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『ENLIGHT2021』横浜駅地下街のパブリックアートがついに完成!

『ENLIGHT2021』横浜駅地下街のパブリックアートがついに完成!

こんにちは、クリーマ広報の重岡です。

昨年スタートした、全国にパブリックアートを同時展開するプロジェクト『ENLIGHT2021(エンライト2021)』。その舞台のひとつである横浜で、3名のアーティストによるパブリックアートがついに完成しました!今回はその制作風景や、完成した作品をレポートします。

 

それぞれの作品に込められた思いは、いまを生きる私たちの心に深く響くものでした。

『ENLIGT2021』とは?

この混沌とした時代において、価値観の変容がおこる今だからこその表現があると考え、地域を舞台に「パブリックアート(公共芸術)」という手法を通して、未来を明るく照らすようなプロジェクトを実現したいという思いから始まった『ENLIGHT2021』。

 

昨月12月中旬からCreemaのクラウドファンディング「Creema SPRINGS」でプロジェクトの支援募集をスタートし、目標金額達成した横浜、福岡(糸島)、富山でアーティストによるパブリックアートの制作が開始されました。

舞台となったのはここ!

神奈川県横浜市。古くからいろんな国の人々が行き交い、日本の異文化交流の中心的な存在でした。そして今では最新スポットやショッピングモールが立ち並び、日本を代表する観光スポットにもなっています。

 

そんな街の中心、横浜駅に直結した西口地下街の壁一体が今回のキャンバスです。場所を提供くださったのは、学校法人岩崎学園さん。すぐそばにキャンパスを構える、ファッションやITなどマルチに人材育成を行っている専門学校です。「横浜駅直結の西口地下街の壁一面に描かれる今回のアートが、新たなにぎわいを生み出すとともに、アートとデザインの力で夢を目指すアーティスト・クリエイターたちを応援する場所になってほしい」との思いで、このたびご協力いただきました。

常に人が行き交う、横浜駅西口地下街。その広い壁一面を使って、アーティストが思い思いの作品を作り上げました!ここからは各アーティストとその作品をご紹介いたします。

世界一の大きさ!? akakin(あかころ)さんの羊毛フェルトアート『Conviviality』

獅子や大きな鳥、魚たちが入り乱れる迫力のあるこちらの作品は、フェルティング作家として多方面で活躍されるあかころさんが、羊毛フェルトで制作したもの。こちらの作品、なんと羊毛フェルト作品としては世界最大級!このサイズだからこそ作品全体に迫力が満ちています。フェルトを使って立体的に描かれた生き物たちは躍動感に溢れ、今にも動き出しそう。

 

吸い込まれるような絶妙な色合いは、単色のフェルトだけではなく様々な毛糸を解いたものをフェルトに混ぜて作っています。いろんな色を重ねているからこそ、奥行きのある深い色合いが出るのですね。

(サクサクと針で刺して、フェルト同士をくっつけています。)

このように針を刺して、土台にフェルトを少しずつくっつけていきます。横7メートル、高さ2.2メートルの巨大な作品を作り上げるのに、一体何度針を刺したのでしょうか。本当に途方もない地道な作業だったことが想像できますね...

 

時には脚立に乗って、時にはしゃがんで、コツコツと制作されていました。毎日せっせと作業をするあかころさんに定期的に声をかけてくれる通行人の方もいたそうです。

(あかころさんのレクチャーを受けながら作業をする岩崎学園のみなさん)

こちらの作品は、アーティスト本人だけではなく、岩崎学園の学生さんをはじめとしたたくさんの一般の方々も制作に参加して作り上げられました。フェルトを刺す作業は一見単調にも見えますが、広くザクザクと編み進める人や緻密にしっかり仕上げる人がいて、刺し方にもその人の個性が出るのだそう。みなさん自分でどこを担当するか決めて、黙々と作業を進めていました。

 

この作品のコンセプトは「多様性」だと語るあかころさん。

———最近分断とか、差別とか、そういうことが世の中で浮き彫りになってしまいました。けれど、異なるものが混じり合っておりなすものが美しい世界だと私は思っていて。そういう想いがこの画面の中でも表現できたらいいなと思って作りました。

違う生き物たちが自由に混ざり合うという作品の構図だけでなく、多くの人がそれぞれ思い思いに手伝い、また制作をするあかころさんに毎日声をかけてくれる人がいて。大勢の人の想いが重なって完成したこの作品は、まさに多様性を体現していると感じました。

(ついに完成の日を迎えたあかころさん)

——作者として作品に想いは込めましたが、作品を前にしてくださった方々にはそれぞれの想いを自由に重ねて感動していただけたら嬉しいです。
今回の作品がご覧くださる皆様にとって、あたたかい日の光がさしこんできたような優しくて印象的な事象となってくれることを祈っています。

akatin(あかころ)

