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感覚よりも、理論でつくる。緻密に設計されて生まれたアクセサリー |atelier CHARMANTさん

感覚よりも、理論でつくる。緻密に設計されて生まれたアクセサリー |atelier CHARMANTさん

今回の作り手インタビューでご紹介するのは、金属のアクセサリーや革小物を手掛けるatelier CHARMANTさん。その作品は、飾らないシンプルなデザインなのに、どこか幾何学的で、ずっと眺めていたくなるような不思議な魅力があります。

 

一体どんな方が、どんな思いでデザインしているのだろう…?広島にあるアトリエ兼ご自宅を訪ね、お話を伺いしました。

アクセサリーを、理論的に設計する

——ものづくりを始めたきっかけを教えてください。

 

「最初は自分用に、革で財布やケースを作っていました。市販でも良いものはもちろんありますが、ポケットの数や使い心地が自分にぴったりというのは、なかなか難しいじゃないですか。だからそういうものが欲しくて。そうやっているうちに、友達や知り合いにも「欲しい!」と言われ、作ってあげるようになって。本格的にインターネットを通じて販売を始めたのは8年前くらいですね。」

——独学ではじめられたんでしょうか?

 

「元々仕事が建築関係で、設計したり、手作業で模型を作るということは日常的にやっていました。だから、今のものづくりにおいても、素材の扱い方は独学ですが、作り方やデザインには建築の技術が活かされていると思います。実際に形にする前に、頭の中に“設計図”がある感じというか。自分の好みで感覚的に作るというよりは、緻密に考えて作っています。」

——自分が好きなものを作るというわけではないんですね。

 

「僕自身は、普段はアクセサリーを全然つけないんです(笑)でもだからこそ、俯瞰で考えられるということはあると思います。「今こんなデザインが人気なんだ。なんでだろう?」と理論的に考えて、解読して、デザインしています。その時の流行りは常にチェックしていますね。あとは、再現性をいつも大事にしています。なので、いつの間にか左右対称や幾何学っぽい、時代を経ても同じものを作りやすいデザインが増えているかも。一点ものを自由に作るのが本当は楽しいんですが、ロングセラーで愛してもらえるものを作りたいなと思うので。」

 

かならずしも自分がよく使うものを作るわけではないと言うatelier CHARMANTさん。「”作ること”自体が好きで、僕の日常なんです」という言葉から、使う人のことを考えて緻密に設計していく姿に、ものづくりを通した自己実現を超えた、プロ意識のようなものを感じました。

こだわりは、変化していく様の面白さと、ピリッとしたカッコよさ。

「作品に使う素材はほぼ決まっていて、真鍮や銀などの金属と革です。あえて経年変化していくものを使っています。ずっとピカピカであるよりも、使い古していく過程が面白いなと思うので。朽ちていくものに趣を感じるというか...」

「うちのラッピングは空気が入らないように密閉しているのですが、それは開けた瞬間から経年変化がスタートするように、という意味を込めているんです。駄目になっていく、そのこと自体を楽しんで欲しいという思いがありますね。」

▲しっかり密封して届く作品。開封して空気に触れた瞬間から経年変化がはじまります。

初めてatelier CHARMANTさんの作品を購入したとき、まず最初にラッピングが素敵で、開けるときワクワクしたのを覚えています。開けた瞬間から、作品も自分と一緒に歳を重ねていく…ラッピングに込められた想いを知り、ますます長く使っていきたい、と心が躍りました。

 

——作品を手に取った人には、どのように使って欲しいですか?

 

「オンかオフかでいうと、オン。カッコつけて、うちの作品を使って欲しいなと思います。日常に馴染むというよりは、身につけたときにピリッと心が引き締まるような感じになってくれたら嬉しいです。作るときもカッコよさは意識していて、無垢の金属を使ったり、仕上げ方も丸っこくするよりは、エッジを切りっぱなしにしたり。そういう細かいところでかなり作品の印象が変わるので、とてもこだわっています。」

▲サークルピアス。控えめなサイズ感ですが、フチのカチっとした感じや、真鍮の風合いが無骨でカッコよく、存在感が溢れています。
▲atelier CHARMANTさんの革製品の中でも通年人気の高いミニポーチ。通気性抜群の鹿革で作られています。カラー、マチの有無、名入れまでカスタマイズ可能です。

暮らしのなかに、「作ること」が当たり前にある

「作ることが好きだから、作る。モチベーションとして「これがあるからやる」とかじゃないんです。もう生活の一部になっている感じ。アクセサリーや革細工だけにこだわっているわけではなくて、いつかは家具なども作ってみたいなと思っています。“アーティスト”とか大袈裟なことではなくて、作ることは自分の日常なんだと思います。」

 

昼間は会社員として働きながら、夜や休日に作品づくりを進めているatelier CHARMANTさん。リビングに併設されたスペースで作業に勤しんでいるそうです。

 

「家は自分で設計してリノベーションしたんです。前の家では作業場は別の部屋だったんですけど、そうするとずっとその部屋に篭っちゃうから、妻に「リビングに作業場を作って」と言われて(笑)」

▲ご自身で設計したお部屋。天井には特にこだわったのだとか。スタイリッシュさが、どこかatelier CHARMANTさんの作品を思わせます。

制作の様子を見せていただきましたが、生活の中心の空間であるリビングで作業台に向かう姿をみて「作ることは日常」とおっしゃっていたことが、自然と腑に落ちました。

 

インタビューを終えて

インタビューを通して、クリエイターというお仕事の主な魅力は「好きなものを好きなように作ること」だと、どこかで思い込んでいたのかもとハッとしました。もちろんそれもとても素敵なことです。ただ、作ること自体が好きだからこそ、感覚だけではなく、ときには緻密な分析から、使う人のことを考えて工夫や試行錯誤をするというatelier CHARMANTさんの姿勢。ストイックで、かっこいい、クリエイターのひとつの形を見せてもらった気がします。

 

試行錯誤の上に出来上がった一つひとつのアイテム、どれもが逸品です。是非皆様もご覧ください。

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