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【特別対談】中山ダイスケ(東北芸術工科大学)×丸林耕太郎(クリーマ) 「クリエイティブと次世代の力で変える、ユニークで豊かな未来」

2022.05.27
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【特別対談】中山ダイスケ(東北芸術工科大学)×丸林耕太郎(クリーマ) 「クリエイティブと次世代の力で変える、ユニークで豊かな未来」

2022年4月、包括連携に関する協定を結んだクリーマと東北芸術工科大学。
初夏に向う爽やかな日に、東北芸術工科大学・中山ダイスケ学長と、クリーマ代表・丸林の対談の機会が訪れました。

これまでクリーマが培ってきた知見やノウハウを活かして、“ものづくりによる地方創生”を目指す今回の連携。そこまでに至った経緯や、中山学長がクリーマに期待する熱い思い、相互提携協定の今後の展望についてお話しいただきました。

――東北芸術工科大学ってどんな学校なんですか?

中山学長:芸術大学は都市部にたくさんあるんですが、地方にはおもしろい大学がいくつかあるんです。うちもそのうちの一つです。

東北、山形というと、都会の方からすると何もないところと思われるかもしれませんが、理想的な地方都市です。自然があって、適度な大きさの街もあって……そのなかに芸術大学がドン!とあるんですね。そういうところでアートやデザインを学んでいるんです。

 

丸林:広大な土地の中にあって、建物も現代的で、抜け感があって、本当に環境のいいキャンパスだと思いました。

 

中山学長:本館の三角屋根の建物ですね。後ろに山を背負って、自然と人の生活の中にあります。東北最大級の総合芸術大学なんです。

▲ 日本百名山のひとつ「蔵王山」の麓・山形県山形市にある広大なキャンパスに、約2,400名の学生が集う

――この山形で、アートやデザインを学ぶ魅力はなんでしょうか?

中山学長:都市部の芸術大学だと、すぐ隣に業界がありますよね。
地方は、そこで勉強していることが生活の真横にあるというか、アートもデザインももっとリアルなんです。それがローカルの強みだと思います。

例えば、大きなショッピングモールが建つとその周りに街ができるように、それがなくなると市街地の空洞化が加速していきます。そういう場所の再利用をデザイン思考で解決するんです。「空き家をリノベーションして新しい使い方にしてみよう」とか。

ほかにも、伝統工芸や地域の素材を使ってつくっていた素朴なものが、大量生産によってどんどん凌駕されて行き場を失ったり、その良さを発揮する場がなくなったりするんですけど、それを芸術系の学生がクリエイションに変えたりするっていう。すごくリアルな大学なんですよね。

そういうクリエイティブの力で課題を解決していく取り組みは、クリーマとも共通していると思います。

▲ 地域に赴き街の魅力や課題を深く伺う、コミュニティデザイン学科の授業の様子

丸林:首都圏の近郊にある地方都市なんかでも、大型のファッションビルが閉店して周りに何もなくなっていたりして、けっこう課題があるなと感じています。地方都市として山形が抱えている課題って何ですか?

 

中山学長:山形は「課題先進県」ともいわれていて、少子高齢化や人口流出などの課題はたくさんあります。だいたい商業から倒れていくんです。なぜかというと、ものの買い方が変わったからです。今はわざわざ出かけなくてもインターネットで買えますよね。47都道府県で初めて百貨店がなくなったのは山形なんです。でも、百貨店がなくなったからといって生活に大した影響はなかったんですよ。

 

丸林:それはとてもリアルですね。そういう状況の中で、新しいまちづくりや取り組みを学生とやっていくということですか?

