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熊本伝統工芸×Creemaクリエイター コラボ作品が生まれるまで。【熊本ものづくり紀行】

2023.12.26
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熊本伝統工芸×Creemaクリエイター コラボ作品が生まれるまで。【熊本ものづくり紀行】

阿蘇の山々や、天草の海などの雄大な自然に囲まれ、美食や温泉、全国的に著名な観光スポットを数多く有する、九州の中心に位置する熊本県。実は、数多くの伝統的工芸品が受け継がれ、職人によるものづくりが盛んな地域としての一面も持っています。

熊本県の職人が持つ伝統的技術・技法を活かし、Creemaで活躍するクリエイターとコラボレーションして新たな作品を生み出す企画「くまもとの伝統工芸×Creema アイデア募集コンテスト」。

おととし・昨年にも実施し多くのクリエイター・ユーザーさまから反響をいただいた本企画。今年は数多くの応募の中から5名のクリエイターが選ばれ、熊本県で伝統を受け継ぐ職人たちとのコラボレーション作品が誕生しました!

今回の記事でご紹介するのは、江戸時代から続く伝統の焼き物「高田焼(こうだやき)」を手掛ける職人と、刀鍛冶を源流に100年以上にわたり刃物を作り続けてきた職人工房。それぞれの職人と、Creemaのクリエイターとがつくりあげたコラボレーションの模様をご紹介します!

 

歴史ある熊本県の伝統工芸品とクリエイターの持つ斬新なアイデアが組み合わさると、一体どのような作品が生まれるのでしょうか。作品完成に至るまでのエピソードや、コラボ作品に込められた想いやこだわりをお届けします。

江戸時代から続く「高田焼」とは?

▲今回のコラボレーション企画に参加いただいた、肥後高田焼伝七窯さんの工房にて。

1組目のコラボレーションに登場する伝統工芸品は、熊本を代表する焼き物の高田焼(こうだやき)。豊臣秀吉による朝鮮出兵の折に加藤清正に従って日本へ渡ってきた朝鮮の陶工から伝わり、江戸時代には細川藩の御用窯をつとめました。

 

初期の作品は褐色・黒色・青色などの釉薬と粒子の粗い粘土を用いた素朴で力強い作風が主流でしたが、後にはきめの細かい胎土を用いるようになり、現在では青緑色の青磁釉を使用した高麗青磁の作品が多く作られています。

また、大きな特徴の一つが高麗風の象嵌(ぞうがん=文様を刻み込んだ素地に白い陶土を埋め込む技法)です。象嵌によって、桜や菊の花、三島手、唐草や鶴といった、花鳥風月をはじめとする伝統的な文様が描かれることで知られています。

高田焼の窯元 >>伝七窯さん

今回のコラボレーション企画にご参加いただいたのは、昭和37年に開窯し、原料づくりの段階からこだわって制作を続ける肥後高田焼伝七窯さん。

伝統工芸品・高田焼の魅力を、ぜひ暮らしのなかで手に取って使うことで感じてほしいという想いで、伝統の文様をアレンジした柄のうつわや、元々は茶器として有名だった高田焼ですが、現代の流れにあわせた花器やコーヒーカップなど、暮らしに身近なうつわ作品も精力的に制作されています。

▲ドットが入ったコーヒーカップや、コーヒードリッパーも!高田焼ならではのあたたかみを感じる色合いが、現代の暮らしにも馴染みます。

Creema クリエイター>>ステンドグラス作家・Roccaさん

高田焼とのコラボレーションに取り組むのは、ステンドグラス作家のRoccaさん。

Roccaさんは学生時代には日本画を選考していましたが、旅先のイタリアでみたステンドグラスに心が動かされたのをきっかけに、「日常のなかで使えるアート作品をつくりたい」と、ステンドグラス制作の道へと進まれます。

 

実は、これまでにもコラボレーション企画に挑戦されたことがあったRoccaさん。ジャンルの異なる作り手とのコラボレーションのおもしろさ・素晴らしさはかねてより体感されていましたが、「陶器×ステンドグラスの組み合わせは見たことがない!」と、わくわくしながら今回の企画に臨んでくださったそうです。

▲LEDペンダントライトなど、日常で使える作品を多数手がけています。

高田焼×ガラス。予想のつかない異素材で、暮らしをやさしく照らす作品づくり

今回お二人が挑戦したのは、陶器とガラスという異色の組み合わせでつくる置き型ライト。

土台となる部分を陶器、傘となる部分を透かしガラスで作り上げていきます。

Roccaさん:ステンドグラス部分は、高田焼の落ち着いた和の雰囲気を活かすため、シンプルであることを前提に、明かりを消したときに上から見てもインテリアとして楽しめるデザインを意識しました。

