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「ものづくりの現場から発生した廃棄物を、ものづくりの力によって生まれ変わらせる」遠州織物の切れ端で作られたアップサイクル作品

「ものづくりの現場から発生した廃棄物を、ものづくりの力によって生まれ変わらせる」遠州織物の切れ端で作られたアップサイクル作品

こんにちは、クリーマ広報の重岡です。

全国の “逸品”と称される素材や工芸品と、クリエイターを繋ぐ「全国いいもの発見プロジェクト-日本の逸品×作り手-」。双方の新たな可能性を生み出そうというこの取り組みも、開始から早くも5年が経ちました。

 

これまで、長野県岡谷市の「岡谷シルク」や 岡山県「畳縁(たたみべり)」、熊本県「熊本いぐさ」、福島県白河市「白河だるま」、京都府「水引」といった数多くの素材や工芸品を、クリエイターの技術と創造力で、より魅力的な作品として世に送り出してきました。

 

そしてこの夏、第6弾が始動。今回ご紹介するクリエイターとコラボする日本の”逸品“は、静岡県浜松市の「遠州織物」。高い技術でつくられる多種多彩なその生地は、確かな品質と使うほどに馴染む独特の風合いが人気を集め、海外のビッグメゾンでも使われるなど世界的に評価されています。

遠州織物の生地

その「遠州織物」の生地を使ったオリジナル作品を募集する本企画では、今までにない試みにも挑戦していました。それは「遠州織物」を作る行程で出る産業廃棄物を使った作品の募集です。

捨てられるはずのものを新しく生まれ変わらせる

「遠州織物」を作る際に出る切れ端は”布耳“と呼ばれています。同じ素材で作られているにもかかわらず、見た目と風合いが劣ることから使い道がないとされ、これまでは廃棄されてきました。これらの布耳は「繊維くず」として産業廃棄物に指定されており、全国で年間約12万トンもの量が廃棄されています。

(「遠州織物」を裁断する過程で生まれる”布耳“)

今回はこの布耳を使った作品も、「全国いいもの発見プロジェクト-日本の逸品×作り手-」の募集テーマのひとつに組み込みました。布耳は横糸と縦糸の長さが揃っておらず、糸を引っ張るとすぐにほつれてしまいます。

この素材を私たちが最初に手に取ったとき、正直なところこれをどんなふうに使うことができるのか想像がつきませんでした。遠州織物の美しい色合いや柔らかな質感は残しているとはいえ、本来捨てるはずのもの。加工が難しいのは明らかでした。

 

それでも「クリエイターの技術とクリエイティビティで、もしかしたらこの素材が素敵な作品に生まれ変わるかもしれない」という思いで走り出したこの企画。作品が集まるか心配もあったなか、なんと100件以上の応募をいただきました。

 

募集中に驚いたのは、予想以上に多くのクリエイターの方々がこの布耳に興味を持ってくださり、「面白そう!」とたくさんアイデアを出してくださったことです。普段使っている素材ではなくとも、何か新しいものが作れないかと考えを巡らせるその好奇心とクリエイティビティに胸が熱くなりました。

素敵な作品が集まりました!

そして実際に布耳を使った30作品が選考を通過し、この度お披露目となりました。どれも、それぞれの作風の中で布耳という素材を生かしながら作られたユニークなものばかりです。今回はその一部をご紹介します。

 

制作中に感じたことや、これから作品を使う方へ向けて、クリエイターの方々よりコメントもいただきました。作り手のものづくりへの想いを感じ取っていただければ嬉しいです。

布耳のふわふわポーチ

THREE PACKSさんはロングセラーのミニポーチを、布耳を使って制作してくれました。布耳のフワフワとした質感が他にはない雰囲気を醸し出すポーチです。個性的ながらも品があって、男女問わずに使えそう…

普段は上質な革と布を使って制作しているTHREE PACKSさん。「ブランドの”らしさ“も残しながら、布耳を活かすというのが、難しくも楽しい」とおっしゃっていました。

出来上がったポーチは、その言葉通りTHREE PACKSさんらしさはそのままに、布耳のふわっとしたテクスチャーが活かされたものでした。ものづくりにおいて妥協しない姿勢が作り出す、クリエイターの熱意がつまった作品です。

