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「ただ、ひたすら、ものづくり。」100個以上の小さな吸盤も手作業で表現。耐熱ガラスにしかできないことを|ガラス職人 アトリエ芳さん

「ただ、ひたすら、ものづくり。」100個以上の小さな吸盤も手作業で表現。耐熱ガラスにしかできないことを|ガラス職人 アトリエ芳さん

光を受けてキラキラと輝くガラスに惹かれるのは、その姿に水の煌めきを重ねているからかもしれません。美しい輝きを見ていると、心が洗われるような気持ちになります。

こちらの耐熱ガラスでできたサンキャッチャー。ガラス玉の中に、イカなどの海の生き物が閉じ込められた珍しいデザインです。生き物たちはガラス玉の中で生き生きと泳いでいて、まるで小さな海のよう。光にかざして、角度を変えて、ずっと眺めていたい。宝物のような作品です。熱を当てた際に柔らかくなりすぎない耐熱ガラスは、繊細で自由度の高い加工が可能。また透明度の高さも魅力で、それを活かした表現をすることができるのが魅力です。

 

今回は、そんな耐熱ガラスでの作品作りにこだわり、幻想的な作品を制作するガラス職人アトリエ芳さんを訪ねました。まずはそんなサンキャッチャーの制作模様をご覧ください。

耐熱ガラスにしかできないことを | アトリエ芳【ただ、ひたすら、ものづくり。】

繊細ながらもスピード感がある作業から目が離せません。高温の炎を常に当てながら、ガラスの形を自由自在に変えていきます。

▲まずはイカの胴体部分を作ります。少しずつねじりながら、足側と頭側の境目を作っていきます。
▲こちらはイカの吸盤の部分をつける作業中。色ガラスを熱しながら、ペンで少しずつ点をつけるように模様をつけていきます。

耐熱ガラスでは、棒状のガラスから形を作っていきます。ガラス棒を膨らましたり、伸ばしたり。ガラスが固まるまでの短い時間で、理想の形に近づけていきます。

▲出来上がった胴体部分を、空洞を作ったガラスの中に入れて接合します。これがイカの頭部になります。
▲次はイカの足をつけていきます。あらかじめ熱して歪ませておいたガラス棒を使って、一本一本足の形へと成形します。

本物のイカは2本の長い触腕と、8本の短い足がついているそうですが、リアルさよりもイカの美しさを追求したアトリエ芳さんは、10本とも長い足をつけているそう。ガラスの中に入ったときに、一番美しく見える形を研究した結果なです。

▲足の吸盤も一つひとつ手作業で付けていきます。これでサンキャッチャーの中に入るイカが完成!
▲大きなガラスの筒にイカを入れて、入り口部分を熱して閉じ込めていきます。

ガラスを熱すると「びよーん」と一気に伸びる姿がまるで飴細工のよう。柔らかく自由自在に形を変える様子は、なんだかずっと見ていられます。

▲イカの場所を調整しながら、丸く成形します。

より躍動感が出るように、イカをあえてガラスの真ん中に置かず、ガラスに張り付いているように設置ているのがこだわり。見る角度によってもイカが表情を変えるので、それを楽しんで欲しいという思いも込めています。

耐熱ガラスならではの表現を追求して

「耐熱ガラスでしかできないこと追求して作品作りを続けている」というアトリエ芳さん。ガラスの作品作りに至ったきっかけは、新婚旅行で訪れたドイツでの、とある出会いでした。

 

たまたま入ったガラスの町のお土産屋さんで見つけたのは、中に金平糖のようなものが入った大きなガラス玉。「これはどうやって作るんだろう!」と衝撃を受けたのだそう。その一目惚れをきっかけに一念発起。一度日本に戻って語学の勉強をしたあと、なんとそのドイツの町にあったガラス学校へ入学し、3年間技術を学んだのだそう。運命を感じさせるようなお話です。

吹きガラスの経験もあるアトリエ芳さんですが、現在は耐熱ガラスならではの加工にこだわって制作しています。吹きガラスに比べ、熱を当てた際に柔らかくなりすぎない耐熱ガラスは、繊細で自由度の高い加工が可能。また透明度の高さも魅力で、それを活かした表現をすることができるのが魅力です。そんな耐熱ガラスの方が自分には合っていると感じたのだとか。ドイツで出会ったガラス玉の中にガラス細工を閉じ込めたデザインも、研究しながら長年かけて自分なりの形を作っていきました。

 

そうして出来上がったのが、このサンキャッチャー。より美しい形になるよう研究しているうちに人気を集め、お客さんから「あれを入れて欲しい」というリクエストが来るようになりました。

 

色々と試していく中で「ーーイカを入れてみたら面白いんじゃない?」と思ったのだとか。「イカ」に発想が至ったのには理由があります。趣味でダイビングをすることもあるアトリエ芳さんは、食卓に出てくる時とは違う、海の中にいる表情豊かなイカの美しさを表現できないか、常々考えていたそうです。ツヤッとして角度によって色を変える体表や、躍動感のあるそれぞれの足の動き。そうした細かな質感や動きは、耐熱ガラスだからこそ、表現度高く実現することができるものでした。ドイツで培った耐熱ガラスの技術によって表現された繊細な加工によって、まるで命が吹き込まれた本物のイカのようにサンキャッチャーを生き生きと魅せてくれています。

アトリエ芳さんはサンキャッチャーのほかに、アクセサリーやインテリアも制作されています。中でも最近はランプシェードの制作に熱がこもります。銀の粉が吹き付けられていることで、明かりを灯すとほんのり青く輝く『あけぼの月光』という名がつけられたガラスのランプは、宇宙を感じさせるような幻想的な雰囲気です。明るい場所と暗い場所とで全く表情が違うその姿に、お客さんも驚く作品です。

これからは、普段使いできるインテリアやアクセサリーだけでなく、よりアーティスティックな作品にも挑戦したいというアトリエ芳さん。

耐熱ガラスの可能性を広げるような、新しい作品に期待です!

これまでの作り手インタビューはこちら

(特集)光の色を楽しむ、透き通るガラスの作品たち

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