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作家さんこだわりの素材から知る、作品の新たな魅力

作家さんこだわりの素材から知る、作品の新たな魅力

こんにちは。クリーマ編集部の庄司です。

 

作家さんから作品についてお話を直接お伺いすると、「実はこの作品はこんな素材で作っているんです」と、私たちが思う以上に、素材選びへのこだわりを強く持っていらっしゃることに気づきます。

 

作家さんだからこそ知る、驚くような素材のお話があるはず。そんな思いから、ジャンルの異なる4人の作家さんに、作品の素材について詳しくお話を伺いました。作家さんが考える素材の魅力や素材を加工するときの工夫などを知ると、より一層作品に興味や愛着が湧いてきます。

完成まで2年。過剰な愛とこだわりが作り出した、ステンドグラスを使った革小物

大阪にある古民家をリノベーションした工房で、バッグや革小物などを制作するwaji labo.さん。「現時点での曇りなき傑作」と自信を持って送り出すのが、なんと本物のガラスを使った、ステンドグラスドアデザインのお財布やスマートフォンケースです。

学生時代から伝統芸術を研究テーマにし、アンティークなものに人一倍興味があったというwaji labo.さん。中でもステンドグラスはその見た目の美しさだけでなく、制作当時の国と人の歴史や生活、思想なども感じ取ることができる奥深い芸術品だと、その魅力を語ります。

 

自宅を工房にリノベーションした際には、「工房入り口のドアだけは、どうしても既製品ではなく、オリジナルで作ろう」と、リノベーション予算のほとんどをステンドグラスのドアにかけてしまったというエピソードがあるほど、waji labo.さんのステンドグラスへの思いは熱いもの。

 

そんな経緯もあり、改めてステンドグラスドアが持つ魅力の虜になり「これを身を飾るものに落とし込めないか」という思いが心の中にずっとあったのだそうです。

その思いを形にするために必要だったのが、持ち歩いている間にうっかり落としても割れない、日常使いに耐えうる強度のガラス。アクリルなどを使えば加工は簡単ですが、ステンドグラスの持つあの重厚感を再現するためにガラスを使うことにこだわりました。

 

何社もの硝子メーカーに断られ続ける中、共に挑戦すると手を挙げたのが、CreemaではTomi label TOKYOの名前で活動する老舗硝子メーカー・富硝子株式会社さんでした。自動車のヘッドライトや航空機の防風ガラスなどにも使われる化学強化ガラスは、製造に時間のかかる素材ですが、通常のガラスに比べ5倍の強度を持ちます。

▲ 着色前の化学強化ガラス。

ガラスパーツの質感や色味は、本体の革との相性も重要です。特殊なプリント技術を用いて濃淡の異なる試作品を何パターンも作り、革の質感や色との馴染みや革がエイジングしたときにも美しいかなど吟味を重ね、waji labo.さんが愛するステンドグラスの魅力を再現しました。

▲ 試作を重ねたどり着いた、革の経年変化にも馴染む色味。

もちろん、ガラスができて終わりではありません。ガラスのパーツを革に埋め込むという技法は前例がなく、ここでも何度も試作を重ね失敗を重ねながら、7つのパーツを重ねる方法にたどり着きます。仕立てには、ミシンパーツの改造、革の漉き加工(厚みを削る技術)、そして何より熟練の職人技術があってこそ。

 

「ステンドグラスの美しさを身につけられるものに」というこだわりと、それを実現する技術が詰まった逸品。作家さん自身が "過剰" と言うほどのこだわりがあるからこそ、建物のステンドグラスのようにずっと先の未来まで愛用したくなるのかもしれません。

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時が経っても美しい。天然染料ならではの、柔らかく芯がある色合い

染織作家の谷口亜希子さんは、天然染料にこだわった美しい色合いのストールを中心に制作しています。

もともと国文学を専攻していたときに、装束に興味を持ったのが天然染料との出会い。正倉院に納められている奈良時代の宝物には、茜や藍など様々な天然染料で染められ、いまだに輝くような色を残している生地があります。そんな何百年経っても褪せない美しさに胸が震えるほど感動し、学費を貯めて工芸染織を学んだんだそうです。

谷口亜希子さんにとって天然染料の魅力は、染め重ねたときの色の奥行き、内側から発光するような澄んだ色。もちろん、そのような色を出すには手間も時間もかかります。例えば桜染めは、枝から煮出した染料を2年間寝かせています。時間を置いたほうが透明感のある柔らかな色に染まるのだそう。

▲ 2年寝かせた桜の枝の染料で染めたストール。羽衣のようなシルクの生地感と相まって、桜の儚さそのものを纏っているようです。

天然染料の美しさを身近に感じて欲しいという思いから、選ぶ染料は使いやすさも考え、色落ちしにくく洗濯時もあまり気を使わなくていいものにこだわります。化学染料と比べて日頃のお手入れなどに少し注意が必要な草木染めだからこそ、洗濯や保管時の説明などお客さま一人一人にきめ細かく対応することも心がけているそうです。

