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「今、私が会いたい人」違和感のあるデザインを個性に。一目で引き込まれる魅力を生み出す|革小物作家・ies designさん

「今、私が会いたい人」違和感のあるデザインを個性に。一目で引き込まれる魅力を生み出す|革小物作家・ies designさん

こんにちは。クリーマの根津です。今年の4月、新卒社員として入社したばかりではありますが、入社前から長期インターンシップをしており、毎日たくさんの作品に出会ってきました。

 

そんな私がずっとお会いしたかったのが、ies designの半井(ナカライ)さん。私自身がies designさんの「マメポ※」愛用者で、その魅力のとりこになったファンの一人でもあります。このちょっぴり“クセ”のある作品はどのように作られているのか? もしかして、作家さんもちょっぴり“クセ”のある方なのかな? ぜひ作っていらっしゃる方にお会いしたい! という強い思いから、今回そのies design半井さんのもとに伺いました。

 

※マメポとは…ies designさんが製作されている小銭入れの愛称。その形が「豆」に似ていること、「ポケット」にすっぽり入るデザインであることから、この名前が付けられました。

(アトリエの様子)

ファッションの世界から、革小物の世界へ

ー ご自身でものづくりを始めたきっかけは何だったのでしょうか

幼い頃から何かを作ることが大好きで、お菓子の空き箱や飴の包み紙を引き出しの中にしまっておいては色んなものを作って遊んでいました。それでよく母に怒られていたのを覚えています(笑)

 

小学生の頃からデザイナーに憧れていたので、ファッション系の専門学校に通い、そのままアパレルの会社に就職して洋服のデザインを仕事にしていました。でも、やってみたら「違うな…」って。ファッションの世界は季節に合わせて流行があり、どんどん新作を作っていかなければいけません。

 

そのスピード感が自分のペースに合わないなと思ったのに加え、 一生懸命デザインして作った洋服がシーズンごとに大量に在庫処分されてゆくのを見て、悲しくなってしまったんです。「やりたいことは、こういうことじゃない」と気づき、憧れていたはずのアパレルの仕事を辞めることにしました。

(ies design半井さん)

自分が欲しいものを作ったら「マメポ」が完成

ー なぜファッションデザイナーから革小物作家だったんでしょう?

ちょうど会社を辞めて「次はどうしようかな?自分で何かを作りたいな」そんなことを考えていた頃、母が「あんた、これ邪魔だから持っていきなさい!」と言って、私が専門学校時代に使っていた革包丁を持ってきたんです。

 

それを見て、学生の頃、革が好きだったことや、好きな革でウエストポーチを作っていたことを思い出しました。遊びに出かける時など、動きやすくて一つにまとめられるウエストポーチって重宝するんですよね。

(現在のアトリエにある制作道具)

最初は「好きな革素材を使って、ウエストポーチみたいに便利なものを作ってみよう」と思ったんです。まずは自分が欲しいものをと考えていたら、当時使っていた小銭入れの角が折れ曲がり汚くなっていたのが目に入って、「これだ」と思いました。

 

カードや小銭はもちろん、鍵もつけられて、傷みにくく、長く使えるようなもの。そう考えて作ったのが、このマメポ誕生のきっかけです。もともと洋服のリメイクが趣味だったこともあり、ジーンズのポケットを解体して型をとり、ポケットにすっぽり収まるサイズの角がないポーチを作ったんです。それから試行錯誤を重ねて今のマメポが完成し、かれこれもう8年くらい作り続けています。

(全てのデザインを自ら描き、型取りをして制作されています)
(あの絶妙なグラデーションは一つひとつ手作業でした!)
(これらのパーツを組み合わせ、ミシンで縫って仕上げていきます)
(どんどん仕上がっていく様にワクワクしながら作っていらっしゃるそうです)

