わあ、きれいになった」「いい香りがする」「気持ちいい」と本当に喜んでもらえるんです。

 

過去のご依頼で部屋だけではなく廊下も畳で仕上げさせていただいた時があるのですが、クッション感があり足腰の弱いおじいちゃんにも安心だと喜んでいただけたことがありました。

▲畳表を切るところを見せてくれた大川さん。少し見えにくいですが、刃が上向きになっている大きな包丁のようなものですーっと切っていきます。
―大川さんの思う畳の魅力とは?

やっぱり、日本の風土に適しているところですね。湿度調整、空気清浄、消臭機能に適度な弾力。い草の香りにはリラックス効果もあります。集中力も高まるようで、畳の部屋で勉強すると子どもの学力が上がるという研究もされているんですよ。

 

また、裏返し・表替えで長くご愛用いただけるという魅力はぜひ多くの方に知っていただきたいです。裏返しは3〜5年、表替えは6〜7年に一度が目安です。国産の良い畳なら裏返しがきれいに出来ますよ。

―今後やってみたいことはありますか?

畳の需要を増やしたい。それだけですね。

 

私には息子がいて、継ぐかどうかは彼が決めることですが、彼が継ぐと言う時のためにその土壌は作っておきたいと思っています。継ぎたいと思ってくれるようなお店、業界にしていきたいですね。

インタビューを終えて

今回のインタビューを通じて感じたことは、大川さんのものづくりに対する視点の広さと一貫性のある強いこだわりでした。

 

年々その数を減らしてゆく畳をどうしたらもっと広められるか、い草農家や畳縁メーカーなど業界が潤うか。そしてご子息にどれだけのものを残せるか。これをずっと畳屋として考えていらっしゃいました。そのための名刺入れであり、ブックカバーだったのです。

 

名刺入れの製作工程を見せていただきましたが、畳と同じい草を使っているものの、やはり名刺入れと畳では製作工程は全く違います。それでも畳を広めたいという一心で試行錯誤を重ね、上級のい草の更に良質な部分だけを用いて、ひと針ひと針丹念に製作されている様子には尊敬を通り越し畏敬の念を抱くほどでした。

 

皆さまにも松屋畳店・大川さんの想いと、畳の魅力が少しでも伝われば幸いです。

たたみ名刺入れ~竹の葉~
https://www.creema.jp/item/530133/detail
▲写真左:松屋畳店 大川さん、右:クリーマスタッフ 高橋
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