見た目はすごく可愛いくて魅力的な素材なのに、いざ使おうと思うと一筋縄ではいかない難しさがある。そんなところがこの布耳の魅力であり、アイディア次第で世界が広がっていくんだなと熱くなりました。完成間近になってきたとき、布耳の無造作な優しい風合いが小動物のように見えてきてより一層愛着が湧いてきました。

今回制作したのは優しい風合いの「布耳」と、上質な本革「ミネルバボックス」を組み合わせたポーチです。ふわふわ、もふもふした手触りに心もほっこりしていただけますと幸いです。「布耳」って素敵な素材だなと感じていただけると嬉しいです。

布耳を使ったショルダーバッグ

布を裂いて編む「咲き編み」技法を使って、様々なファッションアイテムを生み出すchikoさん。今回作っていただいたのはオーガンジーと布耳を編み込んで作った、バッグやポーチです。柔らかい雰囲気と、目を引くデザインがコーディネートのアクセントになります。特別な日に持ちたい、とっておきのアイテムです。

布を裂いて制作するchikoさんにとってこの布耳は自身の作品にぴったりな、理想的な素材だったのだとか。また、普段から端材などは無駄なく使いきりたいという思いで制作しているそうで、この布耳を一目みたときから「絶対この企画に参加しなきゃいけない!」と思ったとおっしゃっていて、こちらも嬉しくなりました。

「繊維くず」と呼ばれるこのはじっこさんたちに、愛着を感じました。わたしがいつも、わざわざ布を裂いて作っている「裂き布」と風合いが同じだったからです。色によって、ボリュームや肌ざわりが違ったり、長さが一定ではなかったり......それがわたしにとって今、ここ、にしかない贈り物でした。

特性をつかむために編み棒をかえたり試行錯誤を重ねる度に違う表情を見せてくれるので、編みながらどんどんアイデアが湧いてくる夢の素材でした。伝統工芸品の端材ならでは、色の風合いと表情がそれぞれとても楽しいです。遠州織物のはじっこさんと咲き編みのコラボで、なんともかわいい「ふわふわ×もけもけ」が仕上がりました。生まれたばかりの新しい編み物をぜひお楽しみください。

森のピアス_Green

自然を感じさせるような深い緑色が美しいこちらのピアスは、satomi craftsさんの作品です。ふんわりとしたレース糸と合わせて編まれているので、布耳のもふもふとした質感がより際立っています。

動くたびに、一緒に編み込まれたスパンコールとビーズがきらりと輝きます。ナチュラルな印象ですが、ボリュームがあるので華やかな場面でも活躍しそうなアイテムです。

遠州織物ならではの柔らかな風合いが生きていて、捨てられるはずのものだったとは思えません。

遠州織物の布耳を写真で見た時、その風合い、色合いが、「森」を連想させる素材に見え、「森のピアス」のイメーがすぐに浮かびました。両耳合わせて400粒近くのガラスビーズやスパンコールをタティングレースに編みとめていくことは、普段ならとても根気のいる作業なのですが、今回は、編み連ねればば連ねるほど、森の緑を紡いでいるような感覚になり、とても心地よい作業でした。

SatomiCraftsのアクセサリーは、コットンやシルクといった自然なものを使っていますので、肌馴染みがよく、カジュアルにもフォーマルにも合いやすくなっています。「森のピアス」も同じくどちらの場面でも合うピアスだと思います。ただ、今回は、カジュアルなガーデンパーティーや、ガーデンウェディングのような場面に似合うのでは…と密かに思っております。もしよかったら是非、そんな場面にもお使い頂けたら嬉しいです☆
色違いで、白やベージュも作ったので、良かったらご覧ください。

キレハシ小鳥「ルリビタキ」

小鳥モチーフの作品が大人気の、ひよこ窯さんが制作したのは「ルリビタキ」の置き物。掌にちょこんと乗るサイズです。粘土の土台に丁寧に布耳を貼り付けて作られています。愛らしい表情につい見惚れてしまいますね。

(まるで本物の小鳥のような羽の質感)

「幸福を呼ぶ青い鳥」とも呼ばれるルリビタキの美しい青色の羽が、布耳で表現されています。遠州織物の美しい色合いが活かされた作品です。

遠州織物の綺麗な糸で青い小鳥「ルリビタキ」を作りました。布耳の細い糸を貼り付けて小鳥の羽を表現しています。布耳は色によって質感が違うのですが、青色は光沢があり、ルリビタキの羽にぴったりでした。糸を貼るたびに埋まっていく青色に癒されながら楽しく作ることができました。