ー 最初からマメポは人気だったのでしょうか

いやいや全然。最初の頃は縫製もちゃんとしていませんでしたし、デザインモチーフも能面の「般若」「小面」「白狐」というかなり特色のあるものばかり。友人たちには「怖いから絶対に売れない。そんなの欲しい人はいない。」と断言されていました。そもそもお客様にどうやったら見てもらえるのか、気に入ってもらえるのかも、全く分かりませんでした。

(初期に制作していた能面の「般若」「小面」)
(「白狐」はリニューアルを重ね今でも人気の作品のひとつ)

そんな中で「Creema」との出会いはとても大きかったです。当初は友人・知人などからの個人的な依頼しか受けていなかったのですが、試しにと思って3種類のマメポをCreemaに出品してみたんです。そしたらある日突然「購入されました」って通知が来て。正直、「なんでこんなのが売れるの!?おかしなサイトだな」と思いましたよ(笑)

 

私が作りたいものを作っているだけで、誰かに受け入れられるものを作っているつもりはありませんでした。だから、誰かが「欲しい」と思ってくれて購入してくれた時は、本当に嬉しかったですし、なんだか救われた気持ちになりました。

「違和感」を出すことで心に残る作品作りを

ー ies designさんの作品からは一目で引き込まれるパワーを感じます。それはなぜなんでしょう?

私、「違和感」があるものが好きなんです。京都の六波羅蜜寺にある「空也上人像」ってご存知ですか?口から仏像が何体も出てきているちょっとおかしな仏像があるんですが、これがもう大好きで。あんなに違和感のあるものが重要文化財として残っていて、さらには教科書にも載ってるなんてすごい、と。

 

そこからのインスピレーションもあり、自分で作るものにもちょっとした「違和感」を残すようにしています。マメポの動物たちの表情もそうです。「しっくりくる可愛いもの」ではなく、ちょっと怖かったり、面白くて笑っちゃうものを作りたいと思っています。なので、動物たちのちょっぴりおかしな部分を強調して作っています。

 

例えば、サルだったら目が離れていてどこか出っ張っているとか。ネコだったら、敢えてふてぶてしい表情を切り取ってデザインしています。ちなみに、動物は正面から見た方が個々の習性が出ている気がして好きなので、私の作品は正面のアングルが多いのも特徴です。

お猿のマメポ【ミルクティー】

とてもブサイクなネコのマメポ【グレー】

https://www.creema.jp/item/955239/detail

そんな違和感が心に残るのか、私の想いが伝わったのか…最近はコレクターの方も増えてきました。すごい方だと、20個くらいマメポを持っていらっしゃいます。もはや私よりもたくさん持っていて、「個展が開けそうですよ」なんて言ってくださいます。本当にありがたいです。

命を吹き込むように「目」を入れています

ー ちょっとした違和感のあるデザイン以外にも、こだわりはありますか?

「日本らしさ」や「和」を大切にしています。デザインもそうですが、例えばマメポの素材となる革はあえて日本の乳牛の革を使っています。乳牛の革は柔らかいので、一般的に財布やポーチなどの革小物作りには向かないとされています。

 

でも、私はなるべく自分が普段いただいているものの副産物で作品を作りたい。だから敢えて日本の乳牛の革を使っています。もちろん、丈夫で傷みにくいものにしなければならないので、強度が必要な部分には芯を貼ったり、細かな工夫をしています。

(アトリエにずらりと並ぶ革素材)

ただ1か所だけ、動物の「目」はワニ革を使っています。ワニ革のうろこの部分を一粒一粒カットして、モチーフの動物に合うサイズを選んでいます。このワニ革の目を入れると、一気に表情が出るんです。
 

マメポに命を吹き込むような、そんな気持ちで一つひとつに目を入れています。本当に手間のかかる制作工程ですが、譲れないこだわりです。

(正面から見つめられると思わずドキッとしてしまうこの表情には、そんな細かな工夫が施されているんだと感動してしまいました)

ー Creemaのイベントによくご出展いただいていますが、お客さまとの印象的なエピソードなどはありますか?