 

中山学長:最初はそんなつもりじゃなかったんですが、地域や行政から年間100件ほどのデザインやアートの依頼がくるんですよ。「この古いビルはどうしたらいいでしょう?」とか、「お饅頭を開発したんですけど、パッケージをどうしたらいいでしょうか?」とか。依頼をいただくのは嬉しいんですけど、こんなにこの街は困っているのか、と思うほどに課題がたくさんあるんですね。

それを学生の学びの場を使って実験的にやれるんです。「こんなのどうですか?」とやってみて、うまくいくと行政はそれを長期活用する。

 

丸林:それはすごくいいですね。学ぶということって、主体性が大切だと思うんです。自分はこれをやりたい、とか、興味がある、おかしい、と思うことに取り組むのが一番パワーが出ますよね。東北芸術工科大学の学生は、地域の方々と主体的に関わって、そこでアートやデザインを実践的に学べるんですね。

 

中山学長:そうなんです。教員も課題好きな人が多いので、テーブルの上で「デザインとは」と教えるよりは、連れ出して実際に見せながら授業するというのが良いんです。

中山学長:これまで地方の大学は「東京に負けないように頑張ろう」という意地の張り方をしていたんですけど、いまは「東京にできないことをしよう」という考えが増えているんです。元気のある地方都市や、おもしろいアイデアで生まれ変わっている地域がたくさんあるじゃないですか。それと同じで、そこでできることを楽しもう、というモチベーションなんです。

 

丸林:活用できる資産や取り組むべき課題があるのは、その地域特有のものですしね。

 

中山学長:そうですね、課題すら資産だと思います。これまで地方は、パルコやスターバックスがこないかなというふうに、都会にあるものを欲しがって、都会よりも5年、10年遅れでなにかがやってきていたんです。東北の大都市は仙台ですが、山形は仙台を、仙台は東京を追っていたと思うんです。

でもいま山形が抱えている課題というのは、遅かれ早かれ仙台や東京にもやってくるんです。東京の街もスカスカになって空きビル問題も出てくるし、人口流出や少子高齢化で小学校が潰れたりする。

そうなったとき、「そういえば10年前、山形がこうやって解決したな」という、都会が地方に学ぶ時代が来ているんじゃないかなと。山形が10年遅れで大都市を追っていたら、気づいたら先頭に立っていた、という状況です。解決しないといけない課題が、全部山形にあるんですよ。

 

丸林:たしかに。しかもそこに成功事例があれば、説得力もありますよね。

▲ 歴史遺産学科 フィールドワークの様子

――今回、クリーマと相互連携協力に至った理由はなんでしょうか?

丸林:これまでクリーマでは、Creemaに出店するクリエイターさんと一緒に、日本各地でさまざまなアプローチ方法で地方創生に取り組んできました。

クリエイターさんと一緒に地域に行って、街の方々とも連携しながらイベントをしたり、コロナ禍で販売に困っている地域産品や伝統的工芸品のマーケティングやPR、DX化をサポートしたり…… 京都府や熊本県、伝統的工芸品産業振興協会さんをはじめ、様々な地域の方々と共に取り組みをさせていただいています。広範囲にやってきた中で、力になれている実感や実績が積み上がり、自分たちにしかできないことがあるなと思っていたときに、今回のお話をいただいたんです。

東北芸術工科大学の学生の皆さんの発想力、アートやデザインの力と合体させたら、あたらしい価値あることができそうだなと感じました。

中山学長:以前からCreemaさんと組みたいと思っていたので本当に嬉しいです。この提携について教室で学生に話したら、けっこうな騒ぎになりましたよ(笑)。こんなに反応があったことは今までなくて、学生にとってはリアルな提携だったようです。

学生はCreemaを見ているし、買っているし、つくったものを載せてる人もいるし、販売したいと思っている人もいる。Creemaはものづくりをしている人のゴールなんです。

 

丸林:クリーマが大学と連携するのは初めてなんですが、僕のSNSにも、学生さんらしい人からいくつものリアクションがあって驚いたし、すごく嬉しかったです。

 

中山学長:この提携と期を同じくして「工芸デザイン学科」というものが立ち上がることになりました。

これまで「ものの作り方のノウハウを教えます」という工芸コースはあったんです。しかし、作ったものをどう社会にリーチさせるかというところまで教えるとなると、どうしてもデザイン的な思考が必要になります。

カルチャースクールではないのだから、“自分が作りたい物をつくりました”ではいけません。「社会のニーズってなんだろう?」ということを考えながら、自分ならこうする、というもののつくり方を教えなきゃいけないな、ということでデザイン寄りの工芸学科をちゃんと立ち上げることにしました。