東京藝術大学 彫刻科卒業後、造形作家として活動する中で羊毛フェルトと出会う。「akatin」では日本人形の材料でもある桐の木の粉を糊で練って作る“桐塑”という素材で造形し日本画材で着彩した造形とフェルティングを組み合わせたフェルティング彫刻作品を制作、「あかころ」ではより身近に感じていただける可愛らしいフェルティング作品を制作。LUMINE meets ART AWARD2016でのルミネ賞などの入賞多数。国内外でのアートフェアや企画展示に参加して、作品を発表。

存在のエネルギーそのものを描く。坂東工さんによる壁画『グル・マル』

轟々しく、力強いこちらの作品は、アーティスト、俳優として幅広く活躍され、恋愛リアリティ番組でもその名を知られた坂東工さんによるもの。様々な色がうねって、うずを巻いているように見えます。坂東さんはこの作品を、自分の”手”だけを使って描きました。作品の上部、まだらな模様のように見えますが、近くで見ると一つひとつが手形なのです。

(全て坂東さんの手形...!)

身体のうちからゾワっと込み上がってくるような、本能的なエネルギーを感じます。平面に描かれた絵にもかかわらず、観ているだけでなんだか音までが聞こえてきそう。そして驚くべきは、この作品を坂東さんがほぼ半日で作り上げてしまったこと!

(描き始める前に瞑想をする坂東さん)

じっと真っ白な壁を見つめ、思いに耽る坂東さん。そして、一気に描きはじめました。

(全身を使いながら思いのままに手を動かしていく坂東さん)

今回のように作品が大きくなると、普段のように描くことは難しくなってしまいます。けれど、うまく描こうということや、細かい設計は考えずに、今回坂東さんの頭にあったのは「とにかくやる」ということだけだったそう。

———自分が思った意図はとにかく捨て去り、その時に動かされるようにやる。壁に手のひらを叩きつけながら、いろんなことを忘れていました。手に取った色も描いていった形も、設計、デザインされたものではなく、その瞬間瞬間に生み出されていきました。この作品は私個人が描いたというものよりも、その時、その場所のエネルギーが融合し、私を通して紡ぎ出された一部です。ですからこの壁画を見る人の瞬間があってはじめて完成するのかもしれません。

(完成直後の坂東さん)

自分自身と他者とのつながりのなかで生じるエネルギーそのものが描かれた『グル・マル』。坂東さんの体を通して、衝動のままに創造されたその姿は、抜け出せない現実を生きる私たちの心を奮い立たせます。

坂東 工

坂東 工
1977年生まれ。日本大学芸術学部を卒業後渡米。2005年マーティンスコセッシ監督作「ディパーテッド」、2006年クリントイーストウッド監督作「硫黄島からの手紙」にてハリウッドデビュー。帰国後、アーティスト活動を開始。初個展開催時、映画「真田十勇士」にて衣装製作を任される。またNHK大河ドラマ「西郷どん」にて渡辺謙の衣装製作を担当。2017年よりリアリティーショー「バチェラー・ジャパン」の司会を担当。2018年12月、株式会社MORIYAを創業。2019年6月オンラインギャラリー・iiwiiをスタート。新たな才能を発掘し、国内のみならずニューヨークでも展示会を開催。2020年9月「つながるピース(PEACE×PIECE)」プロジェクトとしてアートを通した新たなコミュニティを立ち上げている。2017年2月より「バチェラー・ジャパン 」「バチェロッテ・ジャパン」の司会進行役を務める。

絵文字に思いをのせて。福島徹也さんによる壁画アート『Connection』

カラフルで楽しげなこちらの作品は、アーティストである福島徹也さんの作品。

まず、壁にボーダー状に色を塗って、その上からカッターで絵文字を切り抜いたり、絵文字型に白抜きになったキャンバス生地を貼り付けて制作されました。どの色のところにどの絵文字がくるのか、緻密に計算し尽くされた作品です。

(カラフルなボーダーの上にキャンバス生地を貼っている福島さん。大きな作品ゆえに、この作業に一番苦労したそう。)

切り抜かれた絵文字は全てどこかでみたことがあるもの。喜怒哀楽を表す顔文字や、Wi-Fiやビール、そしてマスクとコロナウイルスまで!現代に溢れるいろんなものをアイコンで表現しています。

 

作品を眺めていると「あれはなんだろう?」となる箇所があります。それは剥がれかけたコロナウイルスのマーク。

(ひとつだけ剥がれかけている、コロナウイルスのマーク)

 

福島さんによれば、他の記号のように完全に形が切り抜かれているのではなく、あえて剥がれかかっている状態を見せることで、まさに状況が変わろうとする瞬間を表現しているのだそう。変わりゆく将来への希望を感じられる仕掛けになっているんですね。みなさんも現地に行ったらぜひ探してみてください!

