BLOG
日本で最も古い鍛冶の町で作られる「三木金物」とは?Creemaクリエイターとのコラボレーション実施!
ものづくりに携わるクリエイター、職人にとって欠かせないものの一つが「道具」。ものを生み出すための道具にもまた、歴史や伝統、情熱を傾ける作り手が存在します。
兵庫県南部にある三木市は、約400年の歴史をもつ日本で最も古い鍛冶の町として知られています。
受け継がれてきた鍛治職人の高い技術で作られる金物(かなもの=金属製の道具、器具)は国内外から高い評価を得ており、質の高さが世界で認められています。
とはいえ、金物、と聞いてもいまいちイメージが思い浮かばない方も多いはず。
今回は、国の伝統工芸品としても認められている代表的な「三木金物」と、Creemaクリエイターとのコラボレーション企画についてご紹介します。
仕上げがいらないほど滑らかに。約400年の歴史を持つ「三木金物」とは?
三木金物は、作り手の技と先進機器の技術、良質の素材を駆使して作られており、三木金物を使って作られた作品の仕上がりは、仕上げの作業がいらないほどの滑らかさで「素材が息をする」とまで言わしめます。
もう一つ大きな特徴は、現在も昔ながらの製法で多種多様な刃物が作られているということです。
小刀やのみ、カンナなど日用品から建設に使われる工具に至るまで、様々なものが職人の手によってひとつひとつ丁寧に作られています。
高い品質を生んだ背景には、約400年の歴史の中で受け継がれた伝統の“たたら製鉄法”の技術を磨き上げてきたのに加え、新しい技術も積極的に取り入れ、技術革新を図ってきたことにあります。
国の伝統的工芸品にも指定されている、「鋸(のこぎり)」「鑿(のみ)」「鉋(かんな)」「鏝(こて)」「小刀(こがたな)」についてご紹介します。
「鋸(のこぎり)」22もの工程を経て作られる 寸分の狂いもない逸品
誰しもが目にしたことのある鋸(のこぎり)は、エジプトでは約紀元前3500年の青銅鋸が発見されておりますが、日本では古墳時代の出土鋸があるという記録があります。
三木では江戸時代、300年近く前の 「寛保2年(1742)年」に鋸鍛冶の記録が3件あったと伝わっています。
一寸の狂いない鋸の鍛造技術と目立ては、鋼の強靭さを追求した究極の製品、芸術品だと賞されています。
「鑿(のみ)」木を変幻自在に作り変える 職人の思いが詰まった道具
日本の木造建築には絶対に欠かせない道具で、奈良時代にはすでに多く使用されていたと伝わっている鑿(のみ)。木材、石材、金属などに穴をうがったり、彫刻に使われる切削加工の工具です。
三木では文政年間(1800年頃)に鑿鍛治のあったことが記録され、鋼と鉄の鍛接ー鍛造ー焼入れー泥塗りー整形等、14もの製造工程で永年の職人の確かな腕により、確かな道具「鑿」に仕上がっていきます。
建築だけでなく、さまざまな木工製品作りに用いられる道具でもあります。
「鉋(かんな)」木目の素晴らしさを際立たせる 職人の英知が詰まった道具
平安時代までは、日本建築では先端が尖った槍のようなかたちをした「槍鉋(やりがんな)」を用いて、木材を削って建築作業を行っていました。法隆寺の柱も、槍鉋を使って作られたという説があります。
その後、職人の英知により現在にも用いられているような「台付の鉋(かんな)」が生まれました。おもに材木の表面を削って滑らかにするために使用されます。
三木では文政2(1828)年に6軒の「鉋鍛冶」があったと記録に残っています。鋼と鉄の鍛接~鍛造~焼入れ~裏研ぎ~泥塗り~盃取り~台付等、21の工程を経て作られた鉋は、何回削っても切れ味が素晴らしく、伝統技術を駆使した道具として知られています。
「鏝(こて)」日本建築を作り出すために必要な プロの道具
しっくいや泥などを塗るために用いられる「鏝(こて)」は、太古より生活空間を作るための建築に、必要不可欠な道具でした。
日本の歴史では、室町時代(1400年代)頃には左官職人と呼ばれる職業があったと確認されています。
三木では、嘉永年間(1850年頃)に岩佐六助が江戸で修行し三木で鏝を作り始めたのが、その起源だといわれています。
19もの工程を経て、より粘りのある、プロが誇りとする強靭な鏝が造られています。
「小刀(こがたな)」さまざまな作り手の要求を満たす 特殊技術の結晶
木造建築の発達につれ、建築の作り手が小刀へ要求するレベルは高まっていったそう。建築のみならず生活の中でも、小刀は汎用性高く使用されていました。
三木では寛保2(1742)年に「野道具鍛冶」が刃物を製造したと伝わっています。
鋼と鉄の鍛接に始まる21工程の技術は、小物であるだけに、特殊な技術が詰まった逸品です。現代では、子どもの指先を鍛え創造性を養う道具としても、注目を集めています。
三木金物×Creemaアイディア募集コンテスト、実施!
