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「Creemaとサスティナブル」役目を終えた思い出の品に、デザインの力で新たな命を。|家具インテリア作家・tumuguさん

「Creemaとサスティナブル」役目を終えた思い出の品に、デザインの力で新たな命を。|家具インテリア作家・tumuguさん

近年耳にする機会が増えてきた「サスティナブル」という言葉。「地球環境や資源に配慮し、より良い状態を維持することができるもの」を指します。

 

地球環境の維持という大きなテーマですが、個々の工夫と解釈で、様々な方向から"サスティナブルな取り組み"は実現可能。実際にCreemaでも、サスティナブルなものづくりに取り組むクリエイターさんが数多く活動されています。

 

サスティナビリティを意識したクリエイターの取り組みや作品についてご紹介する連載企画「Creemaとサスティナブル」。
ジビエレザー作家のMAKAMIさんをご紹介した第1回、そして豆本作家のこころあそびさんをご紹介した第2回に引き続き、今回は、捨てられてしまう思い出の品をインテリア製品へと生まれ変わらせる家具インテリア作家・tumuguさんをご紹介します!

tumuguさん 捨てられゆく思い出の品に、デザインと遊び心で新しい命を吹き込む。

今回お話を伺ったのは、学生時代や幼少期に使っていた思い出のある物たちを、インテリア製品に「アップサイクル」されている家具インテリア作家・tumuguさん。
アップサイクル」とは、古くなった物や使わなくなった物を、デザインやアイデアの力を使って新しく生まれ変わらせる活動のこと。
廃棄物を資源として再利用する「リサイクル」や、元の製品をそのまま繰り返し再使用する「リユース」とは異なり、元の素材や魅力を活かしつつ、アイデアや工夫でものの価値をより高めることを目的としています。

 

「学校で使われていたもの」をメインにアップサイクルを実践するtumuguさん。作品ギャラリーの中には、どこか見覚えのあるような作品たちがずらりと並んでいます。学校で使っていたものが、まさかこんな形で活躍するなんて!と驚くと同時に、学生時代の思い出が蘇りふと懐かしい気持ちにさせられます。

 

なぜ学校で使われていたものをインテリア製品に生まれ変わらせようと思ったのか、アップサイクル活動を始められたきっかけや、作品に対する想いを伺いました。

――まず、tumuguさんがアップサイクルの活動を始めようと思ったきっかけについて教えてください。

きっかけは何気なく見ていたテレビのニュース。
少子化の影響で、全国各地で小学校の統廃合が相次いでいるという内容でした。

 

映し出される、今は使用されなくなった教室。
その中で寂しそうに終わりを迎えようとしている机や椅子を見て、「もったいないな」「何かしてあげられないかな」と思ったことを覚えています。

自宅で家庭塾を営んでおり、その教室で同じ学校椅子を使用していたことも影響したのかもしれません。

 

それ以前も塾で使用する椅子をペイントし、生徒さんから好評だったことから、「思い出の詰まった学校机や椅子を、普段の生活でも使えるインテリアにリメイクすれば、まだまだ活躍できる場があるのでは?」と思ったのが活動を始めたきっかけです。
(アップサイクルという言葉を知ったのはそれからだいぶ後のことです。)

▲制作中の風景。学校机の天板を丁寧に切断していきます。
▲使われなくなった学校机はウォールシェルフに。傷や落書きも、アップサイクル作品ならではの「味」です。

――アップサイクルの活動において、大切にされていることやこだわりがあれば、教えていただけますか。

大切にしていることは2つあります。

1つ目は、素材がもつ物語を大切にすること。

物語を大切にするとは、例えば「トランペットのスタンドライト」。
運動会や部活の試合中に後押ししてくれた力強くて元気な音はもう出なくても、
「ベルの部分から奏でられる暖かい光が、部屋を明るく照らしてほしい」
という想いが込められています。
 

▲トランペットはまず磨き直すところから始めます。

愛着ある物が持つ「素材の背景(ストーリー)を活かすこと」と、インテリアとしてデザインする時の「実用性とのバランス」は常に気を付けています。
いくら愛着があっても生活する上で使いにくい物だと、また同じ道を辿ってしまいます。

▲トランペット本来の形を生かしつつ、暮らしに馴染むスタンドライトに。”吹き口から奏でられる暖かい光が、今とこれからのあなたを明るく照らしますように。”というtumuguさんの想いが込められています。

2つ目は、「遊び心」をもって廃材と向き合うこと。
そのままの状態では使えなかったり、無意識で捨てたりしていたものを再生するため、これまでとは違う視点で物の価値を考える必要があります。

「この物の本当の良さとはどこにあるんだろう」
から始まり、切ろうか塗り直そうか、他の物と掛け合わせようかなどなど。
その過程を含めて「遊び心」で向き合うことが柔軟な発想につながると考えています。

▲手洗い場に並んでいた蛇口も、水を飲むときのように蛇口をひねればなんとウォールハンガーに!tumuguさんの遊び心が感じられる作品です。

――終わりを迎えたものたちを新しく生まれ変わらせる工程の中で、特に大変なことは何でしょうか。

「捨てられるこれを使ってあんなものを作りたい!」

という妄想はたくさんあるのですが、技術力が追いついていないところが悩みです(笑)

もちろん日々精進はしているのですが、最近は周囲の職人さんにも積極的に頼っています。
加工のお手伝いをしていただくだけでなく、「物作りのプロ」からの意見は大変貴重です。

