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「ここでつくる。」〈奈良県奥大和〉生きる吉野材と温かい人々と、家具づくりに打ち込む日々。

2022.12.19
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「ここでつくる。」〈奈良県奥大和〉生きる吉野材と温かい人々と、家具づくりに打ち込む日々。

「好きな場所で、好きなものづくりに打ち込みたい」と考えたことはないでしょうか。

 

”いつかは”  ”ゆくゆくは” と漠然と考えていたその想いを叶えるために、ものづくりに最適な場所を追い求め、ものづくりに打ち込む毎日を歩み始めたクリエイターに出会いました。

 

なぜ、その地を移住先として選んだのか。

移住したあと、どのような暮らしが待っていて、どのような変化があったか。

 

「ここでつくる。」と決め、一歩を踏み出し、その想いが叶ったクリエイターのストーリーです。

豊かな自然、伝統ある手仕事が根付く奈良県奥大和地域

ここは奈良県奥大和地域。

「奥大和地域」とは、奈良県のなかでも山間地帯の南部から高原地帯の東部に連なる19市町村のことを呼びます。

 

奈良県の七割強の広さを占める地域でありながら、都市部に比べて人口が集中していないため、とても贅沢に土地を使える環境。作業用の大きな机を置くことに困らない広い住まいや、アトリエ、工房を構えることも夢ではないな...... と、そんなイメージがどんどん膨らみます。

▲ 川上村の風景。民家の裏にはすぐに山があり、吉野材が広がります。
▲ 川上村のとある縁側から眺める景色

雄大な山々のパノラマに圧倒されつつ、木々がさらさら揺れる音や、ときどき聞こえる動物たちの鳴き声は、大自然のオーケストラといっても過言ではなく、ゆったり流れる時間と澄んだ空気を感じられる地域です。

▲ 紅葉も見事な奥大和の山々

最高品質と呼ばれる「吉野杉」や「吉野檜」の産地としても知られ、木工作家をはじめとしたクリエイターが集まる地域として変化しつつあり、古くからの教えと新しい技術が上手に混ざり合い、ものづくりをするためにも最適な環境が整っています。

大阪府から奈良県奥大和に移住した、「堂谷木工製作所」堂谷孤空さん

 

京都府ご出身の堂谷さんは、ご家族のお仕事のご都合で愛媛県で学生時代を過ごし、本屋へ就職。その後、大阪府に住まいを移して長年本屋で働いていました。

 

お仕事は楽しく充実していましたが、このままでいいのか、というもやもやした感情と、以前から挑戦してみたかった「ものづくりの仕事に就きたい」という想いから、岐阜県高山市の木工学校に入り、ゼロから木工を技術の習得をしました。

学校を出て、木工作家の下で修行を積み、2017年に独立。

 

「木工の学校に在籍しているときから、高山市内の家具メーカーへ就職する選択肢はありましたが、私は目もくれずひたすら独立を夢見ていました。本屋にいたとき、誰かの著作物を販売するということを毎日していたのですが、自分の価値を自分で販売するって素敵だなぁ、と思っていたのが大きな理由です。

木工作家の下で働いてお金と経験を蓄積させ、足らない分を借金して機械と道具を揃えて独立しました」

川上村の人々の協力を得て出会った、ものづくりに最適な工房と住まい

▲ 奥大和(川上村)にある堂谷さんの工房。

現在、堂谷さんの工房は奥大和の川上村にあります。工房の背景にはすらっと伸びた吉野材が美しく、山々に包まれた工房です。夜になると、人の声より鹿の鳴き声がよく聞えるような静かな環境で、日中工房へ伺った際には、凛とした空気の中で堂谷さんが制作する音が心地よく聞えてきました。

▲ 堂谷さんの工房。背景には吉野杉が綺麗に並びます。

「はじめは大阪で開業したものの、狭い工場の中で作る限界を痛切に感じました。

大きな仕事の依頼を受けても断らざるを得ないこともあり、自然素材のものを使ってものづくりしているのに、全く自然を感じられない空間で日々自分の仕事だけ黙々とやり続けることで疲弊してしまいました。

 

そんな折、高山の木工の学校でも先輩であった平井健太さん(Studio JIG)のいる奥大和へ遊びに来た際に、川上村を紹介してもらいました。その後数か月、平井さんの工房でお手伝いさせていただきながら、村のことをいろいろ教えてもらったのが移住のきっかけです」

いよいよ、奥大和でのものづくりがスタート

独立をして5年後。2022年春に大阪府から奈良県川上村へ移住し、奥大和でのものづくりがスタートしました。

“移住”と聞くと、暮らしや生活、仕事の環境、と思い浮かぶ不安も少なくはありません。堂谷さんの場合、移住後と移住前で奥大和(川上村)の暮らしで、ギャップはなかったのでしょうか。

 

「良い意味でイメージと違っていたことがあります。それは、移住者にとても協力的であり、人が親切で温かいんです。

都会から地方に移住するにあたっていちばんの不安は、地元の人たちに受け入れてもらえるか、でした。3年~5年は時間がかかると思いましたが、ここに拠点を据えた際、周囲の方々が非常に好意的だったことが逆に驚きでした」

▲ 川上村の先輩移住作家、Studio JIG・平井さん
▲ 同じく川上村で家具作家として活動する、エンローダ・関谷さん

地元の方がとても親切な印象を受ける奥大和(川上村)。コミュニティーに馴染むために自ら意識していることはあるのでしょうか。

   

「木についてはみんなが先生、というぐらい、木についての知識と経験、歴史があります。その地で木を使ってものづくりをしたいという者に対して、あっという間にいろんな人が訪ねてくださるようになりました。

