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「今、私が会いたい人」出会いを纏う作品を|画家・YUI.STEPHANIE(ユイ・ステファニー)さん
今回ご紹介する作家さんは、日本各地でアート作品を描いている傍ら、描いた絵の一部をスマホケースのデザインにしている、画家のYUI.STEPHANIE(ユイ・ステファニー)さん。
クリーマストアにも何度かご出店いただいたことのある作家さんのお一人で、熱烈なファンも多く、ユイ・ステファニーさんの作品を目当てに初日に駆けつける方や、「ご本人はいらっしゃらないんですか?」と声があがることもしばしば。
今回は、そんなクリーマストアでのご縁もあり、ずっと気になっていた「ユイ・ステファニーさんの作品が生まれるまで」を私、遠藤が伺ってきました。画家を目指すようになったきっかけや作品に込められたストーリーまで。思わず引き込まれる、作品の魅力に迫ります。
物心ついた頃から抱いていた画家への夢
- どのようなきっかけで画家の道に進まれたのでしょうか
幼稚園の頃から常に何かを描くことが好きで、物心ついた時には「絵の勉強をしなきゃいけない」という考えが頭にありました。今思えばもっといろんな道があったと思うのですが、当たり前のように、小さい頃から美大に行くことを決めていました。
小・中学生の頃も、私が“絵を描く人”という認識がまわりに浸透していて、クラスTシャツのデザインも自然と担当していました。「似顔絵を描くので授業聞きません」と言っても先生からOKが出るほど(笑)
絵の他にも、音楽が好きでバンドをやったり、部活でバスケをやったりと好きなことはありましたが、「将来は画家になる」と常に言い続けてきたこともあり、引き下がれない気持ちもありました。
画家として生きていくことの厳しさから、迷った時期もありましたが、ずっと言い続けてきたことを止めたり、逃げたりするのが嫌で。そのまま今に至ります。
自分が描いた絵でみんなが喜んでくれるのが嬉しくて
- 原点になった出来事はありますか?
描き始めは覚えていませんが、小学6年生の頃ひたすら漫画の模写をしていて、半年くらいで凄く上達していたのを覚えています。そこで、「これはいける!」と自分で思ってしまいました(笑)
集中すると周りが見えなくなるタイプなので、その頃はのめり込むように漫画を描いていましたね。
中学生の頃は、なぜかみんなで保健室に集まっていて、そこでみんなの似顔絵を描いていました。描いた絵は壁に貼られ、みんなが褒めてくれたのがすごく嬉しかったのを覚えています。それが原点かもしれません。
人と違う描き方をしたい
- 現在の絵のスタイルになったのはいつ頃からでしょうか?変化があるようでしたら経緯についても教えてください
大学受験に向けて絵を習っていたのですが、その時から何か少し含みのあるような絵を描きたくて、見たものを見たまま描く事を自分なりに工夫して描こうとしていました。作家としては当たり前の事ですが、徐々に人と一線を画すような絵を描きたい」と思うようになりました。
美大生の頃は抽象的なものと具象的なものが混在した絵を描いていたのですが、ある時大学の先生に「この絵に鳥の形を残す意味はあるの?」と言われ、ハッとしたのを覚えています。
それをきっかけに、「見たものを描く」のではなく、「心で描く」と言いますか、今のスタイルのような抽象的な画面に変化していきました。
私の作品は、どちらかというと大きなものが多いのですが、大学1・2年生の頃に、自分の体の大きさを超える程の大きな作品を初めて描いて、その頃から少しずつ絵の感じが変わりました。学校の廊下を占領して全長6mほどある絵を描いたことも。これをきっかけに、巨大な絵を描く楽しさに目覚めました。
昔作品で悩んでいた頃、恩師に「常に自分を疑え」と言葉をもらいました。この言葉は今でも制作する際に大切にしていて、今後も自分のスタイルを常に疑い更新しながら制作していきたいと思っています。
- 作品のイメージやタイトルは、どのように生み出してらっしゃるのでしょうか
描いている最中に考えていたり、読んだ本やラジオを聴いた時に気になった言葉をヒントにすることが多いです。
ただ、言葉によって見る人の想像を狭めないように、ちょっとした入口を作るだけに留め、あえて直接的な表現はしないことを心掛けています。
描いた作品の中には、その時の記憶がないことも