▲ 河原や土手で採取する染料も。「季節に追い越されないようにするのは忙しくも楽しいこと」と谷口さん。

何度も何度も染めては水洗いを繰り返す草木染めは、染める生地の丈夫さ、質の良さも大切です。必要なら染め重ねや補修をして、何十年も実用に耐えるように製作しているそう。時が経ってもずっと美しいものを…谷口亜希子さんの草木染めへのこだわりは、染料はもちろん、制作からお取引に至るまでにもにじみ出ていました。

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希少で良質な木材の宝庫。伐採樹木や廃材から生まれる木工雑貨

福岡の街で伐採される樹木や古民家などの廃材を素材にして、名刺入れやボールペンを制作している華茶【廃材木工】さん。廃材は、珍しい樹種や素晴らしい木材の宝庫だと言います。

▲ さば杢と波杢が複雑な模様を描く、槙(まき)の名刺入れ。木材を切り出す箇所や方向、加工、磨きなど様々な工程を経て美しい杢が現れます。

もともとは長年の夢だったという薪ストーブ生活を送る中で、街の伐採樹木や民家の廃材など譲り受けて薪を確保していたそう。燃料として薪を使っていると、その中に不思議な模様や綺麗な色を持つものがあることに気づきます。特に、樹木の中に出来る立体的な模様「杢」の魅力に感動し、これらを使った名刺入れ、ボールペンなどを作り始めます。

廃材として手に入る木材の中には、現代では手に入れるのが難しくなった木材も。

解体した古民家の梁からは、希少な国産の松である地松が。廃業した木工所の廃材からは、昔は屋久杉の代わりに使われた良材、アレルセ(チリ杉)が見つかったことも。アレルセは現在はワシントン条約で伐採・輸入が禁止されている絶滅危惧種の非常に貴重な木材です。

伐採樹木や古民家廃材から出る木材にはそのような珍しいものから経年変化によって良さが生まれたものなど様々な種類があり、確立した加工方法がほとんどないため、ひとつひとつの木材が持つ個性と向き合いながら、華茶【廃材木工】さん独自の方法で制作に取り組んでいます。

▲ 希少な地松を使ったボールペン。木肌が透けて見えているかのような透明感は、まるで琥珀のようです。
▲制作途中。ここから研磨や塗装を重ねて、樹が持つ美しい杢が浮かび上がってきます。杢の美しい模様は表面を鏡のように磨き上げなければ表れてこないので苦労するんだそうです。

「薪になるはずだった伐採樹木や古民家廃材の中に、宝とも呼べる希少な木材があることを知ってほしい」、そんな思いで始めた廃材木工。安定して手に入る素材ではないからこそ、その出会いは一期一会です。気になる作品の木材が過去に何に使われていたのか、想像してみるだけでわくわくします。

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安心できる素材だけで、心の底からリラックスを。小豆ピローの素材たち

仕事で働き詰めになり、心の余裕がなくなってしまった作家さん自身の経験から、「自分自身が本当に安心してくつろげるもの」に興味を持ったという-du bon temps-さん。

キャンドルやアロマなど色々なものを試しながら研究を重ねるうちに、ハンドメイドで身の回りのリラクゼーション雑貨を作るようになり、出来上がった「ほんとうに良いもの」をもっとたくさんの人に届けたい!と、今の活動を始めました。


そんな思いが詰まった「あったか小豆のピローシリーズ」は、中の小豆にも肌に触れる生地にも、心からリラックスするためのこだわりがあります。

まず、北海道の大自然で育てられた国産小豆。

北海道小豆は水分を存分に含み、小豆から出る蒸気でじんわりと疲れや緊張、冷えなどをほぐすアイピローにぴったり。昨年の北海道豪雨では小豆が不作になり価格も2倍以上に高騰しましたが、そのこだわりから仕入れを変更することなく、使い続けている大切な素材です。

肌に直接触れる外側の布地は、リネン1種、オーガニックコットン2種の3種類から、好みの肌触りを選べます。

 

リネンは自身の生まれ故郷・静岡県浜松の職人さんが手作業で洗いざらしにした、リネンの特有のチクチク感をなくした肌触りのよい生地。サラッと気持ちの良い肌触りが特徴です。

 

オーガニックコットンはしなやかな薄手ツイルと少し厚めの起毛ガーゼ生地の2種類で、どちらも世界環境サミットで国連から賞を受けた功績のある「bioRe(ビオリ)」の生地を使用しています。栽培方法だけでなく生地を作る過程でも自然由来にとことんこだわったまさに”本物のオーガニックコットン”は、触れた瞬間に緊張の糸が解けるような心地よさです。

▲ 小豆にブレンドしたドライフラワーの豊かな香りが、より深くリラックスさせてくれそう。

もともとアロマやハーブティーをはじめとしたメディカルハーブの勉強をしていた-du bon temps-さん。香りを楽しめることはもちろん、「自分はどんな安らぎを欲しているのかな?」と考えるきっかけになればと、様々なハーブのバリエーションを増やしてきました。人工香料を使用しないドライフラワーの穏やかな香りはリラックスタイムにぴったりです。

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素材を知るほどに見えてくる、作品の新たな魅力。

理想の作品のために開発したり、素材が持つ魅力を表現したり。その素材にたどり着いた理由は様々ですが、こだわって選ばれている素材はその作品の魅力に欠かせないものでした。お気に入りの作品の素材を深く知ることで、知らなかった魅力が見えてきそうです。

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