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「今、私が会いたい人」ガラスの魅力と可能性を、最大限に。 - ステンドグラス作家・Studio Glass-Ivyさん

「今、私が会いたい人」ガラスの魅力と可能性を、最大限に。 - ステンドグラス作家・Studio Glass-Ivyさん

私がまだクリーマに入社する前の去年の冬の休日のこと。

いつものようにCreemaで作品をみることを楽しんでいた時、ある作品に目を惹きつけられました。

それはStudio Glass-Ivyさんの、ステンドグラスで作られた、繊細かつ優しい雰囲気を併せ持つ立体作品です。

みなさんは「ステンドグラス」と聞いたとき、どんなものをイメージしますか?

教会や歴史的な建物の壁を飾る、大きく荘厳なパネル作品をイメージしていた私は、Studio Glass-Ivyさんの作品を見た瞬間、手のひらの中に収まるステンドグラスが醸し出す優しさと、不思議なあたたかさ・懐かしさに一目惚れ。同時に、全く想像のつかない制作工程について知りたい、という気持ちが膨らんだのです。

 

そんな気持ちを胸に秘めて約1年、気づけばクリーマに入社していた私。今回、インタビューと制作工程を見せていただくことにご快諾いただき、念願かなってStudio Glass-Ivyさんのもとへと伺ってきました!

ご自宅のいろんなところにステンドグラス作品が!実はグリーンとガラスは相性ぴったり。

《制作工程編》あの人気作品ができるまで。

クリスマス前の特にお忙しい時期にもかかわらず、明るい笑顔で出迎えてくれた岸江さんと、マネジメントをご担当されている小林さん。

さっそく工房にご案内いただき、Creemaでもずっと大人気のハウス・ツリー作品のハウスを例に、実際の制作風景を見せてもらいました。

まずは、作品に必要なパーツを、ガラスカッターで切り出していきます。

上記の写真でカットしているのは、家の扉となる部分。今回は直線ですが、カーブや複雑なラインを切り出す際は、クリアファイルを型紙としてカッターを当てるのだそう。

 

しっかりガラスカッターを当てた後、手でガラスを折ります。「ぱきっ」と小気味よい音が響き、一見簡単そうにも見えるのですが、実はこのカットの工程は、立体作品を作る上では一番と言っても過言ではないくらい「肝」の作業。正確に切り出すことで、のちに立体へと組み立てるときによりスムーズに美しく仕上がるのだそうです。

一つ一つのパーツを丁寧にチェックし、ガラスのふちの部分に、ぎざぎざとしたケバがある場合は、ルーターという機械を使ってなめらかにします。

続いて、ガラスのパーツのふちにコパーテープ(=シール状になった、銅箔のテープ)を巻いていきます。ガラスの厚みより少しだけ太い幅のテープを巻き、はみ出た分を折り返してガラスをくるむのですが、実際に体験してみると、はみ出す部分が均等になるように巻くのは至難の業。

岸江さんは、工程を説明しながら、くるくると手際よく巻いていきます。

これがコパーテープを巻き終わったところ。ガラスのパーツだったのが、「家のパーツ」になってきたのが分かります。きらきら、きちんとした佇まいで、この時点で既に可愛い……!

 

このコパーテープを使った製法は「ティファニー方式」と呼ばれており、世界的ジュエリーブランド・ティファニーの創業者の息子が発明した方法。繊細で自由度の高いデザインが可能だと言われているそうです。

いよいよはんだ付けの工程に移ります。「はんだごて」を見るのは小学校での授業以来で、どきどき。

はんだと巻いたコパーテープの仲介役となる松ヤニを筆で塗った後、まずは仮止めとしてはんだを点で付けていきます。

点が固まったら、はんだごてを点に当て、すっと伸ばすようにしてコパーテープに沿って広げていきます。

銀色の液体のようなはんだが、するする伸びていき、ぴたっと固まる様は、まるで魔法のよう。岸江さんのスピーディーな手元から目が離せません。

 

実際にはんだ付けの作業をしてみると、動かし方に迷っているうちにはんだが固まり、伸ばしてもなかなか均等に滑らかにならず、最初から最後まで大苦戦……。岸江さんいわく、教えるのも難しい工程だそう。

岸江さんの熟練された素早く正確な動きは、どれだけの経験に裏打ちされたものなのか、その凄さを目の当たりにして食い入るように見入ってしまいました。

作業は、家の立ち上げへ。正確に垂直に立てて、仮止めをします。

組み立ての順番によっても、作業のしやすさが大きく変わってきます。この順番についても、作品を作り続けていく中で、一番スムーズな順番を見つけていきます。

無事、家のかたちに立ち上がったら、ガラスとガラスの間の溝を埋めるようにしてはんだ付けしていきます。ちょうどいい長さにしたはんだを溝に置き、はんだごてを当て滑らかに伸ばします。可愛らしさが出るよう、少しぷっくりとするように調節しながら伸ばす様子は、まさに職人技。

家の屋根にクロスを付けます。なんとこのクロスも、一つ一つ針金で型を作り、はんだで仕上げています。細かいところまで妥協しない作品作りへの姿勢が垣間見えます。

仕上げに銀色のはんだ部分を薬品で拭き上げると、すぐに黒く酸化し、アンティーク風に!

