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「土佐和紙」1000年の歴史を繋ぐために。強くしなやかに変化し続ける職人たちの想い。【高知ものづくり紀行 vol.5】

2022.12.02
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「土佐和紙」1000年の歴史を繋ぐために。強くしなやかに変化し続ける職人たちの想い。【高知ものづくり紀行 vol.5】

高知県には、「土佐和紙」や「土佐打刃物」をはじめ、数百年以上の時を経て受け継がれてきた個性豊かな伝統工芸品が存在しています。

 

Creemaでは、全5回にわたって高知のものづくりについてお届けする企画「Creema 高知ものづくり紀行」を開催中。職人の方々の技術や制作にかける想いをご紹介していきます。

Creema 高知ものづくり紀行 記事一覧

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− 【高知ものづくり紀行 vol.4】残すために、職人技術も数値化。小さな鍛冶屋が見据える「土佐打刃物」の未来【もっと読む

− 【高知ものづくり紀行 vol.5】「土佐和紙」1000年の歴史を繋ぐために。強くしなやかに変化し続ける職人たちの想い。【もっと読む

福井県の「越前和紙」、岐阜県の「美濃和紙」と並んで三大和紙と呼ばれる「土佐和紙」。土佐打刃物とともに、伝統的工芸品として経済産業大臣に指定されている、高知県を代表する工芸品です。その歴史は、1000年を誇るといわれています。

 

 和紙にはさまざまな厚さのものがありますが、文化財の修復などに使用する「土佐典具帖紙(とさてんぐちょうし)」は、なんと厚さ0.03〜0.05ミリ。薄さと丈夫さをかね備えており、国内外で高い評価を受けています。

今回伺った内外典具帖紙株式会社(Creemaショップ名:ないてん工芸部)さんは、高知県いの町の仁淀川(によどがわ)流域にある、昭和33年創業の小さな和紙工場。主に、絵画の修復に使われる典具帖紙をつくっています。

 

Creemaで販売している作品は、その製造過程で捨てられてしまう和紙素材を再利用してつくられたものたちなんだそう。現在代表を務める土居晶子(どい・しょうこ)さんに、土佐和紙への想いについてお聞きしました。

 

記事の後半では、高知県で活躍する土佐和紙クリエイターの皆さんの作品も、あわせてご紹介していきます。

土佐の豊かな山と川が育んだ、世界も認める和紙

紙のまちとして知られるいの町は、高知県の中部に位置し、仁淀川と緑豊かな山々に囲まれた小さな町です。この地で土佐和紙が栄えた背景には、ひとつの面白い逸話があるのだそう。

 

「その昔、いの町成山で『新之丞(しんのじょう)』というひとりの旅人が倒れているのを見つけて、地元の人が救ったそうなんです。すると新之丞は助けてくれたお礼にと、7色の紙の漉き方を教えたと。それが『土佐七色(なないろ)紙』として土佐藩から将軍家への献上品として保護されることになり、土佐和紙の名前が広く知られるようになったと聞いています。

 

その後江戸時代後期には、いの町出身の紙漉き師・吉井源太が大型簀桁(すげた)を考案したことで大量生産が可能になり、本格的にいの町が和紙で発展してきたようです」

▲ 山で生えている状態の楮(こうぞ)を職人さんが見せてくださいました。

和紙の原料には主に楮(こうぞ)や三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)といった植物が使われますが、なかでも高知の山で育つ楮は、繊維が長くて絡みやすいのが特徴。繊維が切れにくくなるため、典具帖紙のように薄くても破れにくい和紙を漉けるのだそう。

▲ 蒸した楮を晒し液で漂白している様子。これによって素材の色が抜けて白くなるのだそう。

さらに、いの町を流れる仁淀川は「仁淀ブルー」「奇跡の清流」と呼ばれるほど、水質が良くて透明度の高い川。このような恵まれた環境も手伝って、強くて丈夫な質の高い和紙をつくることができるのです。

時代に合わせて変化してきた、小さな和紙工場

今回伺った和紙工場のはじまりは、明治10年頃に遡ります。初代が地元の手漉き職人を集めて典具帖紙をつくりはじめ、その後、土居さんの祖父であり3代目の濵田久一(はまだ・ひさいち)さんが起業して会社を設立したのだそう。