金属加工や木材、革の職人など、アップサイクルの活動を通じてこれまで出会わなかった方々と知り合えたことも大きな財産です。

 

ちなみに、現在企んでいるのは「ランドセル」のアップサイクル。
誰もが使用したことのあるランドセルですが、6年間の活動を終えて捨てられたり、交換対象になって眠っているもの、規格が変わって販売できないものなどが数多くあることがわかりました。
もったいないですよね。

財布やペンケースなどの小物にリメイクするのはよく見かけますが、インテリアとして長年使っていただけるような新作をリリース予定です。

今後もtumuguの活動にご期待いただければ幸いです。

――職人さんとの協力も、作品に良い影響を与えているのですね。最近作られた作品の中では、特にお気に入りの作品はございますか?

どれもこだわりがあるので選びにくいですが、最近制作した「祈火-inoribi-」はとても気に入っています。

「祈火」は花火大会で使用される「玉皮(火薬を入れる器)」を使用したペンダントライト。

コロナウイルスの影響で軒並み中止になる花火業者を応援したい。
そしてこの照明を見ることで「来年の花火を見るために今を頑張ろう」というメッセージを込めています。

▲玉皮自体も、ダンボール古紙をプレス加工したエコ素材を使用しています。

これまで「学校で使われていた物」をテーマにアップサイクルの活動をしてきたため、「祈火」を作ることに当初迷いがありました。 

ただアップサイクルの活動を始めた根底には、活動を通じて「サスティナブルな社会作りに貢献したい」という思い。
手段ではなくその目的のために「祈火」を制作しました。

花火のように華々しくなくても、暖かい光が先の見えにくい未来を
明るく照らしてくれると願っています。

▲玉皮に穴をあけ、真鍮製のソケットを取りつけている様子。

――実際に作品を手にしたお客様からいただいた言葉や、印象的だったエピソードがございましたら教えてください。

先日、学校椅子のチェアを購入いただいたお客様から
「新しいものもいいけれど、巡り巡って素材を無駄にしない家具はもっと素敵です。
末永く大切にしていきたい椅子と出会うことができました(原文まま)」
というコメントをいただきました。

まさにtumuguが伝えたいメッセージであり、今後もこうしてアップサイクルに共感いただける方に一人でも多く出会いたいと思った瞬間でした。

▲学校椅子をアップサイクルしたチェア。座ればからだにしっくりと馴染んでくれるはず。

また、逆に気付かされることも多々あります。
学校机のローテーブル・チェアを購入いただいたお客様から
「子ども用の勉強机として活躍しています」
というコメントをいただきました。

子ども用としてご使用いただくことは当初想定していなかったため、使い手の数だけシチュエーションがあるんだなと気付かされましたし、アップサイクルは「子どもに物を大切に使うこと」を伝える絶好の機会にもなるなと考えさせられました。

▲机の横のフックや、お道具箱を入れていた引き出し……子どもにとっては馴染み深く、大人にとっては懐かしいローテーブルです。

購入いただくお客様の顔が見えないネットショップだからこそ、こうした商品レビュー・コメントをいただくことがモチベーションになりますし、コメントをもとに実際に使用されている場面を具体的に想像することが、品質向上の面でもとても重要だと考えています。
今後も気軽にコメント・ご助言をいただければ幸いです。

――あらためて、tumuguさんが考えるアップサイクル作品ならではの特徴や魅力を教えてください。

やはり、新品には決して出せない「」でしょうか。

」とは、長年使用されてきたことによる傷やサビ、落書きなど。
それは新品にはない、たくさんの人の「思い出」が詰まった証です。

もちろん廃棄されるには理由があります。
脚が折れた学校机、割れたシンバル、パーツがないトランペット……

 

でも見方を少し変えるだけで、
脚が折れたなら、残った部分を活かしてローテーブルに。
シンバルもペンダントライトにすると割れ目から漏れる光が「味」に。
音が出ないトランペットもスタンドライトにすればかわいいフォルムを活かせます。

tumuguの作品を見て、「懐かしい」「こういう使い方があったのか」とまずは楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

そして「物を大切にする大切さ」に共感いただける方々と関係を紡い(つむい)でいきたいという思いが、店名を「tumugu」にした理由です。

▲アンティークな雰囲気のペンダントライト。役目を終えたシンバルも、お部屋を照らすライトとして活躍することができます。

取材を終えて。

勉強に打ち込んだ机や椅子、一生懸命に練習した楽器……。
学校で使っていたものに関わらず、人それぞれ大切なものや思い入れのあるものがきっとあると思います。そんな思い出の詰まった愛着のあるものが、役目を終えたら廃棄されていくのは、心苦しくやりきれない気持ちになりますよね。


無機質に廃棄するのではなく、一歩立ち止まって別の使い道や永く付き合っていく方法を考えてみる。アップサイクルという選択肢もあると知ることで、ものに対する考え方や見え方も変わってくるような気がします。
本来の用途として使うことができなくなっても、形を変えて生まれ変わった思い出の品々は、眺めるたびに懐かしい日々を思い出させてくれたり、ものへの向き合い方を改めて考えさせてくれたりと、かけがえのない存在になってくれるはずです。

 

tumuguさん、ありがとうございました!

tumuguさんのギャラリーはこちら!

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