シルバーのままだとふんわりとした雰囲気に、黒くすると全体が引き締まるのでガラスの柔らかい色がより映える仕上がりとなります。

その後、全体を優しく洗浄すると……

完成! わーい!

 

作品画像を何度も何度もみていた私でさえ、予想を上回る作業工程の多さと、岸江さんが実際に丁寧に作っている様子を見たあとでは、作品への愛おしさが倍増。気が付いたら撫でていました。

 

上記でご紹介した工程は、あくまでも作業工程。ここに至るまでにデザインをしたり、ガラスを選んだり、組み立ての順番を考えたり……と、まだまだご紹介しきれないほどたくさんの準備があります。

そのどの工程にも真摯に向き合い、妥協をせずに作品を作り続けている岸江さん。ステンドグラスとの出会いやガラスならではの魅力、20代のときに抱いた悩み、作品作りで喜びを感じるとき等々、ここからは当日のインタビューの様子をお伝えいたします。

《インタビュー編》「ガラスの可能性を広げたい」その思いに至るまで。

ー 最初に、岸江さんとステンドグラスとの出会いを教えていただけますか?

私は当時、アメリカの二年制カレッジに在学していました。卒業後、四年制の美術系の大学に進学しようかどうしようかと考えていた頃、日本で工房をやっていた叔母から「工房でアシスタントをしてみない?」と声がかかりました。ちょうどビザの関係で日本に帰国するタイミングだったこともあり、そのまま工房で、アシスタントとしてステンドグラスのデザインや技術の勉強を始めました。

 

工房を手伝い始めてからの3年間は、たくさん作ることを通して、みっちり技術を学びました。その頃はもう、生活の全てがステンドグラスで、夜中までかかることも頻繁にありましたね。

ー そのあと工房から独立されたのは、どういうきっかけだったのですか?

きっかけ自体は、工房の移転や結婚のタイミングが重なったことですね。でも、ステンドグラス作家として独立はしてみたものの、実は20代の頃は「自分は何が作りたいのか」「自分は何が好きなのか」、分からなくなってしまって……。技術は身につけていましたが、デザインの方向性で迷子になってしまったんです。

 

旅行やダイビングなど、自然と触れ合う機会が多かったのですが、美しい自然を目の当たりにすると「ステンドグラスで表現できるものって、意外と少ないのかも」と落ち込んでしまうこともありましたね。20代の頃は、そんな風に模索していた時期でした。

ー そうした悩みから抜け出せたのは、いつ頃でしたか。

その間も、ずっとステンドグラス教室で教えていたのですが、作品を作る生徒さんが喜んでくださるのがすごく嬉しく、楽しかったんです。「次はこんなものを作りましょう」と言ったときに「わぁ、素敵!」という声が上がったり、作品に対する生の声や反応をいただけたのは本当にありがたかったです。そうした中で、教室で生徒さんと一緒に作る小物系のデザインや造形をすることが、どんどん楽しくなっていくのに気が付きました。

私が教える教室ではキットを使うため、その日のうちに持って帰れます。すると、完成して生徒さんが喜んでいる姿まで見られるので、こちらまで充実した気持ちになれますね。

 

ガラスでの表現には、制限があって出来ないことも多いんですが、作り続けていく中でふと「やっぱりガラスって綺麗だな」「この美しさを最大限引き出すにはどうしたらいいんだろう?」と、これまでとは逆方向から考えるようになりました。

ー 制限があるからこそ、引き出すためのデザインが重要になってくるのですね。岸江さんが考える「ガラスの魅力」とは何でしょうか。

ガラスそのものだけで完成するのではなく、周りにあるものや、光の差し方によって、様々な表情を見せてくれるんです。ガラスは一見、無機質なものに見えますが、植物などの有機的なものとの相性がいいのも面白いですよね。それはきっと、お互いを引き立てあってるということなのかもしれません。

周りに溶け込み、周りを映し込み、たくさんの表情を見せてくれる。それはガラスならではの魅力だと思います。

自然光やグリーンにも映える、ハンギング作品。ナチュラルな印象のマクラメとも相性ばっちり。

ー たしかに置く場所によって色や雰囲気が変わるのはステンドグラス小物ならではの楽しみだと思いました。制作工程で特に注力しているのはどういう所でしょうか?

特にデザインにおいては、絶対に妥協しません。立体作品は実際に作ってみないと分からないことが多々あるので、サンプルを作ってみると「何かが違う」ということがよくあります。そういったものは形としては出来上がっていても、作品として完成しているわけではないので、そのままにはしません。ちょっとしたことで生まれてしまっている違和感に気づいて「うん、これだ!」と思うところまで、何度も何度も直します。

 

作品によってはなかなか原因が分からないこともあるのですが、そういうときは、ちらっと目に付く場所に置いておきます。ふと1年くらい経ったときに「この角度がちょっと違うのかな」と思ったり、「もしかして、モチーフの本質的な魅力を分かってないから、うまくデフォルメできなかったのかも」と気付いたこともあります。気付くまで妥協しないから、今でも原因が分からないまま置いてある作品もあるくらいです(笑)

ー 特に造形に苦心された作品はありますか?