中山学長:この「工芸デザイン学科」では、ものを作りたくてうずうずしている人もマーケティングを勉強するし、「あなたのつくったものをインターネットでどう見せたらいいでしょう?」とか、「どんな紹介文だったらそそられる?」という、あたりまえのことですが、商いのことも教えてあげたいと思っています。

一般的な芸術大学って不思議なんですけど、どこも「芸術」と「デザイン」と分かれているんですよ。「工芸」は、デザインとアートの間なんです。

東北芸術工科大学はここ10年くらい両者を混ぜて、デザインをするならアート的な側面を知らないといけないし、逆に絵を描くならただ自己実現のためだけではなくそれをデザインのフィールドに持ち込んでお金に換えてみてはどう?ということも教えているので、生まれるべくして生まれた学科という気がします。

Creemaさんというひとつのプラットフォームで実現している、ものづくりが人との対話に発展し、つくったものの成果・対価が得られるという仕組み。これがもっと世の中全体に普通にあればおもしろいんですが、どうしてもアーティストは作っているときだけ能動的で、いざ絵をもって社会に対峙すると寡黙になっちゃうんですよ。Creemaは、そこを助けてくれるツールでもあるし、こういうやり方があるんだということを見せてくれる、とても良い場だと思います。

 

 

丸林:東北芸術工科大学には才能ある学生さんもたくさんいるでしょうし、そのパワーが集まってこそできることってあるじゃないですか。でも、おもしろいものや、世の中に大切に思われるものがあったとしても、広がらないと自己満足で終わってしまう。その部分でクリーマが力になれるんじゃないかと思います。組み合わせることでよりよい化学反応が起こせると思うし、実践的な取り組みを行えることに期待してます。

▲ グラフィックデザイン学科の授業の様子

――中山学長は2007年に同大学の教授に就任され、2018年から学長を務めています。アーティストとして活躍されていた中山さんが、教育に携わろうと考えたきっかけを教えてください。

中山学長:90年代の終わりから2000年代初頭までNYにいました。クリエイターにとっての天国のような街で、デザインもアートもファッションも音楽も境目なく、クリエイターたちが集っている中にどっぷりいて、作品をつくったり、個展を開いたり、NYコレクションなどのファッションショーの仕事をしたり、日々充実して過ごしていたんです。

そんな中、9・11のテロが目の前で起こりました。近所に住んでいてその瞬間を見てしまい……突然現実に引き戻され、これがきっかけでものがつくれなくなったんです。ショーの仕事などもなくなって、そこで自分のことを見つめなおすことになりました。

アートの世界ってある種限定的で、コレクターさんが買ってくれたアート作品はコレクターのものになるじゃないですか。それをもっと、普通の人のために何かしたいと思ったんですね。そこからデザインのほうも積極的にやるようになりました。

中山学長:日本に帰ってきて、教育に携わるチャンスがあったのでやってみたんです。学校の先生になりたいというよりも、クリエイティブをちゃんと教えたくて。

日本の大学って、何かになるためのことばっかり教えているんです。広告クリエイターになる方法や、上手に絵を描く方法を教えている。そうではなくて、クリエイティブに生きることを教えるほうが絶対大事なんです。

世の中に天変地異が起きたときも、クリエイティブなアイデアがある人が生き残るんですよ。クリエイティブって、命を守ることもできる魔法だと思うので。音楽もそうですが、クリエイティブに携わっている人って幸せそうですよね。何があっても生きていける図太さがあります。そういう人を育てたいなと思っています。

▲ 三角形の本館前の池に架かる橋。水に姿を写して自分自身を見つめ直す意味が込められているそう

――相互提携協定の今後の展望についてお伺いします。クリーマに期待することはどんなことでしょうか?

