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闇を抱えた脇役たちにスポットライトを。哀愁のある表情がたまらない - 革雑貨作家・nomuoさん「Creemaの気になる世界」

闇を抱えた脇役たちにスポットライトを。哀愁のある表情がたまらない - 革雑貨作家・nomuoさん「Creemaの気になる世界」

こんにちは。クリーマ編集部の川越です。

 

気になる作家さんの魅力を1分間の動画で紹介する「Creemaの気になる世界」クリエイター編。今回、インタビューに伺ったのはnomuoさん。上質な革を使い、食べ物や生き物をモチーフにした作品を制作しています。

 

訪問する際「目印はガタガタの入口です。」と聞いていたので一体どんなお家だろうと思っていたところ、「ガタガタ」は入口にある凹凸のあるタイルのことを指していたようで、なかなかたどり着けませんでした。これは独特の感性をお持ちの方に違いないと、ワクワクしながら初対面を果たすことができました。

 

nomuoさんが作ることをやめられないのは、ちょっとブキミなモチーフ作品。立体的でカラフルな革雑貨にのめり込み、時間も忘れて毎日制作に没頭されています。数百種類あるという作品の中には、まぐろのカマやからすみ、天然記念物のオオサンショウウオなど、「どうしてそれをモチーフに?!」と驚くユニークなものがたくさん。実際に作品と対面してみると、初めて見るそのシュールさと、なんとも言えない表情が魅力的で、nomuoさんにしか生み出せない彼らの虜になってしまうファンが多いのもうなずけます。

 

作品だけではなく、ご本人のキャラクターもユニークなnomuoさん。インタビューは終始笑顔に溢れていました。動画では、笑いが起こったインタビューの名場面や、作品の数々、制作風景をご紹介しています!

革雑貨作家 / nomuoさん「Creemaの気になる世界」〜クリエイター編〜

続いては、nomuoさんの選ぶモチーフに込められた思いや、制作において決めているルールなど、動画ではお伝えしきれなかったエピソードを、当日のインタビューの様子とともに詳しくお伝えします。

悪ノリから今の作風へ

―きっかけはなんだったのでしょうか?

もともと会社員をしていましたし、4コマ漫画も書いていたんです。そんなとき、母が大阪で刺繍作品を販売するお店を始めることとなりました。十数年前のことです。

 

私は当時会社勤めをしていましたが、働きながらお店のオープンを手伝うことになりました。そこで母の持っていた布で立体作品を見よう見まねで作ってみたんです。母は主に刺繍やバッグ、ポーチなどを作っていましたが、私は誰もやっていないことをやろうと、立体作品の制作を始めました。母は気持ち悪いと嫌がっていましたが、お店や手作り市などで販売してみたら割と反応が良くて、だんだん悪ノリして気づけば今の作風になっていました。

どこか斜に構えたような表情がたまらない。ファンを虜にする生き物たち

―nomuoさんの作品には哀愁を感じますが、どのような思いがあるのでしょうか?

そうですね、ちょっと気持ち悪い感じですよね。皆さんどこか心に闇があるのではと思っているのですが、作っているとどうしても私の後ろ暗い感じが出てしまうんですね。万人受けするようなかわいらしい感じの作品を作ろうという意識はなくて、どこかしら斜に構えて世の中を見ているような物悲しい表情にしていますね。目つきが悪いってよく言われるんですけど、でもそこがたまらないって。

 

普段スポットライトが当たらないような深海の生き物や、パッと首を落とされて無造作に置かれるまぐろのカマとか、注目されにくい派手さのない生き物たち。けれど彼らは一生懸命に生きていて、私はその頑張っている感じがすごく好きなんです。もっと広い心で多様性を大切にできたらという思いを作品に込めたいという気持ちがあるのかもしれませんね。

 

皆さんかわいいものもお好きやけど、それと対極にあるものにも興味があるのかもしれないなあと感じます。以前、イルカのオーダーをいただいたことがありまして、イルカってみんなから愛される太陽のような存在じゃないですか。電柱の陰に佇んでいるという設定で作ったんですけど、私の気持ちが入りきらなかったみたいで、すっごい気味の悪いものができたんです。完成した作品をお渡ししたら、ずいぶん驚かれましたよ。(笑)

作りたいものを最高の品質で作るためにたどり着いた、独自のルール

―他のクリエイターの方と違うところはどこだと感じていますか?

財布やバッグを作っておられる他の革作家さんには「何してんのー」ってよく驚かれますね。工程一つとっても、革に目打ちをしてから縫うのが基本なんですけど、私の場合は布を縫う感覚で革に穴も開けず直接縫っているんです。ルールを完全に無視したかなり特殊なやり方なので、同じことをされている方は見たことないですね。これは、私が形にしたい立体のモチーフ作品をどうしたらきれいに作れるか考えて工夫してたどり着いた方法なので、道具や素材にはかなりこだわっているんですよ。

 

道具は針、糸、ハサミ、指ぬき。革の抵抗を少なくするため細い針で、糸は革専用のものではなくハンドキルト用のよく滑る糸を使っています。木綿や麻などの天然素材は革の脂分を吸って、縫い目から劣化してきてしまうらしいので、革の脂分を吸いにくいポリエステル製の素材にしています。ハサミは1本700円くらいのものですぐに切れ味が悪くなるので1年で6本ほど買い換えて、切れ味の落ちたハサミはマンションの管理人さんにどんどんあげています。指ぬきは市販のものでは間に合わず、自分で作った5枚重ねの分厚い革の指ぬきを使っています。

 

素材のこだわりはやっぱり革ですね。布感覚で使えるすごく柔らかい牛革を使っています。独自のレシピを持っているお店なんですけど、ここまで薄くて柔らかい革は見たことないので買い占めるように通ってますね。

布を縫うような感覚で手際よく作業を進めるnomuoさんですが、穴を開けずに革を縫うのはとても力がいる作業なんです。なんとnomuoさんの握力は50kgあるんだとか。
まだ頭がついていないレスラーくん。これから一番楽しみな作業、完成はもうすぐです!

