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ぬいぐるみ作家・noconocoさん - 抱きしめて癒されるぬいぐるみを_作り手インタビューvo.10
こんにちは。クリーマのエンジニアの結城です。
時にはリアルに、時には可愛らしく、生き物をデフォルメして作られるぬいぐるみ。ある時からその不思議な魅力に取りつかれ、目が離せなくなりました。
今回お会いしたのは、ぬいぐるみ作家のnoconocoさんです。作品にこめられた思い、そして、ぬいぐるみとアートに対する真摯な考えをお伺いすることができました。
1つでも可愛さを感じたら、ぬいぐるみに
noconocoさんの作品を見てまず感じることは、なんと言っても、その類まれなる動物モデルたちの多様性です。
「私は動物全般が好きで、嫌いな動物がいないんです。虫や爬虫類も好き。例えばウツボなんかは『わっ、気持ち悪い!』と思う方も多いでしょう。ですが、私はすごく可愛さを感じたんですね。そういったすべての生き物を分け隔てなく、自分が1つでも可愛いさを感じたら、ぬいぐるみにしようと思います。テレビなどを見ている時に、『あ、可愛い!』思ったものを調べて、作ることもあります。実は、最初からこれをつくろうというものはないんですよね」
生き物がお好きなnoconocoさんは、図鑑を見たり実物を見たりと、細かな観察をしながら制作されているそうです。やはり、リアルな動物を観察することが制作にはとても大事と、動物園や水族館にも足を運ぶこともしばしば。
「1m超のジンベイザメを作ったことがあります。体の小さな斑点を一つ一つ手でつけて…結構大変でした(笑)」
実は私は、かねてよりnoconocoさんの「メンダコ」の大ファン。お話を伺っている間も、終始メンダコをそばに置かせていただいていました。
noconocoさんが可愛いと感じたものだからこそ、作品にもその可愛らしさがしっかりと注ぎこまれ、手に取る方々の 心に訴えかけているのかもしれません。
しゃべらずとも、表情で語りかけてくる彼ら。よく見ると、ぬいぐるみたちは、首をかしげているポーズが多いことに気がつきました。
「そうなんです。まっすぐ向いているより、小首をかしげているほうが可愛いなと思っていて。だから作っているうちに、少しずつ首を傾けていっちゃうんですよね」
ふふっと笑うnoconocoさん。ぬいぐるみたちのさりげないポーズにも「可愛い」へのこだわりと愛情が見え隠れしていました。
ぬいぐるみは、抱きしめて癒される存在
noconocoさんのぬいぐるみは、表情ももちろん素敵なのですが、じかに触って抱いてみると、よりいっそうの魅力を感じます。
「ぬいぐるみは、抱き心地を楽しんで癒されるというものだと思っています。これは、私の中で一番大切にしている部分です。抱きしめるには、ある程度の大きさがあると良いですよね。様々なサイズを作りますが、やはり大きめのサイズが好きですね」
抱き心地の良いぬいぐるみは綿の入り方が要のため、綿を詰めたり出したりを繰り返して、ちょうど良い具合を探していくそうです。作りながら抱っこして感覚を確かめていく、とても慎重な作業。それだけに、noconocoさんのぬいぐるみを抱きしめると、ふわっふわの感触で、優しく癒されるんです。
「ぬいぐるみが大好き」な女の子が、ぬいぐるみデザイナーに
ぬいぐるみを愛するnoconocoさんの原体験は、お母さまお手製のぬいぐるみでした。小さい頃からずっと、ぬいぐるみが大好きだったそうです。
転機となったのは、美術大学でグラフィックデザインを学び、進路を考える時、「私が一番好きだったのは、ぬいぐるみだ」と、その存在を思い起こした時でした。
改めて、ぬいぐるみが特別だと感じたnoconocoさんは、作ることを仕事にしたいとぬいぐるみメーカーに就職し、それから15年間、デザイナーとして技術を磨いていきます。
「ぬいぐるみメーカーにいた頃は、例えば、動物園のお土産ショップにあるぬいぐるみを制作する仕事をしていました。動物園なので、動物の生態に忠実でありながら、子供が親しみを感じるように可愛らしく作らないといけない。それには、かなり鍛えられましたね。
また、制作する工場で調達できる素材で作らなければならない制限もありました。それが辛いなと感じていましたね。今はnoconocoとして、一から好きな素材を使って好きに制作できるのがすごく楽しいです」
作りの良いものとは、心に残るもの
noconocoさんにとって“作りの良いもの”とは何ですか?という問いかけに対しても、使い手を見つめたお答えがありました。
「“作りの良いもの”とは、その人の心に残るもの、気持ちのこもったものではないかなと思います。ハンドメイドってやっぱりそうですよね。その人の心に響くものが作れれば、一番良い。あまり自分の作家性や個性を強く出しすぎず、その中で、自分らしさをちょろっと出したり、そのさじ加減ですね。
気がついたらそばにいるように、手にとって下さった人の暮らしや生活に自然と入っていけるような、優しいものを作りたいと思っています」
ぬいぐるみというと女性が好むイメージがありますが、実は、noconocoさんの作品は大人の男性が買われることもあり、ぬいぐるみデビューをされた方もいらっしゃったそうです。そうして、ぬいぐるみを手にとるきっかけになることが、とてもうれしいと語って下さいました。
「ぬいぐるみ」と「アート」の距離を変えていきたい
ぬいぐるみを愛し、日々向き合うnoconocoさんの心の中には、ある強い思いがありました。
「日本だと、ぬいぐるみというと子供の玩具のイメージですよね。イギリスのテディベアのような文化が日本には根づいていないので、『ぬいぐるみって何に使うの?』という言葉も出るわけです。やはり、衣食住のような実用的なものは強いです。日本人は実用品を求めがちなので、そうではないものへ価値を見出す人がもっと増えればいいですね」
「ぬいぐるみが、アートの部類ではないという認識を持たれることが多いのは、残念だなと感じています。良いものを作って、そういう意識を変えていきたい。その人の宝物になれるようにと思いながら作っています」
ぬいぐるみへの意識を、自らの作品によって変えていく。そんな強い意志がひしひしと伝わって来る言葉でした。
そして、アートのお話をきっかけに、尊敬する方のお話をして下さいました。
「尊敬する作り手の1人は、新聞紙で海の生き物を制作されている、木暮奈津子さんです。アートに真剣に向き合われている、やりきっているところが素晴らしいと感じます。自身もそうありたいし、本気で挑みたいと思いますね」
インタビューを終えて
愛らしい、リアル、ミステリアス、ちょっと不思議...。
noconocoさんの作品は、受け取り手によって様々な表情に変化しますが、総じて日々の疲れを癒やしてくれるひだまりのような空気を感じます。背景には、様々なこだわりや優しい思い、そしてたくさんの愛情がこもっているからなのですね。
そして、ぬいぐるみがアートの1つという意識に変えて行きたいと語る、まっすぐで強いまなざしがとても印象的でした。
インタビューの間もメンダコを離さなかった私はすっかり癒やされました。
みなさんも、日々の暮らしにすっとぬいぐるみを迎え入れると何かが変わるかもしれません。ぜひ、ぬいぐるみの魅力を抱きしめて感じてみて下さいね。