- 様々だと思いますが、ひとつの作品を完成させるまでにどれぐらいの時間がかかるのでしょうか
作品の大きさに関わらず、ライブペインティングなどでその場の空気感と一体になって描けた時は、20~30分ぐらいで完成することもあります。全て色鉛筆だけで描いた作品は1か月程だったり…描いてはやめて、描いてはやめてと、なかなか描けないスランプの時期が続き、2年かけて完成したものもあります。
トランス状態というか、描いている時の細部を思い出せない作品は、だいたい成功した証です。
作品を思い出すと、その時に出会った人の顔も思い出します
- 思い出深い作品について教えてください
自分の子供に優劣をつける感じがして順番は決められないですが、やっぱり人やその場の環境と出会いながら制作していく野外制作が一番強く心に残ります。激しい山の自然に晒されて制作した、廃校の小学校の25mプールにペイントした作品もそうです。
2016年9月に、和歌山県の無人駅に絵を描くイベントがありました。私が担当したのは周参見駅で、こちらも思い出深い作品です。
地元のお宅に泊まらせてもらい、毎日通いながら描くんです。そうすると地元の方々が声をかけてくださるんです。皆さんと関わりながら制作する事で、土地に根付くものを感じさせてもらったり、一緒に作り上げていく感覚もあったりして、とても楽しかったです。
同時に作品を土地に残していく責任の大きさも含め、多くの事を学ばせて頂きました。
そうやって街の人と出会いながら制作していくスタイルはとても好きで、作品を思い出すとその時に出会った人の顔も思い出します。
お客さまの喜ぶ顔が嬉しくて、画家としての悩みに変化がありました
- 画家として活動するなかで、悩みや壁はありましたか?
色々ありましたが…自分が描いた絵をスマホケースにして販売することに、最初は葛藤がありました。
もともとは、友人のイベントのお手伝いをきっかけに、初めてスマホケースにすることを思いつきました。好評だったこともあり、ハンドメイドインジャパンフェスへの出展を機にCreemaでの販売もはじめています。
正直、画家なのにスマホケースばかり制作している自分に「これがやりたかったのか?」と悩みました。でも、クリーマストアへの出店を通して、そのモヤモヤした気持ちが少し変化してきています。お客さまが私の作品を求めて初日に駆けつけてくださったり、遠方から訪れてくださるんです。
絵を描くことのゴールは「作品そのものを好きになってもらうこと」だと思っているので、スマホケースがそのきっかけになるなら、いいんじゃないか。私のケースを手にして、何かしら思いを馳せてくれたら、それでいいんじゃないかと。
自分に会いたいと思ってくれる方がいるなんて恐れ多いのですが、クリーマストアのおかげで自分の考え方を少し変えることができました。
今後について
今後は、海外の広い場所や路上でもペイントをやってみたいですね。あとは、いつか街中の広告をジャックしたいなとずっと思っていて、普段目にする広告ばかりの景色を、広告の代わりに絵画にするのが夢です。
以前ペイントした駅や学校のプールのように、特定の持ち主がいないからこそ住民みなさんの絵になるのも、いいなと思っています。今後も続けていきたいですね。
これまで駅や道端で大きな壁画を描いている際、自分が悪戦苦闘しながらも毎日毎日描いていたら、いつ間にか沢山の人が声を掛けてくれました。なかには、私の絵を見て刺激された人が絵を描き始めたり…描いている絵に、多くの方が自分のストーリーを重ねてくれるんです。
自分が描くことで誰かの何かちょっとしたっきかけになったりするのはとても面白い。その作品がもっともっとたくさんの方々に見てもらえるようになれば最高です。
世界はもちろん、日本もまだ行ったことのない土地があるので、様々な場所で活動しながら、色々な出会いを纏う作品を制作していきたいです。
最後に
ユイ・ステファニーさんの絵がこんなにも人を惹きつける理由。それは、描いている間にもたくさんの人々との出会いがあり、たくさんの笑顔が生まれていて、それが絵に表れているからではないかと思いました。
原画を手元に置くことは難しくても、スマホケースだったら毎日持ち歩ける。そんなアートの楽しみ方もあっていいと思います。
クリーマストアでは、2月14日(水)まで、ユイ・ステファニーさんの作品をご紹介しています。直接手にとってご覧いただけますので、お近くの方はぜひお立ち寄りください。お気に入りの一点と出会えるかもしれません。