それはもうたくさんあります。特に印象的だったのは、「丸の内ストリートマーケット by Creema」に出展したときのことです。ある時、いかにも普段から丸の内でお買い物をされそうな年配のビジネスマン風の男性と上品な奥様が、私のお店の前で立ち止まってマメポを指さし「これは何?」って尋ねてきたんです。こうこうこういうもので…と説明したら「私はこういうものを探していたんだ!」って周りの人たちが振り向くぐらいの大声で言ってくださって。奥様にも「お前もこれは必要だよ!」っておっしゃり、お二人でご購入くださいました。

 

きっと丸の内でのイベントでなければ、一生出会うことのないご夫婦だったと思うんです。でも、そんな方が一目で気に入って、購入下さった。それがものすごく嬉しかったのを、今でも覚えています。結局男性が購入されたのが、猫のマメポっていうのがまた可愛かったです(笑)

(丸の内ストリートマーケットの様子)

イベントに限らずですが、一番嬉しいのは「(マメポを)手放せなくなった」という言葉です。こう言ってくださると「してやったり」って思います。

ー どんな新作が生まれるのか楽しみです!

これまでは、お客様からご要望いただくことの多いモチーフを新作として出品していました。例えばウミガメとか、黒柴とか。お客様に喜んで頂ける作品ももちろん作りたいと思っていますが、今後はもっと自分が作りたいものにも取り組んでいきたいですね。初期の「般若」や「小面」のように(笑)


自分の作りたいものを、こだわりを持って作って、それを喜んでくださる方に一人でも多くお届けできたら嬉しいです。

インタビューを終えて

マメポを愛用しているものの、実際にお会いするのは初めてだったies designの半井さん。生まれて初めてのインタビューでもあり緊張でガチガチの私でしたが、笑いが絶えなくなるようなお話もたくさんしてくださいました。

 

作品だけでなく、その気さくで明るいお人柄にますますファンになってしまいました。工房兼ご自宅に私たちが到着した際「やっと来たー、待ってたんですよ!!」と大歓迎してくださったのもとても印象に残っています。

(左:ies designの半井さん、右:クリーマ 根津)

今回はies designさんのマメポシリーズの中でも、出品すると1日で売り切れてしまうほど大人気な「虎」マメポの制作風景も見学させていただきました。デザインの描き起こしから革の裁断、色付け、縫製まで、たくさんの工程をすべてお一人でやられている半井さん。「この色付けがまた楽しいんですよ~」「縫い合わせたものを裏返す瞬間がたまらないんです」と、ご自身も楽しみながら制作されているのがまた素敵でした。

 

「違和感」を「個性」に変え、その個性で多くの人の心をわし摑みにするies designさんの作品たち。私の生活にもマメポは欠かせないものになっています。私のマメポの中には、ふらっと出かけたときに役立つ小銭、いざという時にさっと出したい名刺、会社のセキュリティカードが入っています。

 

ものを入れるだけではありません。ふとした時に白狐と見つめあったり、コンビニであえて他のお客さんに見せびらかしたり、今まで話したことがなかった人との話の種にもなってくれています。私にとっては、もはやポーチ以上の存在です。実は白狐以外にも気になっている子がいるので、近々また購入させていただこうかな…とも企んでいます。

 

そしてクリーマにはies designさんのファンが私以外にも…。購入した時期もデザインもバラバラで、それぞれがies designさんの違和感ある個性に魅了されてしまいました。

(左から:クリーマスタッフ佐野・根津・佐々木)

みなさんも、これを機会にies designさんのギャラリーページをぜひ覗いてみてください。きっと、目を奪われる作品に出会えるはずです。

ies designさんのギャラリーページ

ies designさんは「ハンドメイドインジャパンフェス2019(HMJ)」に出展されます!

今回のHMJには、初めてマメポを作った際のモチーフ「能面」マメポを復活させて持っていくとのこと。ぜひ足を運んでみてください。

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