パソコンの側やキッチンの隅にちょっと置いていただいて、ふとした瞬間に目をとめていただければ、うれしいです。

遠州織物“布耳”を織り込んだ手織り布のバケツトート

こちらはAtelier LOPさんが手がけた、バケツトート。普段から手織りの布でバッグやポーチを制作されており、今回はその手織りの布に布耳を織り込んだそうです。内側にはホックがついていて、それを留めるとおむすび型のトートバッグとして、外すとマチの広いバケツトートとして使用できる2way仕様。内ポケットもしっかりついた機能性もバッチリなアイテムです。

立体的に浮き出た縦のラインが、布耳を織り込んだ箇所です。ツイード調の布に、ふわっとした布耳が馴染んでいます。可愛らしさと高級感を兼ね備えていて、普段使いでもお出かけでも活躍しそう…!

立体的に浮き出た縦のラインが、布耳を織り込んだ箇所です。ツイード調の布に、ふわっとした布耳が馴染んでいます。可愛らしさと上品さを兼ね備えていて、普段使いでもお出かけでも活躍しそう…!

通常捨てられているという伝統的な遠州織物の布耳を見て、手織り布に織り込んだら面白い風合いになるだろうと思いました。実際に制作してみると、布耳が凹凸のアクセントになり、遠州織物ならではの優しい色合いと共に新たな魅力的な織り地ができ上がりました。内布にも遠州織物を使い、可愛らしいバケツトートに仕立てましたので、是非この風合いを楽しんでいただけたらと思います。ちょっとだけエコにも貢献できますよ。

遠州織物『布耳』のシュシュとブローチ付き ハレの日袋

水引作家のOTUTUMIさんが制作したのは、布耳のシュシュとブローチをあしらった「ハレの日袋」。「ハレの日袋」とはOTUTUMIさんオリジナルの、お祝い事全般に向けて使うことができるカジュアルなデザインが特徴のご祝儀袋です。

 

優しくも目を引く色使いと、布耳のまるでいきもののような愛らしさ。もらうとつい顔が綻んでしまいそうな、かわいくてPOPな雰囲気です。

渡した後も、シュシュとブローチは使ってもらえるのが嬉しいポイント。ご祝儀袋と一緒にプチギフトも贈れるというのが斬新なアイデアです。いつもご祝儀袋を制作されているOTUTUMIさんだからこそ生み出すことができたアイデア作品に驚かされます。

商品作りの観点では、一般的なご祝儀袋から逸脱しすぎずに、かといって斬新すぎない程度の適度な新作感を出すためのバランスを考えるのが難しかったです。いつも使用している水引では出来なかった”日常使い”を念頭に置きアイテムを考えつつも布耳で可能な形状や作り方を模索するのがとても楽しかったです。OTUTUMIの新たなるアプローチ方法を開拓できたのではと感じました。

見た目がカラフルでPOP、ボリューム感があるのでこのハレの日袋でおめでとうの気持ち全部をお渡し頂けます!別途のプレゼントはいらないかも!?お渡しした先でも、長くお使い頂ければ嬉しいです。

クリエイターのアイデアと技術で実現する、サステナブルな社会

企画を始めた当初は作品が集まるかどうかという不安もありましたが、たくさんの応募をいただき、想像をはるかに超えるアイデア作品が集まりました。どんなに扱いの難しい素材でも、その魅力を最大限に引き出すクリエイターの創造力と技術にはただただ驚くばかりです。そして、捨てられるはずだった素材も、アイデア次第では主役級になれるということや、クリエイターに新たなインスピレ―ションをもたらし予想もしなかったような化学反応を起こす可能性を秘めているというのも、今回の発見でした。

 

同じものづくりの現場にいる、遠州織物を担う職人さんと、クリエイターの皆さんを繋ぐことで「ものづくりの現場から発生した廃棄物を、ものづくりの力によって生まれ変わらせる」。そんな第一歩を踏み出せたことを嬉しく思います。

 

クリーマでは今回の企画を単発で終わらせることなく、継続的に実施してくことで、クリーマならではの「ものづくりを通じたサステナブルな社会の実現」を目指せたらと思います。

静岡県 浜松市と布耳を今後も入手できるフローを検討しております。これからもCreema上で出会える、サスティナブルな作品がたくさん生まれると思いますので、どうぞお楽しみに!

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