また、家の向かいに喫茶店がありますが、そこのおばちゃんにもお店のお客さんにもよく声をかけてもらっています。地元の行事や役割には積極的に参加し、顔を覚えてもらって、どういう人間かを知ってもらうようにしています」

自然の雄大さを体感できる、奥大和でのものづくり

▲ 上空から望む川上村。霧深く幻想的な世界が広がります。

「ものづくりをする上での問題点は、この土地が多雨地域であり、年中多湿であることがあります。木は湿度によって反りや伸縮が出るため、梅雨時などは木が膨らんでかなり苦労します。

家具を買ってくださるご家庭ではだいたいエアコンが使用されています。ここで作ってお客さまの環境で使っていただくときに、乾燥で反ったり縮んで隙間が大きくなったりしますので、それを前提で作らないといけない。木工屋としての悩みは、とにかく湿度です。」

▲ 工房にずらりと並ぶ香り高い吉野材の一部と柔らかい木くず

移住を検討している作り手とお話していると、移住後も作家として食べていけるか? など暮らしや作家としての変化に興味を持っていることが多いよう。移住後の変化は、具体的にどのようなものだったのでしょうか。

 

「こちらに来ると、何かと困りごとを抱えた人がやってきます。そういった小さな仕事をすることで収入面では安定はしましたが、自分の思うような段取りで制作作業が進まないこともあります。

自分の制作時間を確保しつつ、地域の行事や役割、細かな仕事をこなして、円滑にコミュニケーションをとる必要があると思いますね。でも、そのおかげで困ったことがあった際は、誰かに声を掛けると助けてくれる人にたどり着くということもあるので、何をもって損か得かは言い切れない部分もあるのではないでしょうか。」

「ここでつくる。」と決め、一歩踏み出した堂谷さん。今後の目標は

今年の春に奥大和に移住し、暮らしや生活、家具職人としての仕事、現地でのコミュニティーなど、徐々に奥大和に馴染みつつある堂谷さん。移住後の心境の変化や、今後新たにチャレンジしたいことについて、改めて伺いました。

 

「吉野材を使った、新たな価値観を提案した作品を考えて、展示会を開催したいです。

奥大和の周囲の作り手が、それぞれこの地に定着して数年経ち、結果を出し始めています。後発ではありますが自分もこの地で結果を出せるように頑張りたいです。

 

やはりこの土地には、林業を主たる産業として発展してきた歴史があります。今は時代の求める価値になかなか応えられてないですが、美しい素材を新たな切り口で見せることで、必ず受け入れられると思っています。それだけ素材のポテンシャルと、産地としての歴史がありますから、そのストーリーを作品に表現したいです」

▲ 堂谷さんの作品。一つひとつ丁寧につくられ、木の温もりを感じます。

「奥大和には今、主に木工の作り手が増えてきています。奈良県が奥大和の作家を世界的・全国的にプロモーションしてくださるおかげもあって、個々の発信力では弱い部分がある作家であっても、大きな仕事に結びつくチャンスがあることが、この土地で製作する魅力のひとつです。

また、言わずと知れた優良材の産地ですので、産地でその土地の材料を使ってものづくりをする訴求力、ブランド力はあります。

 

悪い点と言いますか、急峻な地形故に広く平らな、大きな製作に適した建物が少ないため、特に川上村内で製作拠点を探そうとするとなかなか大変です。

プライベートでは仲の良い作り手でも、仕事のこととなると当然個人プレーになりますから、作家同士で横の繋がりで地域としての魅力の発信ができればいいなと思います。僕自身は、この土地で再びチャンスをいただけたので、応援や支援いただいた方に良い報告ができるように、もっと頑張らなくてはいけません」

初めて堂谷さんにお会いした際に「材料のことを良く知り、自身の目で見極め、作品にストーリー性を持たせたい。だから吉野杉や檜の産地である川上村に移住した」とお話を伺ったことが、とても印象的でした。

 

作家としての想いや、作品づくりへの熱量を感じ、今後この奥大和の地でどんな作品が誕生するか、わくわくします。

奥大和の魅力を体感 ワーケーション・移住体験ツアーin 奈良

奈良県が主催となり11月19日(土)〜20日(日)に実施した「クリエイター向け移住体験ツアー」では、堂谷さんをはじめとした奥大和でものづくりをしている方や先輩移住者の方々との交流をしてきました。

▲ 「クリエイター向け移住体験ツアー」で訪れた、酒樽の材料「樽丸」の工房も川上村にあります。
▲ 樽丸工房を訪れる、移住体験ツアー参加者一行

東吉野村では移住相談や、飲食店舗のお試し開業ができるチャレンジショップ「KAMEYA」、コワーキングスペースとして利用可能な「OFFICE CAMP HIGASHIYOSHINO」などにも訪問し、実際に現地でものづくりを生業にしていくイメージが膨らみます。

黒滝村では、「わかすぎふれあいセンター」にて透かし彫りの作品に触れ、若い木を削るワークショップを体験。

最後に古民家を改装してつくられた、地域おこし協力隊酒井さん宅でツアーの振り返りとおしゃべり。

クリエイター向け移住体験ツアーとは

クリーマでは全国の自治体と連携し、各地の移住施策に取組んでいます。奈良県奥大和地域での移住体験ツアーは、全国で第4回目となります。

ものづくりに最適な環境を追い求めていたり、作家として新しいことにチャレンジしたい、新天地で一歩踏み出したい、と考えている方に向けて、少しだけ背中を押すことができればと思ってのツアーです。

 

好きな場所で、好きなものづくりに打ち込む ”いつか” を ”今” に 変えてみませんか。

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