中山学長:音楽業界の人が街中のライブハウスにいっておもしろいミュージシャンを見つけるようなことが、美術界ではないんですよ。いろんなところでおもしろい絵画展や個展をやっているのに、メーカーのプロデューサーが来るってことがないんですね。

音楽だったら、駅前で弾いた一曲が多くの人たちに届くマーケットができている。これがプラットフォームだと思うんですけど、Creemaさんはアートやクリエイションにおけるそういう場所だなと。

 

丸林:ありがとうございます。音楽ってそういう意味では成熟してますよね。よくもわるくも流通もメディアもしっかり存在している。アートの領域は確かにそういったものがまだ足りないですね。

 

中山学長:アートは買ったらそこで終わって、流通しないからですよね。音楽の録音と再生の特性もあると思いますが、音楽を広げる人数に比べたらアート業界は少ないです。

そして、ミュージシャンだと小さいライブハウスでもコール&レスポンスがあるじゃないですか。「いま俺、観客から聞いてもらえてる!」みたいなことが。

 

丸林:音楽はお客さんが50人だったとしても、その場で大きな反響があれば気持ちいいですよね。

 

中山学長:そう。しかしアーティストにはそれがないんです。僕自身人気のピークの時、何千人もの人が個展に来ても、音楽ライブのようなその場の熱狂的な反応はなかった。

でも、Creemaで自分がつくったものにたくさんの「いいね」がついて、買いたい人が予約を入れて待ってくれてるのって、ある意味ステージで光を浴びているような感じなのかもしれないなと。作品が届くのを待っている購入者がいるクリエイターさんって、並んでいる人を想像しながら作っていると思うんです。ライブのように「私の表現が届いてる!」というのを感じられる。それは多分インターネットでないとできないことですよね。

 

丸林:さらに音楽だとライブやツアーのある時期と、ずっとスタジオに籠って孤独な時期があるけど、Creemaなら毎日発注があったり、レスポンスがきたりと、常に反応がある。クリエイターさんからも「届く反響や声がやりがいになっている」というお声をよくいただきます。

丸林:今回の連携の象徴とかシンボルになるようなことができたらおもしろいですよね。

 

中山学長:スチューデントリーグ的なものがあってもいいですね。いろんな大学が参画して、そこで見せあって、クリエイターを探しに来る業界があってもいいかもしれないですね。

Creemaには、クリエイターさんにも、買う人にも、何かひとつ違うものがやりたい人がたくさん集まっていますよね。それって本当に良いことだと思うんです。

今は大量生産されたものがセンスよく作られていて、それでいいやと思いがちですが、実はみんなと同じものを見せられているし、買わされている。そうじゃなくて、必ずあなたらしくひと手間加えていきていきましょう、ということをいろんな業界がやったらおもしろいと思うんです。クリーマさんはそのひとりだと思います。もっと自分のこだわりをもった人が増えないと。

自分らしくカスタマイズする精神って大事で、その人の趣味趣向は大きなエネルギーになって、それだけで豊かな国になるんです。

 

丸林:ものづくりをする人へのリスペクトとかカルチャーへの理解は、この10年でずいぶん前に進んだと思うけど、欧米に比べると圧倒的にまだまだな訳で、この流れというか和というかをもっともっと広く定着させていかなきゃですよね。

今回の提携もそうですが、地域との連携や、アートや音楽を始めとする周辺カルチャーとの融合なんかを含め、さまざまな取り組みを通してクリエイター作品の魅力を伝え、丁寧にカルチャーを広め、クリエイターの皆さんのインフラになれるように頑張っていきたいと思います。

 

中山学長:これからも応援しています。

 

正解はない。色んな答えを見つけ出すリアルな学びの場。

インタビューの最後、中山学長に「どんな学生に来てほしいですか?」という質問を投げかけたところ、「正解を見つけたり、正しい絵を描くんじゃなくて、別解をもっていたり、もっと違うことがやりたいんだけど、みたいな人がいたら、芸工大を覗いてみてほしい」という答えが返ってきました。

東北芸術工科大学は、アートやデザインで課題に向き合い、より良い世の中をクリエイトする力を育む学びの場でした。そんな東北芸術工科大学とクリーマが手を取り合い、より実践的な地方創生・産学連携に取り組んでいくこれから。才能ある学生とクリーマのシナジーが生むクリエイティブの力に期待が高まります。

 

※本記事は、東北芸術工科大学様より委託を受け、株式会社クリーマが制作しています
※撮影時のみマスクを外しています

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