 

当時、主につくられていたのは、タイプライターで使われる原紙。ヨーロッパとの直接貿易の権利を得た3代目が、この頃から機械生産を取り入れ、ドイツへタイプライター原紙を輸出しはじめたのだといいます。

▲ 当時使われていたタイプライターと電報。貴重な資料を見せていただきました。

「メールもファックスもない当時のヨーロッパでは、タイプライターの需要がかなり高まっていました。タイプライターって、力を入れて文字を打ち込むので普通の用紙だと破れてしまうんです。その点、土佐和紙は薄くても強いので、タイプライター原紙として重宝されていたようです」

 

この頃にはすでに、日本の楮の生産量のほとんどを占めていた高知県。良質な楮が手に入ることによって、薄さと強さを兼ね備えた土佐和紙は、世界からも信頼される逸品になりました。

 

それから60年以上にわたって、和紙の素材屋さんとしてさまざまな製品をつくってきたといいます。最近では、社内の有志の職人たちで「ないてん工芸部」というチームをつくりました。

 

製品をつくる際には、どうしても捨てられてしまう部分が出てきます。「上等な紙なのに使われないのはもったいない」という思いから、余った和紙素材を使った作品を企画制作し、販売しているのだそう。

▲ 活版印刷された和紙のカレンダーは、和紙のやさしい風合いが魅力的。シンプルなのでどんな空間にも馴染みやすく、飾る場所を選びません。その年の干支がデザインされたカレンダーケースが付いているので、ギフトにもおすすめ。
▲ カラフルで可愛らしい表紙の御朱印帳。中に無地の土佐和紙がじゃばら折りで綴じられています。デザインは赤・青・黄の3種類。旅の思い出を記録したり、絵日記を書いたりしてもよさそう! 職人さんが一つひとつ丁寧に綴じたこだわりの作品です。
▲ 土佐弁が書かれた可愛らしいぽち袋。「めでたいちや」は、「おめでたいわぁ~」という意味なんだそう。7種類各1枚ずつ入っています。お年玉用にはもちろんのこと、ささやかなお祝いの気持ちや、小さなお手紙などをしたためても良さそうです。

「“誰かの役に立つ” 、“使って楽しい” 、“和紙の魅力再発見” を目標に、日々作品づくりをしています」と土居さん。品質はもちろんですが、お客さんにとって手頃で使いやすいことをいちばんに考えているのだそう。

今も広がり続ける和紙の可能性

「ないてん工芸部」としてものづくりをしていくなかで、改めて和紙の可能性を感じていると土居さんは言います。

 

「和紙は昔から傘や羽織り物、薬包紙、つい立てやふすまなど、日々使うものの至るところに使われていたわけですよね。それはつまり、和紙の機能性がとても高いということですし、別のものに転換できる可能性がすごく秘められている素材だなと感じます。

 

しかも和紙はほとんど自然由来のものでできているので、捨てても害なく自然に還って、環境にもやさしい。SDGsが注目される今の時代にも合った工芸品ですよね。

 

昔の人が着古した着物を雑巾にして使ったように、日本人には本来そうやって工夫しながら最後の最後まで使い切るという意識が根付いていると思いますし、それができる商品が本当に良いものなんじゃないかなって」

▲ 5mの土佐和紙を巻物状にした「土佐まき和紙」。機械だからこそつなぎ目のない巻物が実現できるのだそう。好きな長さでちぎって、絵手紙や文章を書くのも良いですし、ひとつなぎのまま日記を連ねていくのも楽しそうです。

早いうちから柔軟に機械を取り入れ、日々実直にものづくりに向き合う姿勢。そこには土佐和紙を未来に残したい、という強い想いがありました。

 

「伝統というのは、時代とともに変化してきたからこそ、残っていると思うんです。たとえば、南部鉄器は今ではフライパンとしてすごく重宝されてると聞きますし、西陣織も御朱印帳とかネクタイになっていて、みんな形を変えていろんなところに残っていますよね。

 

うちも3代目のときに機械化していなかったら、大量生産もできていないですし、タイプライター原紙の需要にも応えられなかった。変わらない部分も大事だけど、変わっていくことで歴史を繋いでいけます。だから、土佐和紙も頑張って未来に残していきたいですね」