中のライトに、体温に反応して明るくなるセンサーライトを使用しているので、反応しやすいように透かしデザインにしてみました。

▲試作品の一つ・ピンク色の美しいステンドグラスと、高田焼らしい色合いの土台とがモダンです。

伝七窯さん:ステンドグラス部分にあうように土台のサイズをあわせなければならないのですが、陶器は、粘土の状態によって焼き上がりの収縮具合が変わってきてしまうため、そこを計算してあわせられるように仕上げるのが難しかったです。試作をするなかで思っていたより激しく収縮してしまった……ということも何度もありましたね。

工芸品は生きものなんだと、改めて実感しました。なかなか思いどおりにはなりません。

Roccaさん:その場ですぐにサイズを合わせることができないというのは大変ですが、作品の打ち合わせでお会いするたびに一歩ずつ新しいものが出来上がっていくのは、コラボレーション企画ならではのおもしろさだと感じています。

▲実際にあわせて柄や色をどうするか議論を重ねます。

柄やかたちについて議論をするお二人に、このライトを制作するうえでのこだわりや想いをたずねると、意外な答えが返ってきました。

Roccaさん:実は、私は作品に対する思い入れのようなものは無くて。作品は、日々の生活のなかで使ってもらってこそ価値が出ると考えているので、このライトを使ってくださる方にどうか自由に想いをのせていただきたいなと願っています。

伝七窯さん:私も、まずは実際に手で触れて、暮らしのなかで使ってほしいという気持ちが大きいです。

伝統工芸品はきっとなくなることはないものですが、使ってみないとその良さは分からない。焼き物は、使っていくうちに色が変わったり、まるで生きもののように表情が変わっていきます。そういった変化も含めて、手に届かない高級品としてだけではなく、身近に楽しんでいただきたいです。

Roccaさん:ステンドグラスは陶器とは違って色が変わることはないですが、朝の光が当たるのと夕方の光が当たるのとでは見え方の印象が異なります。パーツごとに修理がしやすいということもあり、修理をしながら次世代に引き継いでいくことができるものです。ぜひこの作品も、永く使っていただけたら嬉しいです。

完成!

難関だったサイズあわせやデザインの細かな調整を繰り返し、高田焼×透かしガラスの置き型ライトが完成しました!

 

伝統的な花模様を施したベースに、灯りをつければ浮かび上がる美しいガラスの透かし模様。高田焼の特徴である象嵌は、伝統的な桜と、可憐な三島模様が施されています。色合い・柄による雰囲気の違いも味わい深いです。

▲明かりをつければ空間がやさしい雰囲気に包まれるよう。和のテイストが活きています。

一見、全く異なる素材を扱う職人・クリエイターのお二人。双方の技術の巧みさと「暮らしのなかで永く使われる作品を」という共通する想いが、日々をやさしく照らす一つの作品を生み出しました。

ときには変化や修理を経て、次世代に、そのまた次世代へと大切に受け継がれていく様子が浮かぶようでした。

▲使う人のことを想う心を一緒に、制作にとりくまれました。

100年以上もの歴史をつなぐ刀鍛冶

つづいてご紹介する2組目のコラボレーションでは、熊本県美里町で刀鍛冶を源流に、100年以上にわたり刃物を作り続けてきた職人が登場。包丁や農具から職人用の特殊な道具まで……使う人を思った「丁寧なもの作り」をモットーにきれいで、まっすぐな、長く使っていける刃物を作っています。

刃物店 >>隈部刃物製作所さん

現在三代目が切り盛りする隈部刃物製作所さん。今回は、「新しいことにチャレンジしたい!」という思いを持って、切れ味にこだわった包丁で本企画に参加いただきました。

「料理を楽しんでいただきたい」「料理を通じて文化をつないでいきたい」――そんな思いを大切に、お客さまの視点を大切に、手の大きさ、利き手や「くせ」に対応できるようなイージーオーダー等にも対応した包丁を手掛けていらっしゃいます。

Creema クリエイター>>Leather Atelier MT66さん

隈部刃物製作所さんとのコラボレーションに挑戦するのは、Leather Atelier MT66さん。

もともとバイクが趣味だったというLeather Atelier MT66さんは、愛用していたバイクグッズの多くが革でつくられていることから、素材としての革にも惹かれるようになります。

