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パンティをはかせ続ける男。人知れぬ思いと笑いと丁寧さと - パンティグラス作家・141硝子 石井洋平さん「Creemaの気になる世界」

パンティをはかせ続ける男。人知れぬ思いと笑いと丁寧さと - パンティグラス作家・141硝子 石井洋平さん「Creemaの気になる世界」

こんにちは。クリーマ編集部の川越です。

 

先日スタートした動画企画「Creemaの気になる世界」。ユニークな作品やクリエイターの魅力を「もっと知っていただきたい!」という想いから始まりました。この記事では、作り手さんが登場する「クリエイター編」の動画公開のタイミングに合わせ、動画では1分間にぎゅっと詰め込んだ内容を、より深く詳しくご紹介します。

 

第一弾でご紹介するクリエイターは、141硝子 石井洋平さん。その個性的な作品たちは一度見たら忘れられません。

パンティグラス リボン

(カルピスを入れると白いお肌、ミルクティーを入れると焼けたお肌に早変わり!)

石井さんが14年間大切に作り続けているのは「パンティグラス」。その名の通りパンティをはいたコップです。作品のインパクトと、胸を張って未来を見据えているかのようなシュッとした姿には石井さんのこだわりを感じます。シンプルな形でも、お尻とおへそがあるからしっかりとパンティに見える。それでいてちゃんと可愛い。「どんな方が制作されているんだろう?」とワクワクしながら伺います。インパクトがあるけどどこか愛おしいこの作品の背景には、石井さんの純粋で温かな人知れぬ思いがありました。

 

先日公開した動画では、石井さんがグラスに初めてパンティをはかせた日のことや、パンティにこだわる理由など、気になる話をご紹介しています!

パンティグラス作家 / 141硝子 石井洋平さん「Creemaの気になる世界」〜クリエイター編〜

続いて、動画ではお伝えしきれなかったエピソードや、パンティグラス作りの工程について、当日のインタビューの様子とともにお伝えします。

好きなことを仕事にしたい

―ガラスの世界へ踏み込んだきっかけはなんだったのでしょうか?

就職活動をする時期に、好きなことを趣味にするか仕事にするか考えたんです。そこで人生の大半を占める仕事が好きなことだったらとても幸せじゃないかということで、好きなことを仕事にしました。

 

その中でも作ることはもともと好きで、中高生が「バンドやったらかっこよくない?」という思いに近い感覚で「ガラスってかっこいいな」と思い、この道を選びました。

春の穏やかな日に初めてはかせました。

―なぜガラスにパンティをはかせようと思ったのですか?

大学生の帰り道にバイクに乗っていた時にふと降りてきた言葉がパンティでした。言葉の雰囲気が面白いとか、バカっぽいなとか、笑いになりそうな素材だなと思って。その頃バンド活動をしていたんですが、バイクに乗りながら何度も口に出していたら「お前のパンティ〜」と歌にできるかもと思い”パンティパラダイス”という歌を作りました。それが、僕がパンティについて表現しようとしたきっかけですね。

 

パンティグラスはガラスの学校の卒業制作のために作り始めて、第一号を見たときに“これは絶対に面白いぞ”と感じました。周りの反応も良くて、それから学校でパンティが日常用語に。試行錯誤を繰り返す中で「今日パンティはかせられた?」「パンティどうだった?」と、みんなに声を掛けられるようになったんです。そうやってひとりでに、作品を見た人の笑いのネタになってくれる。いわばパンティの一人歩きですが、それはそれですごくありがたくて嬉しかったです。

“人を笑わせることが好き”という自己表現

―なぜパンティなのでしょうか?

パンティをはかせ続けて14年目になりますが、「なんでパンティなの?」と聞かれ、自分でも「どうして作り続けているんだろう」と考えることがありました。考えた末、自分の中で納得のいく答えは"自己表現"でした。子どもの頃から、イベント事があれば友達と有志で漫才をしたり、文化祭では落語をやってみたり、人を笑わせることが好きでした。今考えると、その気持ちの延長線上にパンティがあったのではないかと思います。 

ガラスの温度とパンティの温度を合わせるため、電気炉の中でパンティを慎重に温めます。

完璧なパンティを追求して

―絶妙なお尻のラインはどう生まれたのですか?

作り始めた頃はサイズも小さくて分厚かったんですよね。自分の技術とともにだんだん細身のパンティも作れるようになって、もう少し丸みがある方がいいなとか、洗いやすいように手が入った方がいいなとか実用性とのバランスを考えながら形が変わっていきました。この14年間ナイフを研ぎ澄ますかのように理想の形を追求してきました。

 

勘違いされることも多いんですが、僕が作りたいのは女性の体ではなくパンティをはいたコップ。おへそやお尻の割れ目があって、丸みがある方がよりパンティらしく見えてきますよね。そういう思いでデザインや制作をしているので、僕は今の可愛らしい形がとても好きです。

パンティとなるガラスを切り出し、断面をダイヤ研磨機で削ります。
ダイヤホイールは2種類。目の粗い方(左)である程度削ってから目の細かい方(右)で整えます。

目標はお客さんからいただく笑い

―イベントへもご出展いただいていますが、反応はいかがですか?