(切り抜き作業を行う岩崎学園のみなさん 岩崎学園の教室にて)

福島さんの作品も岩崎学園の学生のみなさんが、制作の一部に参加されました。意外と硬いキャンバス生地を、怪我をしないように慎重にカッターで切り抜きます。私も少し参加させていただきましたが、曲線を含む絵を切り抜くのはとても難しい...! 不器用な仕上がりになってしまいました。けれど、福島さんによればこのように多くの人が切り抜いて仕上がりが不揃いになることも、この作品においては大事な要素だったそう。

——私はこの作品で、コミュニケーションやつながりをテーマにしていました。特にコロナ禍において、人とのつながりの大切さというのを私自身も感じましたし、みなさんも再認識されてるのかなと思います。普段の作品ではシンボルをテーマにしているので、絵文字をコミュニケーションやつながりの象徴として用いて作品を作ろうと思いました。今回岩崎学園様に協力していたいただいたことで、それぞれの絵文字にその人の個性や性格が表れました。全体に不完全さがより際立って、人間らしさや人間のコミュニケーションが表現できたかなと思います。

(完成作品と一緒に映る福島さん)

福島さんは、この作品自体に決まったメッセージはなく、見た人に自由に受け取ってもらうことで、これをきっかけにアートに興味を持ってもらったり、身近に感じていただきたいとおっしゃっていました。この作品を観ればきっとアートが表現するものの幅広さや奥行きを感じてもらえると思います。

福島 徹也

福島 徹也
日本でグラフィック・デザイナーとしての経験を積んだ後、デザイン、アートを学び直すために渡米。グラフィック・イラストレーションの学士号を取得。 卒業後、ニューヨークでアーティスト・アシスタントやフリーランス・デザイナーとして活動する。 2006年に渡英し、ビジュアルアートの修士号を取得。 2013年からは日本に拠点を移し、現在はデザイン、アートなど、様々な分野にて活動中。

作る人と見る人が交わるアート

3名のアーティストによる『ENLIGHT2021』横浜のパブリックアートはいかがでしたでしょうか。お出かけが難しい状況が続いていますが、近くに来られた時はぜひお立ち寄りください。

※今後、少なくとも一年間は展示される予定です。ご覧になられる際は、作品には直接お手を触れられないようお願いいたします。

 

その場所や世の中の空気を取り込み、協力してくださる方々と交流しながら制作したアーティストたち。そして通りすがりに作品を観た人が、そこから何かを受け取っていく。そんな交流が、パブリックアートならではなのかなと思いました。

そんな素敵な瞬間に立ち会えたことがとても嬉しいです。

関わったすべての人に感謝を

この度のプロジェクトに多大なるご支援をいただいた、株式会社コーエーテクモホールディングスの代表取締役会長、襟川恵子様よりコメントを頂戴いたしました。

プロジェクトのお話を伺い、アーティストへの支援と、通路を利用する皆さまの心を癒すお手伝いができればと考え、この度のクラウドファンディングに出資いたしました。現在アートに限らず、優れた文化に対して支援を必要としているアーティストが多い状況です。弊社はそんな方々を後押しすべく、限られた予算の中で毎回支援させていただいております。本社を置く横浜は「文化芸術創造都市」ですので、地元での支援には特に力をいれています。
今回完成した作品はそれぞれに個性があり、きっと路行く人々に楽しんでいただけるでしょう。横浜駅というプラットフォームに通じる地下道の無味乾燥な壁に、突如現れるカラフルなアートが、私たちの心を楽しく豊かにしてくれます。素敵なプロジェクトに参加するきっかけをくださったクリーマ様と、描くキャンバスとなる壁面を提供してくださった岩崎学園様に感謝いたします。
アーティストの皆様には、その発想力と絶え間ない努力で限界を乗り越えて、それぞれの夢を叶え、世の中に貢献していただきたいと願っています。

アートやアーティストの持つ力を信じ、この度ご参加いただいたコーエーテクモホールディングス様に心より感謝申し上げます。

改めまして、コーエーテクモホールディングス様をはじめ、本プロジェクトの実現に向けてCreema SPRINGSにてご支援いただきました皆様、本当にありがとうございました。

『ENLIGHT2021』は横浜・糸島で完成を迎えました。今後は富山でむらいさきさんがガスタンクにペインティングを施します。これからの『ENLIGHT2021』も乞うご期待ください!

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