 

20年前、革屋さんに声をかけ、自ら革をつかったものづくりをはじめ次第に没頭していきます。ケース類などの小物から、大きなバッグまでを手掛けるようになった今も、とにかく丁寧に、細部まで妥協しないものづくりを続けていらっしゃいます。

▲ターコイズブルーのレザーにレモンイエローのステッチが色鮮やかに映える、総手縫い(!)のロングウォレット。

刃物×レザー の可能性。持っているだけで気分があがる、前例のない上質な包丁ケース

刃物×レザー。一体どのようにコラボレーションするんだろう、と取材班もどきどきしながら迎えた取材当日。

隈部刃物製作所さんの、料理になくてはならない包丁を「道具として大切に使っていただきたい」という想いを受け取り共感したLeather Atelier MT66さんが手掛けたのは、上質な革の包丁ケース! 試作の裏には、切れ味にこだわった刃物とのコラボならではの苦労話が……

Leather Atelier MT66​さん:隈部刃物さんの包丁をお借りして試作品を作ったのですが、実際に入れると包丁の切れ味が良いあまり、刃先が触れるだけで革に傷が入ってしまい……これまで料理で使っていた包丁はなんだったんだろうと思うような、まさに「刃物」と呼びたくなるほどの切れ味に驚きました。

▲最初は、包丁をケースに収納するための鞘を革で試作していたそう。これだと革の裏に傷がついてしまい……

Leather Atelier MT66​さん:刃が直接革に触れないように、革を張った木製のケースをセットにできないかと、今回あらたに試作品を持ってきたのですが、いかがでしょうか?

▲これなら安心してケースにしまうことができます。

隈部刃物製作所さん:これはかっこいいですね! うちはプロの料理人の方に包丁を依頼されることも多いのですが、意外に持ち歩き用のしっかりとしたケースは見たことがないんです。手に取りたくなる上質感なので、たとえばお料理教室に通う方だったり、一人暮らしを始めるお子さんへのプレゼントにもよさそうです。

Leather Atelier MT66​さん:このケースは長さがあるので、手にしたときにくたっと折れてしまわないように、外装、内装の革厚を調整しています。

他にも取り出しやすさだったり、全て手縫いで仕上げた縫い目だったり……細部まで丁寧に、こだわりました。

 

悩みどころは革やステッチの色。配色によって全然雰囲気が変わるんです。

隈部刃物製作所さん:たしかに。明るい色だと性別を問わない感じがしますが、せっかくの革ケースだから上質感が伝わりやすい色でもよさそうですね……

完成!

革が切れてしまうという思わぬハプニング(?)もありましたが、隈部刃物とのコラボレーションの包丁ケースが完成しました!

シックなブラウンのレザーにクリーム色のステッチがアクセントに。一見すると包丁ケースとは分からないようなお洒落さにしあがりました!

▲内側までこだわり抜いています。

「制作をしていて一番楽しい瞬間は、どんなときですか?」と隈部刃物製作所さんにたずねると「……一言では答えられないですね。一つひとつの作業が奥深いので、語ると時間が足りません。この感情は、同じクリエイターの方に共感していただけるのではと思います(笑)」との答えが。Leather Atelier MT66​さんも大きくうなずいていました。

二人の職人・クリエイターの技術の結晶で、これからの料理・日常がもっとわくわくすること、間違いありません。

永く楽しみ、引き継げる喜び。伝統工芸品のある暮らし

熊本の伝統工芸品を手掛ける職人と、Creemaクリエイターとのコラボレーション作品の制作の様子をご紹介しました。

 

素材が違えばジャンル、背負っている背景も違う。本当にコラボレーションができるのかな?と、正直最初は想像がつかないような組み合わせでも、はじまってみるとクリエイター同士、どんどんアイデアを持ち寄って高めあい、これまでにない作品が誕生するコラボレーション企画。

 

お互いへのリスペクトを持ち、異なる視点から意見を交わしてより良いものを制作しようとする姿はとても印象的で、溢れるアイデアで作品が完成に近づく様子にわくわくが止まりませんでした。

 

「熊本ものづくり紀行」の特設ページでは、今回ご紹介した2組以外のコラボレーション作品もご紹介しています!

伝統とクリエイティビティとがあわさって生まれるパワーを実感できる作品ばかりです。ぜひお楽しみください。

※ 本記事は熊本県の伝統工芸品・地場産品に係る販路拡大の取組の一環として、 株式会社クリーマが制作しています

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