完成するまでに時間がかかったのは「鳩の風鈴」ですね。

最初は教室の生徒さん向けのキットとして作った作品なのですが、最初の頃は、形こそ今と変わりませんが、風鈴とは呼べないようなものでした。音色棒も自分で作ったのですが、風が吹いても間隔が広くて当たらず鳴らなかったり、ひもの素材によっては絡まってしまったり、今の形に収まるまでは、ひとつひとつ試行錯誤を繰り返しました。実際に作って使ってみて、初めて気が付くことも多いんです。

細部まで苦心されたという「鳩の風鈴」。

ー 作品作りをされていて嬉しい瞬間は、どんな時ですか?

仕上がった瞬間は、確かにすごく嬉しいんです。でも、それはまだ私だけの感覚。外に出してみて初めて、お客様や(教室で教えている)生徒さんの声が聞こえて「よかった!」と安心することができます。それまではどこかで「どうかな、大丈夫かな」と心配しているので、生の声をいただける瞬間は、とても嬉しくほっとしますね。

 

一人で作品を作ってどこかで飾らせてもらっている時は、なかなかそうした声が届かないから、作品がどう受け止められているのかが分からないんです。教室や、Creemaで買ってくださったお客様から反応をいただけるのはとても嬉しいです。

ー これからの目標についても、お聞かせいただけますか。

繰り返しとなりますが、ガラスって、制限のある素材なんです。だからこそ、ガラスを使って自由にいろんなものを創ることによって、ステンドグラスにできることを広げていきたいなと考えています。きっとまだまだ、いろんな表現が出来ると思います。異素材を使ってみたり、他のものと組み合わせることで完成したり……そんな風にして、ガラスの可能性をもっと広げていきたいです。

 

私も昔は「ガラスでは決まったものしか作れない」と思っていたこともありましたが、そんなことはありません。私の作品をみた方に「こういう表現もできるんだ!」とガラスの魅力を感じていただけたら、とても嬉しいです。

インタビューを終えて

私があの日、Studio Glass-Ivyさんの作品を見掛けて「素敵!」と思った気持ち。

それは偶然ではなく、岸江さんが何度も試行錯誤を繰り返した結果の出会いだったのだと、取材を終えて気が付きました。ステンドグラスの魅力を引き出す妥協のないデザインの背景には、素材ならではの制限に悩んだ経験があったというお話が、今も心に残っています。

 

作品はもちろんですが、終始笑顔で作品への思いを語ってくださった岸江さんのファンにもなってしまいました。こうした出会いを嬉しく思うのと同時に、クリエイターや作品の物語を知ると、作品への思い入れがもっともっと高まることを、改めて実感しました。

同じようにしてStudio Glass-Ivyさんの作品に惹かれた方に、この記事でご紹介した制作工程やインタビュー内容を楽しんでいただき、作品を愛おしく思っていただけたら、とても幸せです。

 

ステンドグラスの魅力と可能性を広げる、Studio Glass-Ivyさん。

そのデザインで創られる世界と、日常との融合を、ぜひ楽しんでみてください。

Studio Glass-Ivyさんのギャラリーページ

《番外編》初めてのステンドグラス体験

インタビュー後、なんと実際にステンドグラス作品作りの体験をさせていただけることに!

今回は、ツリーの形をしたオーナメントを作る工程を体験しました。

あらかじめカットされたガラスにコパーテープを巻いて、さっそくはんだ付け。手が動かず、最初はなかなかはんだが言うことを聞いてくれません。でも、はんだが落ちる瞬間や、伸びていくときの不思議な動きが本当に面白くて、すぐ夢中になりました。

コパーテープ巻き。はみ出す幅を一定に保つのは至難の業。岸江さんにも(たくさん)助けていただき、最終的には綺麗に巻けました!
岸江さんの手元を思い出して頑張るものの、まだはんだと意思疎通ができない……。理科の実験のような面白さ。

岸江さんの手厚いサポートのもと、なんとかはんだ付けが完了。

仕上げに、表面を綺麗に洗うと……

完成! 素敵なオーナメントができました!

最初は「ちゃんと完成できるかな……」とどきどきしながら作っていましたが、形になった姿を見ると「えっ!すごい」と思わず自画自賛。さっそく我が家の窓辺できらきらと輝いてくれています。朝に光が差し込むと、本当に綺麗。

夢中になっているとあっという間の時間でしたが、絶対にまた挑戦してみたいと決意を固めました。

 

岸江さん、素敵な体験を本当にありがとうございました!

(左:クリーマ 森永、右:Studio Glass-Ivy 岸江さん)

これまでの作り手インタビューはこちら

クリーマスタッフが「会いたい!」「お話したい!」作家さんにインタビューをするシリーズ企画。作家さんのものづくりへの思いはもちろん、スタッフと作家さんの間に流れるほのぼのとした空気感や、スタッフが思い思いに紡ぎ出す作家さんへの愛をお楽しみください。

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