意外と女性のお客さんが食いついてくださることが多いです。イベントへは商売をしに行っているのはもちろんなんですが、僕の場合は売り上げよりも笑いをとりにいくことを重視していますね。イベントに向け毎回喋りを洗練して、足を運んでくださるお客さんをどう笑わすか。以前、大阪の方に「芸人の方ですか?」って聞かれた時はすごく嬉しかったですね。

グラスの口を広げていきます。

“One for one” 一人のために一つの作品を

―クスッと笑える作品の可愛さと石井さんのキャラクターがいいんでしょうね

作風と僕自身とのギャップについてもよく言われます。「こんなに好青年の方が作っているなんて」と。いや、僕が言ったんじゃないですよ、お客さんがね……(笑)

 

"自分が好きなことを仕事にしたい"が始まりなので、僕自身が作りたいと思うもの、好きなものを作りたいなと思っています。実は、屋号名にも想いを込めました。141はイシイ(石井)でもあるんですが、ワンフォーワン(one for one)にもかかっています。一つのために一つ、一人のために一つの作品をというこの言葉は、僕が大事にしている丁寧なものづくりにも繋がっています。その気持ちを忘れないために、1年間悩んでこの屋号に決めました。

石膏にガラスをはめて息を吹き込み、大きさを合わせます。

ーユニークなデザインの発想はどこからくるのでしょうか?

まずは楽しい気持ちになるものにしたいという思いがあります。クラスのマドンナがはいているパンティはどんなだろうとか、スカートが風でふわっとめくれたときに見えるパンティはこんなかな、という小学生の男子がしそうな妄想がアイデアになっています。あとはガラスだったらこんな色味が綺麗だなとか、こんなパンティ見たことないなというデザインですね。

 

僕が初めてはかせたパンティは白地にリボンのデザインで、今でもこれが一番お気に入りです。パンティを想像したときにみんなが思い描くパンティで、デザインも一番パンティらしいですよね。

パンティグラス リボンのトレードマーク、リボンをまとめて作っていきます。飴のようで美味しそう。

個性的だからこそ、より丁寧に

―ものづくりで大切にされていることはなんでしょう?

個性的なデザインなので、好き嫌いが分かれるんですよね…。でも僕は、丁寧に作ることを意識しています。たくさん作りたい思いはあるもののお客さんへは最高のパンティをお届けしたいんです。

 

一番難しい工程はパンティをはかせる瞬間。パンティは型吹きして形を揃えていますが、1個ずつ微妙に厚みが違うので、はかせる前にしっかりチェックして、吹き込むときのガラスの温度や吹き込む強さを調節して同じ形にしています。これが上手くいかないとパンティをはかせられてもガラスが割れてしまったり、電気炉の中で形が変わって溶けたりしてしまいます。そのポイントを見つけるまでは苦労しました。

パンティはサイズを均一にするためガラスを石膏型に吹き込んで作ります。写真は石膏型の制作風景。
もっとも緊張するパンティをはかせる瞬間。パンティから足となる透明のガラスがぽこっと出て可愛い♪

最低限で最高の目標は"とにかく続ける"

―今後の目標はありますか?

ガラスを始めたときから決めていることでもあり永遠の目標が、パンティグラスを作り続けることです。パンティグラスは続ければ続けるほど面白くなっていくと思っています。僕がおじいちゃんになって「今年のパンティはどうしようかな」「何柄がいいかな」って悩んでいる方が面白いし、70歳になったときに「パンティはかせて50年」って言ったら歴史を作ったことになるなと思って。

 

パンティは一言で言ったらノスタルジー。懐かしさを感じたり、純粋に楽しむ無邪気な心が詰まっているなあと思います。パンティを脱がせる男は星の数ほどいるけれど、パンティをはかせる男は僕だけしかいないので。

ガラスを見つめるその眼差しはまさに職人さん。かと思えば「かっこよく撮れてる?」とお茶目な石井さん。

インタビューを終えて

今は貸し工房で制作に励まれている石井さんですが、ゆくゆくは独立した工房を持ちたいと夢を語ってくださいました。ガラスや陶芸だけではなく、広い作業スペースを必要とするクリエーターの中には、自分の工房を持たず活動されている方もいらっしゃいます。石井さんが夢を語る姿を見て、そうしたクリエーターの方々がより作品づくりに専念できるよう、これからも活動を応援したいと思いました。

 

実は、ガラス作家になる前は教師を目指していたという石井さん。「根は真面目なんですけどね」と笑いながら語る言葉の端々に、作風からは想像もできなかった真摯な姿勢や、パンティグラスへの丁寧な思いを感じました。

 

今回のインタビューでは、一生のうちに耳にする「パンティ」という言葉を全て聞いてしまったと思うほど、何十回も「パンティ」という言葉が出てきました。そのくらい石井さんが「パンティ」にかける思いは強いのです。私たちがいつしか忘れてしまった無邪気な心を、大切に胸に秘めた石井さんだからこそたどり着いたパンティグラスには、人を笑顔にしたいという真っ直ぐな思いが詰まっていました。

141硝子 石井洋平さんのギャラリーページ

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