聞けば聞くほど面白い。物悲しいような脇役たちを人気者に

―モチーフについて教えてください

ちょっと暗いような、人気者じゃないものが好きですね。良し悪しはともかく立体になる瞬間がすごく楽しいんです。今では作品も200種類ほどまで増えました。調味料界で一番好きな醤油も作りましたし、からすみや明太子の珍味や食材系、加工食品も好きでモチーフは食べ物が結構多いですね。お客さまからいただいたオーダーから見事レギュラー入り昇格していく子たちもいますが、基本的には私の好きなものを作っています。特に、からすみが大好きで。

■まぐろカマ

nomuoさんの自信作というまぐろのカマ。解体ショーを見学していたときに「これいけんなあ」と思いつき制作に至りました。口にはペンや携帯を立てることができ、下からは充電コードも通せる、何とも便利なまぐろさん。実際に作るまで完成のイメージがつかなかったそうですが、いざ出来上がってみるとなんとも良い顔。まぐろのツヤっとした肌が革でしっかり表現されています。

■タカアシガニ ゆで

深海に生息しているというタカアシガニ。nomuoさん曰く食べても美味しくはないそうで、こちらももとはお客さまのオーダーから生まれた作品です。普通のカニでも面白くないということで「いっそのこと大きく」と巨大に仕上がりました。ちなみにカニは茹でられているので死んでいますがおかげでとってもいい色。

■アンコウのクラッチバッグ

「実はこのまま持ち歩いていただきたいんですけど、なかなか皆さん抵抗あるみたいで……」とnomuoさんも困り果てているのがアンコウのクラッチバッグ。作り始めた頃は、財布と携帯とハンケチが入るパーティバッグにしようと構想していたそうですが、今やクッションや抱き枕として人気者になっています。

■レスラーくん

とっても手間のかかるのが、かわいらしいレスラーくん。16ものパーツに分かれているので、一つずつを繋げて出来上がる瞬間には「よっしゃあ」という感情がこみ上げます。あるイベントで好きな色の糸で胸毛をつけるというサービスをしたときには、胸毛をつけてほしい人で行列ができたそうで、今では伝説になっているんだとか。

持たせたいのは一抹の高級感

―制作において大切にされていることはありますか?

中に入れる綿が飛び出ないようにという当たり前のことから、作品が面白い分、一抹の高級感を出したいなと思っています。デザインの好き嫌いとは別に縫い目がピシッと整っていた方が美しいですし、雑だと安っぽいものになってしまいます。作りの部分だけはしっかりさせて信用していただけるような作品にしないと、という意識を持っています。今後はもっと自分の表現したいことを細かいディティールで形にしていく力をつけて、今以上に「おっ」と思っていただけるような作品を目指していきたいです。

さすが元漫画家さんだけあってイラストも字も味があってお上手。スイスイ書きあげていきます。タグも手書きなんて、嬉しいですね。

やめられないのは作ること

―やめられないという言葉が何度も出てきますが、なぜそんなに夢中になれるのでしょうか?

とにかく作るのが楽しいんです。朝起きてある程度家事を済ませたらテーブルに向かって10時間作り、飲み屋さんから帰ってきたらまた3時間くらい作って。本当にやめどきが難しいほど、ずっと作り続けていますね。あとは私、立体のカラーのものが好きなんですよ。今考えれば漫画は白黒の平面なので向いていなかったのかもしれないなと。

 

長年制作していると嬉しい出会いもあって。数年前になりますが、デパートへの出展をしていたときに60代くらいの男性の方が、すごく古いペンケースを見せながら「nomuoさんですか?」って声をかけてくださりました。それは男性の娘さまがご両親の結婚記念日にとそれぞれへプレゼントしたものだったらしいんですけど、サングラスポーチとして形が変わるくらい愛用してくださっているのが分かってとても嬉しかったです。

インタビューを終えて

とても気さくでどんなことも楽しそうにお話をされる姿が印象的だったnomuoさん。自分を一言で表すと「天邪鬼」とおっしゃったように、他の人が良いと言っているものとは逆の方向を見ていたい、という思いが今の作風にたどり着く原点だったのかもしれません。

 

nomuoさんのおっしゃっていた「誰もが持つ心の闇」があるとするなら、ブキミな作品たちはその闇を無理に晴らすでもなく、優しく寄り添うでもなく、何も言わずただそこに静かに佇んでくれています。

 

そして、私のデスクにも明太子兄弟を置かせていただいています。何を考えているのやらじっとどこかを見つめ、残念ながら未だに目があったことは一度もありませんが、この素っ気ない感じがいいのです。そんな子たちでもかわいいと思えてしまうのはきっと、nomuoさんの作品への愛情が綿のように所狭しとたっぷり詰まっているからなのでしょう。

 

次はどんなクセのある子が生み出されるのか、これからも目が離せません。

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