このたびCreemaは、三木金物を誇る兵庫県三木市とコラボレーションした特別な企画を実施しました。
複数回の選考を経て選ばれたクリエイターが、上記でご紹介した代表的な三木金物を用いて、斬新でクリエイティビティ溢れる作品を制作します。
高い品質を持つ三木金物によって引き出されたクリエイターの技が、どんな作品を生み出すのか……募集の段階から、どういったアイデアが集まるのか、関係者一同わくわくと期待を膨らませていました。
数多くのご応募から選ばれた9名のクリエイターによる作品が、今年11月に開催された「三木金物まつり」の会場で展示され、来場者による最終投票がおこなわれました!
金物展示から屋台村まで。三木市の一大イベント!三木金物まつり
三木市で開催される「三木金物まつり」は、1952年に4日間に渡り、金物見本市として開催されたのがはじまり。現在では例年、市内外から約16万人の来場者が訪れる、三木市の一大イベントとなっています。
金物の展示のみならず、地元の学生達によるダンスパフォーマンスや丸太切り競争、農業まつり、B級グルメの露店など、楽しい催しが盛り沢山の、地元に愛される大イベントとして発展を遂げました。
このコンテストの結果を見届けるべく、三木金物まつりにお邪魔してきました! 会場の様子を、お写真とともに少しだけお届けします。
会場にはテントが立ち並び、開場前から大行列が!
美味しそうなご当地グルメ屋台に、三木で採れた野菜の直売、工芸品に、プロユース使用の金物(包丁やカッター、草刈り機まで!)……多くの人々が集い、活気あふれる様子に圧倒されます。
金物まつりならではのお得なコーナーも。人気のキッチン用品は早々に売り切れておりました。
会場中央に位置する体育館のなかでは、金物がずらりと展示されています。
普段なかなか目にすることのない本格的な金物が並び、実演をしてくれるブースも。まさに「刃物」と呼ぶにふさわしい切れ味は、実演だからこそ伝わります。
体育館の中央で輝きを放つのは……三木金物を象徴する存在、金物鷲(かなものわし)!
三木金物を代表する鋸、包丁、小刀、鎌など、3,000以上の金物で作られた象徴的なオブジェとなります。
重さ約1.5トン、両翼は約5メートル、高さ約3メートルの規模を持つ金物鷲は現在に至るまで四代に渡り制作されています。
その起源は古く、昭和8年にまでさかのぼります。昭和7年に三木町(現三木市)は大水害に見舞われ、大きな被害をうけました。町民たちの沈んだ気運を盛り上げる為に、地区、個人から色んなアイデアを募集し、その中に"金物鷲"(当時の呼び名は不明)の提案があったと伝えられています。
昭和27年、三木金物見本市(現在の三木金物まつり)で初お目見えをした後は、ニューヨーク・ナショナル・ハードウェアーショーにやドイツ、ケルンの国際ハードウェアメッセにおいても展示され、ヨーロッパでもその雄姿を披露しました。
現在、四代目となった金物鷲は、三木金物まつりを中心に、三木市と三木金物を象徴する存在として、その姿を残しています。
そしてCreemaのブースでは、アイデアコンテストの審査を通過した作品が並びます。美しい家具や、小刀で手彫りされた金物鷲をかたどったブローチなど……クリエイターの自由な発想による作品ばかりで、一体どの作品がグランプリに輝くのか、どきどきしながら来場者による投票の様子を見守ります。
結果発表!「三木金物」 × Creema アイディア募集コンテストの栄えあるグランプリは…?
三木金物まつりでの会場投票を経て、「三木金物」 × Creema アイディア募集コンテストの入賞作品が決まりました! 入賞作品は、兵庫県三木市の「ふるさと納税返礼品」として採用される予定です。
栄えあるグランプリを受賞した作品は……?
グランプリに輝いたのは、会津で活躍する木工作家treehomeさんによる飾り棚。
天板に抜いたホゾで星を、脚のシルエットで地球を表現して、釘やビスを使用せずに組んだ飾り棚です。
滑らかな切り口や美しく繊細なカーブは、クリエイターの技と、技を引き出す道具があってこそ生まれたもの。
塗料にはオリジナルにブレンドしたワトコオイルを使用した、こだわりぬいた上質な作品です。
準グランプリに輝いた、岐阜で家具を手掛ける小さな家具屋さん。1本づつ鑿(のみ)で手彫りした猫足がアンティークな雰囲気です。
インテリアとしてそのまま飾るのはもちろん、花台として、花器や小物を置いて飾っても素敵です。
職人技がつなぐ道具。三木金物で広がるものづくりの世界
400年もの歴史を誇る三木金物と、Creemaクリエイターが三木金物で手掛ける技の光る作品をご紹介しました。
クリエイティビティあふれるものづくりの過程には、クリエイターの技を支える道具の存在が欠かせません。
三木市とCreemaがコラボレーションした今回の企画を通して、三木金物の奥深さや魅力に、興味をもっていただけましたら幸いです。