Madeiraのプロフィール
平成12年 第29回日本伝統工芸近畿展 入選
平成13年 第30回日本伝統工芸近畿展 入選
「本物の良さは、本物を使ってみることによってしか分からない」
作り手である私自身がこんなことを言うのは厚かましくも口はばったいことですが、ただ眺めるのではなく実際に使ってみることによって、使い捨ての物からは感じることのできない本物の良さを知っていただきたいと思います。
シッカリと手間暇かけて作られた焼き物や漆器は、使い込むほどに味わいが出てきます。
たとえ傷がついたり破損したりしたとしても、それは人生・生活の記憶と結びついて愛着が生まれます。
漆器に限って言えば、愛着が生まれるほどに長く使われるためには充分な堅牢さが求められます。
そして堅牢さはひとえに手を抜かない、丁寧な「下地作り」にかかっています。
例えば私がよく作る「拭き漆」の作品ですが、表面の漆の層の厚さはせいぜい10分の1ミリかそれ以下、もしくは100分の1ミリしかないかもしれません。
漆は酸化すると真っ黒になります。
拭き漆という手法は美しい木目を見せるのが目的であり、真っ黒になってはこの目的を達成できません。
したがって極く薄い層しか許されないのです。
極く薄い層として抑えるために、せっかく塗った漆を拭き取るのです。
漆はかなり強靭な被膜を形成します。
しかしいくら強靭とはいえ、先ほど述べたようにその被膜はいたって薄いものです。
ではどうやってその制限を克服するか。
木質表面に厚い層を作れないのなら、内部を強固にするしかありません。
ここに下地作りの本来的意味があります。
木を内部から固めて、強靭さを確保する。
下地を作る目的はそこにあります。
下地作りが充分になされていないものは、新品時はそれと見分けがつきませんが、あっけないほどの短期間に表層の艶が失われ、同時に保護膜としての機能も失います。
つまり強度が減じ、シミや汚れがつく可能性が高まるということです。
ただ問題は、この下地作りには膨大な時間がかかるという点です。
品物の形状が複雑であればあるほど大きな時間が費消されます。
逆に言えば、手を抜くならここ、ともなります。
出来上がりの表情から下地造りの良し悪しを峻別するのは困難ですから猶更です。
作り手を信用するしかありません。
私の場合は、全行程の7割の時間はこの下地作りに割いています。
割いているというより、それだけの時間がかかってしまうのです。
一口に下地作りとはいっても色々なやり方があります。
一般的には漆と砥の粉を混ぜた「さび」というペーストを作り、木の導管に刷り込むのですが、これだといわば導管に「蓋」をした格好になり、年月の経過とともにこの蓋が摩耗すれば導管はむき出しの状態となります。
私が採っている方法は、漆を塗って固まった後、木材表面に残留した漆を全て研ぎ落とす。
それを何度も何度も繰り返します。(木質によって回数は異なりますが8回から10回ぐらい)
最初は漆の塗面がガサガサと乾燥した感じですが、最後は艶のある滑らかな層となります。
漆が木材内部の導管を充分満たした、という証拠です。
この後、漆を塗っては拭き取る、という作業を繰り返して完成です。
この遣り方は、木工芸の分野で最初の人間国宝に認定された黒田辰秋が編み出したものだそうです。
色々と試してみましたが、この方法に勝る方法は他にありませんでした。
塗っては研ぎ、塗っては研ぎを繰り返す愚直で手間のかかる方法ですが、これ以上の遣り方はないと信じています。
平成13年 第30回日本伝統工芸近畿展 入選
「本物の良さは、本物を使ってみることによってしか分からない」
作り手である私自身がこんなことを言うのは厚かましくも口はばったいことですが、ただ眺めるのではなく実際に使ってみることによって、使い捨ての物からは感じることのできない本物の良さを知っていただきたいと思います。
シッカリと手間暇かけて作られた焼き物や漆器は、使い込むほどに味わいが出てきます。
たとえ傷がついたり破損したりしたとしても、それは人生・生活の記憶と結びついて愛着が生まれます。
漆器に限って言えば、愛着が生まれるほどに長く使われるためには充分な堅牢さが求められます。
そして堅牢さはひとえに手を抜かない、丁寧な「下地作り」にかかっています。
例えば私がよく作る「拭き漆」の作品ですが、表面の漆の層の厚さはせいぜい10分の1ミリかそれ以下、もしくは100分の1ミリしかないかもしれません。
漆は酸化すると真っ黒になります。
拭き漆という手法は美しい木目を見せるのが目的であり、真っ黒になってはこの目的を達成できません。
したがって極く薄い層しか許されないのです。
極く薄い層として抑えるために、せっかく塗った漆を拭き取るのです。
漆はかなり強靭な被膜を形成します。
しかしいくら強靭とはいえ、先ほど述べたようにその被膜はいたって薄いものです。
ではどうやってその制限を克服するか。
木質表面に厚い層を作れないのなら、内部を強固にするしかありません。
ここに下地作りの本来的意味があります。
木を内部から固めて、強靭さを確保する。
下地を作る目的はそこにあります。
下地作りが充分になされていないものは、新品時はそれと見分けがつきませんが、あっけないほどの短期間に表層の艶が失われ、同時に保護膜としての機能も失います。
つまり強度が減じ、シミや汚れがつく可能性が高まるということです。
ただ問題は、この下地作りには膨大な時間がかかるという点です。
品物の形状が複雑であればあるほど大きな時間が費消されます。
逆に言えば、手を抜くならここ、ともなります。
出来上がりの表情から下地造りの良し悪しを峻別するのは困難ですから猶更です。
作り手を信用するしかありません。
私の場合は、全行程の7割の時間はこの下地作りに割いています。
割いているというより、それだけの時間がかかってしまうのです。
一口に下地作りとはいっても色々なやり方があります。
一般的には漆と砥の粉を混ぜた「さび」というペーストを作り、木の導管に刷り込むのですが、これだといわば導管に「蓋」をした格好になり、年月の経過とともにこの蓋が摩耗すれば導管はむき出しの状態となります。
私が採っている方法は、漆を塗って固まった後、木材表面に残留した漆を全て研ぎ落とす。
それを何度も何度も繰り返します。(木質によって回数は異なりますが8回から10回ぐらい)
最初は漆の塗面がガサガサと乾燥した感じですが、最後は艶のある滑らかな層となります。
漆が木材内部の導管を充分満たした、という証拠です。
この後、漆を塗っては拭き取る、という作業を繰り返して完成です。
この遣り方は、木工芸の分野で最初の人間国宝に認定された黒田辰秋が編み出したものだそうです。
色々と試してみましたが、この方法に勝る方法は他にありませんでした。
塗っては研ぎ、塗っては研ぎを繰り返す愚直で手間のかかる方法ですが、これ以上の遣り方はないと信じています。