Creemaで見つけた、高知県で活躍する土佐和紙クリエイター

高知県には、ほかにも土佐和紙に魅了されてものづくりを始めたクリエイターがいらっしゃいます。和紙の魅力を活かしながら、現代の生活にも馴染む可愛らしい雑貨を多数制作している方たちをご紹介します。

cocoro*kurumuさん(土佐市)

高知県土佐市で和紙とラッピングのお店cocoro*kurumuを営む、田原あけみ(たはら・あけみ)さん。土佐市で生まれ育ったものの、以前は土佐和紙にはほとんど興味がなかったのだとか。しかし、4人のお子さんを育てている間の内職として、レースのような模様の付いた和紙「落水和紙」に出会い、その繊細な美しさに魅了されてしまったと言います。

土佐和紙の素晴らしさをもっと多くの人に知ってほしい、という想いでラッピングと和紙を使った小物づくりを猛勉強し、現在のお店をオープン。より気軽に和紙を生活に取り入れられるような工夫と提案をしています。

シンプルでありながらかわいさと上品さを兼ね備えたご祝儀袋は、縁起の良い古典柄の和紙をふんだんに使っていて、お祝いの気持ちをめいっぱい表したいときにぴったり。ぽこぽことした質感で、触れても楽しいご祝儀袋です。筆者も、学生時代からの大切な友人の結婚式に使わせていただきました……! 

 

ほかにもラッピング用の繊細で美しい土佐和紙のペーパーや袋、メッセージカードなど幅広いアイテムを扱っています。心を込めてつくられた土佐和紙を使って、自分の手で丁寧にラッピングすることで、贈る相手にもより気持ちが伝わるかもしれません。

ゆるっと和紙の会さん(いの町)

「土佐和紙全体を盛り上げていきたい」という想いで集まった3人の女性作家によるユニット、ゆるっと和紙の会。いの町の土佐和紙をつくる家に生まれた浜田あゆみ(はだま・あゆみ)さんを中心に、和紙を身近なものに感じられるような雑貨や日用品などをつくっています。

▲ 千葉県から移住した内田海宇(うちだ・みゅう)さん。

メンバーのひとりである内田さんは千葉県出身。紙に魅せられ、原料栽培から紙漉きまで一貫して行っている土佐和紙づくりに携わりたいと思い、高知に移住したんだそう。現在は、自ら手漉き和紙の制作とプロダクトづくりを行っていて、myuというブランド名で個人でも活動しています。

手漉きで制作し、1枚ずつ染めた和紙を使用したスマホケースは、藍色と和紙の風合いが美しく、洗練されたデザイン。蜜蝋と天然のオイルを混ぜたものを上から塗っているため、防水仕様で安心して使えます。柿渋染と墨染のバージョンもあり、どれも個性的でついつい迷ってしまいそう……。

ほかにも、和紙の良さを存分にいかしたポストカードやガーランド、手帳カバー、柿渋染めのクッションなどを取り揃えています。どこか心地よさを感じる作品ばかりで、お気に入りがきっと見つかるはず。

強くしなやかに変化し続ける。

高知県の伝統工芸品のなかでも、とりわけ歴史の長い土佐和紙。手漉き和紙職人の数は年々減少しているといいます。

 

しかし、先代たちが時代に合わせて柔軟に変化しつづけてきたからこそ、今日もまた、土佐和紙に魅せられた新たなクリエイターたちにバトンが繋がり、さらに未来へと続いていく。その様は強くしなやかで、まさに土佐和紙そのものだなと感じました。

 

和紙特有の手触りはどこか懐かしく、私たちが忘れかけている何かを思い起こさせてくれるような気がします。皆さんもぜひ、自分の暮らしになじむ土佐和紙の作品を見つけていただけたら嬉しいです。

 

「高知ものづくり紀行」では、魅力的な高知の工芸作品を未来に繋いでいくために、日々ものづくりに向き合う職人の方々の想いをご紹介しています。

 

心を込めて丁寧につくられた個性豊かな作品ばかりなので、ぜひ一つひとつ見ていただけたらと思います。素敵な作品との新しい出会いがありますように。

※ 本記事は高知県の伝統工芸品・地場産品に係る販路拡大の取組の一環として、 株式会社クリーマが制作しています

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